第74話 新たな仲間
私達はご飯を食べながら450号からいろいろと話を聞いた。
国によって勇者候補の扱いは様々であり、450号はいわゆるお嬢様のような扱いを受けて育ってきたそうだ。
苦労してきたマヌケとは違って、良い家に住んで良い服に身を包み、望んだことは大体のことが叶ったらしい。
しかし、実は国の状態がとても悪いことを後になって知ったそうだ。今まで自分が好き勝手に食べて残していた食料は、国の農家の人がなんとか育てた上げた大切な物だった。
それを自分たちは食べられず、国に治めていたそうだ。毎年何人も餓死で死んでいるのを知らずに自分は好きな時に食べて、気に入らなければ平気でそれをゴミ箱に捨てていたのだ。
成人して迷宮へ行く歳となった時に、その全てを知ったらしい。その時はショックのあまり寝込んでしまったらしいが、自分が犯してしまった罪を後悔するなら迷宮の魔物を何とかするよりも中央の国の国王を暗殺しろと東の国王に言われたらしい。そしたら東の国は蘇り、国の人々を助けることが出来るとそう言ったそうだ。
「アンタらの国王を暗殺しようとしたのは謝る……。」
「別にいいんじゃないかな。多分、インチキさんは全く気にしてないと思うし。」
「その……インチキってカッコいい名前は何なの? あの人確かマキシムって名前よね?」
「ん? あの人マキシムっていうの? アタシ達の中ではアンブがインチキって言い出してからはもうそれでしか認識されてないの」
――それをカッコいいと思うこの星の人たちは、私達のネーミングセンスとはどこか違うんだろうね。
「ア、アンタがあのカッコいい名前を?! その……よかったら……アタシも……その……」
モジモジしながら私をチラチラ見ている450号。大丈夫、あなたのあだ名はもうこれしかないから!
「……ヨゴレ」
「えッ?! それアタシの名前?!」
私はコクンと首を縦に振る。すると余程そのあだ名が嬉しかったのか凄くとろけるような笑顔でニヤけてしまった。
「ヨゴレちゃんかぁ~。相変わらずアンブってばいい名前つけるんだからぁ!」
――いい名前なのかな?! 450号なら……誰が考えても450でしょ。
《こいつらやっぱ頭おかしいなぁ》
――良かった。まともな意見が聞けて安心したよ。
それからしばらく喋りながらゆっくりしていたが、外の方が騒がしくなっていた。
私はアイレンズを起動してスキル感知を発動する。すると、海の方から巨大な魔物が向かって来ているのが分かった。それに向かって町の軍艦……漁船が攻撃をしかけていた。
しかし、その攻撃はその魔物へ効いている様子がなかった。町の皆は町長の先導の元に森の方へ向けて逃げているようだった。しかし、森の方にも魔物の姿を感知できる。その状況をスマコが皆に説明する。
――クモはまだ戦えないから異空間に入れて、魔人の皆もまだ身体が治っていないから、人の姿のままで森へ逃げている人を安全な場所に避難誘導しようか。森の中にいる魔物は雑魚っぽいから、私が闇分身で対応しよう。そして問題の大きな魔物はマヌケとヨゴレで討伐をやってもらおう。私(本体)はその補助だね。ってな感じでスマコよろしく!
《自分で言えよバカ野郎!》
そう愚痴りながらも的確に指示を飛ばしてくれるスマコ。自分だけお留守番でぎゃあぎゃあやかましいクモを異空間へ放り投げて私達は外に出る。
「マヌケ様、魔物達の様子からして、アイツらも操られている魔物のようです。どうか、お気を付けて」
「ありがとうコンちゃん! 気を付けるよ!」
「暗遁、闇分身の術」
皆は闇分身体の私4人と一緒に散らばっていった。
「神機モード発動、アンブ、ヨゴレちゃん行くよ!」
「へっ?! きゃあああ?!」
マヌケは私とヨゴレを両脇に抱え、奇麗な翼を広げて上空へ舞い上がった。
「あれだね!」
――あれだね……なんか地球でこんな怪物みた気がすんのよ。ティラノサウルスみたいな形でさ、口から青い光線を吐く奴。海から半身出して歩いてくる姿なんかもうそのまんまじゃないの。
《そりゃ、ゴジ……》
――言っちゃだめよ。言ったら負けなんだから。
《勝ち負けの基準がよく分からんが、とりあえず、何かとしようぜ? このままじゃあ、軍艦が沈むぞ?》
「ここから狙い撃つことも出来るけど、あの漁船が巻き込まれちゃうね。とりあえず近づこうか! 捕まっててね!」
「え?! ちょっとまっ……」
マヌケはいつも通り急加速したので、とんでもない重力に襲われる私とヨゴレ。私はもう慣れたけど、この子は初体験なのでちょっとかわいそうかもしれない。
一気にゴジ……怪獣の前に現れた私達。
「599号ちゃんかい?! 危ないよ! すぐに逃げるんだ!」
すると、急に飛んで現れたマヌケに驚いて声を上げる漁船で闘っている町の人達。
「皆さん、ここは急いで逃げて下さい! この魔物はアタシ達で倒せます! だから早く逃げて下さい!」
「そ、そうなのかい?! それならお願いするよ! 全艦隊、撃ち方やめぇぇえいぃ! 急速旋回よーい! 3、2、1、GO! マヌケちゃん、頼んだよ!」
「はい! お任せあれ!」
――あのおっさんカッコいいなぁ! いつもは冴えない感じで私におつまみをくれる優しいおっさんだったのに、なんか隊長さんみたいに指揮してた!
「おぶっ……おぇ……気持ち悪い……。ちょっと、本当にこんな魔物どうにかできんの?」
「皆が離れてくれればね! でもまだ距離が近いから、ヨゴレちゃんその間お願いできる?」
「はぁ?! 何言ってんの?! そんなの無理に決まってんじゃんよ! バカなの?! アホなの?! 死ねっていうの?! ちょ、ちょっと待って?! なんでアンブはアタシを投げようとしてんの?! うそよね?! え、え、えぇぇぇぇ?!」
ヨゴレは私に投げられて、真っすぐに魔物に突っ込んで行く。ちゃっかりヨゴレは皆と同じように私が渡した花びらの機械を耳に付けていたので、スマコの声が聞こえている。そしてスマコに言われるままに槍を構えて、コアギアを起動する。
「コアギア起動! 風魔法、インパクト・ドライブ」
槍から発生した風の気流により、高速で魔物に向かって移動する。そして、その槍の先端が魔物の硬い皮膚に触れたその瞬間に、衝撃を打ち付けるように打撃と回転の力へと変える。これにより突きに回転する力と打撃の力が加わり、いつもより強い攻撃へと変わるのだ。
その衝撃により、この巨大な魔物は後方へ倒れてしまった。
「えぇぇぇえええ?! アタシ強っ!」
だか、それにより大きな波が発生してしまい、逃げていた漁船が波に揺られ1人の乗組員が船から放り出されてしまった。
私は瞬時に神成モードを纏い、その人を空中でキャッチして船の上に戻す。
ヨゴレはスマコの指示の元、同じ攻撃で巨大な魔物を空中に打ち上げて見せた。
「神機ポジトロンモード、バスターカノン!」
マヌケの強力な攻撃はその巨大な魔物を空中で打ち貫き、一瞬にしてパリンと消滅させてしまった。
思念「デス、ポチ」
「「はい!」」
港町へ先ほどの波が更に大きくなって押し寄せていた。そこへデスとポチが魔物の姿で現れる。
「氷の息吹」
「破壊光線」
押し寄せる津波をポチが氷に変え、デスがそれを衝撃波で破壊した。それにより押し寄せていた津波は完全に消滅して無くなってしまった。




