第73話 久々の帰宅
それからクモを異空間へ帰した私達は、しばらくして身体を休めた後にインチキ達が捕まっているテンガラスの中央都市へ戻って来た。
すると、不思議なことに周囲に人の気配が全くしなかった。
――どうなってんの?
《分からん。こちらが戦いに夢中になっていたところで何かが起こっているようだ。急ぐぞ。》
やがてインチキ達が捕まっている建物まで戻って来たが、やはりそこでも人の気配が全くしなくなっていた。私のアイレンズでインチキが持っていた発信機の信号を探す。
すると、中央の国の方へ向けて移動しているようだ。しかも、馬車で移動しているような遅いスピードでは無く、地球で言うところの自動車くらいのスピードで移動しているようだ。
――なんで中央の国に向かってるの?
《おそらく、北の国王と西の国王の目的は人間文明から機械人の文明に変えるのが目的だ。だから、拠点を中央にすることにしたんだろう。国への行き来は中央が一番やりやすいからな。》
――なるほどね。インチキを人質に取られて、いきなり大群の機械人や魔物なんかで囲まれたら、人間が逆らうことなんて出来ないしね。
《それでも人間を殺すことはしないはずだ。何故なら人間は機械人に変えることも出来るし、いろいろな用途へ利用出来るからな。》
「だから人間を殺さずに制圧して、すき勝手に機械人に変えてしまうっていうの?! 勝手すぎるよ……」
《この機械人化計画を私なりにずっと解析していたんだが……どうもな、この背景には勇者候補の力を感じるんだよ。》
「スマコちゃん、それは一体どういうことなの?!」
それからスマコは自分の考えを喋り出した。
そもそも機械人は魔動力を発生させるコアのおかげで生きている。コンの話では、そのコアは心臓の奥深くに埋め込まれており、その周りには人間と同じ細胞組織で囲われている。
そのためアイレンズやマヌケのレーダーで見ても、完成された機械人は感知出来なかったのだ。
そのコアが力を発すれば、そこから心臓を通して全身へ力が流れ、魔法を発動することが出来るのだという。
しかし、それにはその魔動力に耐える心臓と血液が必要らしい。魔動力を発動した時に心臓が破裂する可能性もあるし、そのコアは常に血液中の養分を使用して魔動力を発動させているので、力を使えば使うほど血液中の養分が失われて、生命維持が困難になる。
機械人の寿命が短い所以はそこにあったのだ。
一方、勇者候補の身体は心臓そのものが魔動力を発生させているコアとなっている。そして、その血液は普通の人間と違ってコアを継続させるための養分が異常に多いらしい。更にその血液は勇者候補が生きている限り、半永久的に体の中で製造され続けているので血液が減っても全く問題ないとのこと。
これらのことを考慮した上で、スマコは機械人の生存維持には勇者候補の血液を使っているのではないかと思っているらしい。
「だとしたら、何処かに北の勇者候補が捕まっているかもしれないってこと?!」
《あくまで可能性だが、そういうことだ。それに機械人の命ともいえるその勇者候補をそこいらに置いておくとも思えん。》
――このまま国の情勢を放置できないし、その勇者候補のことも気になる。でも今の私達は疲労し過ぎていてそこまで戦えない。とりあえずまずは身体を休める必要があるね。
《それに賛成だ。奴らが王都に着くまでにはまだかなり時間もあるし、着いたとしてもすぐに行動は起こさないだろう。一度ログハウスへ帰って休むんだ。》
「そうだね。インチキさんにはデバイスで無事を連絡しておくよ。」
「うん。」
私はそう言うと、マヌケの手を取りログハウスへ転移した。そこからお風呂に入り、ご飯を食べてその日はゆっくり休むことにした。ベッドで横になった瞬間、マヌケがいつもより異常にベタベタベタベタとしてくる。
――寝れねぇよ! 顔近いよ! いろいろ当たってんよ! 全く……。
そんなことを思いながらも私はマヌケの身体をギュッと抱きしめて、眠りについた。
――なんじゃこりゃ~~?!
何とも柔らかく心地よい敷布団の上で顔をスリスリしながら目を覚ました私。敷布団だと思っていたその柔らかくて心地よいものはマヌケの身体だった。私は仰向けに寝ている裸のマヌケの上に抱き着くような形でうつ伏せのまま寝ていたようだ。
――我ながらどんな寝相をしてるんだ? そしてどうして裸なのこの子は?! それに寝ているというか気絶しているように見えるんだけど?!
《昨日の暴走モードもなかなかえげつなかったなぁ~。ありゃ~さすがのマヌケ様も凄まじく飛んで行ったぞ?》
――はッ?! 何を言ってるか良くわかんないんだけど?! バーサーカーモードって何?! 私にも神成モードのモード変化があるの?!
《いや……神成は、関係ねぇわ。それより、あいつらが元気になってるぞ。呼んでやったらどうだ?》
――え?! まぁ……いいか。
私は寝ているマヌケに服を着せて1階に降り、皆を異空間から呼び出した。
「あ~る~じ~さまっ! おっはよぉ~ん!」
クモが私の胸に飛び込んできた。包帯の数は減っていたが、まだ包帯やガーゼなどを貼りまくっている。そして鬱陶しいほどにベタベタベタベタしてくる。珍しくコンまでもなんかモジモジしながらベタベタしてくる。
――なんで?!
そしてそれを見て笑っているデスとポチとインコ。皆の傷もまだ完全ではないみたいだけど元気になっているようだった。
その3人の後ろに隠れながらビクビクして私を見えている変な奴が1名。450号とかいう東の国の勇者候補ちゃんだ。
私自身はこの子と初対面だけど、スマコの記憶では私達が会っていることを知っている。そして私もまたコンの後ろに隠れながら、その子を見ている。
――だけどこの子との記憶は一部が消えてるんだよね……。なんか私に怯えてるみたいだし……。
すると450号が口を開いた。
「あ、あの……もう剥ぎ剥ぎはやめてね?」
――はぁ?! 剥ぎ剥ぎって何よ?! スマコ?
《……知らん。》
――おい……私の知らないところで何があったのよ。
そんなことを考えていたら幸せそうな顔をしたマヌケが降りて来た。
「みんな、おはよう! ご飯食べる?」
「「はい!」」
それから変な空気のまま私達はご飯を食べた。私はまた1人知らない子がいるので、1人遠くの隅っこで食べている。
「ねぇ……あの子はなんであんな隅っこで食べてんの?」
「「アナタがいるからよ!」」
一斉に皆から突っ込まれる450号。
「えッ?! アタシのせいなの?!」
――まぁそう思うよねぇ。だってしょうがないじゃん、こういう性格なのよ私。




