第69話 怒涛
今まで攻撃をされるがままだったカスが遂に動き出した。
「お前らなんか力を開放するまでもなぇな。来いよ、殺してやる。」
首と肩の骨をコキコキ慣らし、構えるカス。
「氷龍の瞬零斬」
まず最初に動いたのは5人の中で1番の俊足であるポチだ。龍魔の力を全開で開放したポチの動きは目で追うことなどまず不可能である。
カスを中心に常に動き続け、怒りのままに冷気を纏わせた自身の鋭い牙と爪で斬り付ける。
しかし、カスはポチの動きが見えているかのようにその攻撃を全て捌いていく。
結果的に全くカスにはダメージを与えていない。
次に動いたのはデスだ。
「破龍の衝震撃」
デスはポチの攻撃に臨場するかのように、龍気と衝撃波を纏わせた拳でカスを狙う。カスはポチの集中攻撃を捌くことに意識がいっており、デスの攻撃には気が付いていない。その一瞬の隙を付いたデスの攻撃はカスの横腹に直撃する。
本来なら龍魔の力を乗せたデスの衝撃波をまともに受けると、身体の内部から衝撃波が突き抜けて内臓はもちろん体の中の細胞組織そのものを全て破裂してしまうほどの威力がある。
カスはそれほどの攻撃を直撃で受けたにも関わらず、衝撃波を自身で抑え込んで無力化してしまった。目を見開いて驚くデスに向けてお返しに強力な蹴りを放つ。その攻撃により遠くまで吹き飛ばされるデス。
しかし、その間にコンが動いていた。
「青龍の殺手術」
龍気を纏ったコンは妖術で自身が知りうる限りの薬や薬品などを術の中で調合し、それを瞬時に生み出すことが出来る。それは癒しの力でもあり、逆に殺す力にもなるのだ。
先ほど作り出した液体はあらゆる物質や細胞などを溶かして破壊し殺してしまうもの。人間はもちろん、機械人といえどこれを浴びれば瞬く間に溶けて消えてしまうほどの威力だ。
しかし、この攻撃ですらも装備を少し溶かしたほどで、カス自身には全く通じていなかった。
それどころか、尚も動き続けて隙を伺いながら追撃を行っていたポチの足を捕まえ、地面に何度も叩き付けながら近づき、そのままコンがいる方へ投げ飛ばした。
投げ飛ばされたポチはコンと激突し、一緒に吹き飛ばされることになったがそれを先回して身体で2人を受け止めるインコ。
しかしその後ろにはカスが待ち構えており、インコを蹴りで地面へ叩き付けた。
「さっきのお返しだ。」
動かなくなったポチとインコを庇うように、コンがカスに向けて青い炎を放つが、その炎をものともせずにコンへ近づき、連続でコンを殴り付ける。
それを止めようとデスが体当たりで突き飛ばしカスを引きつける。それによりコンからは離れたが、そのまま上空へデスを蹴り上げる。カスは瞬時に地面を蹴ってデスよりもその上空へ先回りし、踵落としの要領で足を上げ、デスを地面へ向けて蹴り落として地面へ叩き付けた。
デスは全身の痛みに耐えながらも身体を動かし、立ち上がる。傍には同じく必死に立ち上がった3人も一緒だった。
「終わりだ。」
カスは地面に降り立ち、ゆっくりと4人へ歩み寄りながらそう語り掛ける。
満身創痍な4人は同時に龍気を口の中に集めて、それを一気に放出する。
「破龍の咆哮」
「氷龍の遠吠」
「青龍の鱗火砲」
「風龍の風魔砲」
それぞれ4人の口から放たれた龍気のエネルギーは1つの大きなエネルギーへと変わってカスへ直撃した。その直後カスが身に付けていた鎧などの装備は全て砕け散り、やがて大きな爆発と共にその周囲へ衝撃波が広がる。
「ったくうぜぇ。思わず剣を抜いちまったじゃねぇか。さすがにさっきの攻撃はヤバかったぞ。お前らがこんな強いはずは無いんだよなぁ~。どうやってその力の使い方を覚えた? こんなことなら機械人よりもお前らを利用すればよかったじゃねぇか……。まぁいい、どちらにしても俺には勝てん。もう死ね。」
カスは一気に4人のもとまで加速して身の丈よりもはるかに巨大な剣を構えた。コンは皆を庇うように前に立ちはだかるが、カスの剣は一切の躊躇をすることなくコンの身体を斬り裂くことになった。
満身創痍な3人はそれに全く反応できず、コンは肩から斜めに胴体を引き裂かれて静かに倒れることになった。
やがてコンは魔物が死んだ時と同じように身体がパリンと割れて消滅していった。
「主流、身代わりの術。 主、後はお願いします!」
「からの……忍殺、龍雷拳」
「おぶっ?!」
私はコンの分身体が斬られたと同時に、隙だらけのカスへ向けて攻撃を仕掛けていた。たまらずカスは後ろへ吹き飛ぶことになる。尚も私は神成モードを発動したまま、瞬時に距離を詰める。
「んな?! お前?! やっぱり生きてやがったか! ヘタレめ、しくじったのか?!」
「忍殺、殺人コンボ1」
忍殺拳の4つの技である、蹴雷拳、龍雷拳、桜雷拳、槍雷拳を流れるような動きで続けざまに放つ。
「があああぁぁぁぁッ?!」
怒涛の連続攻撃をモロに受けたカスは溜まらず膝を付く。
私はこの4人がカスを引きつけている間に傷ついていたクモを異空間へ回収した。クモはかろうじて生きてはいたが、正直ひどい状態だった。人間の姿のままだったけど、全部の爪は剥され指や手足に至るまでの骨という骨はやらゆる方向に曲げられ、身体のあちこちには火傷や刺し傷があり、内臓の一部は外に引きずり出されていた状態だった。
あの子はこんな状態にされながらも必死に声を我慢した。私やマヌケ、そしてあの4人が盗聴器からそれを聞いていたからだ。
この子らの人型は魔物の身体から本当に人間の身体に作り替わっている。なので、もちろん神経などもそのままなので、当然痛みや苦痛もそのまま人間と同じように感じる。
この尋常じゃない痛みを必死に我慢して自分達に心配をかけないようにしていたのだ。
「コン……絶対に助けて。」
「はい! 必ず!」
私はコンを含め瀕死の4人を異空間へ収納し、口元の血を拭っているカスと対峙する。
「ちッ……。この力はなんだ?」
「……。」
私は当然メチャメチャ怒っている。クモにあんなひどいことをした上にそれを助けようとしたこの子らまで痛めつけられたのだ。
そもそもこの子らが先に攻撃を仕掛けるのも私は正直反対だった。しかしこの子らは、大事な仲間にひどいことをされて何もしないなんてことができるはずがなかったのだ。
私とマヌケに向かって真剣な顔で頭を下げながらお願いするこの子らの想いを私は否定したくなかったのだ。




