第65話 火事
勇者候補の名前を811号→450号へ修正しました。
ここは、テンガラスの城の豪華な客間である。
ここには本日到着したばかりの5つの国の国王が寛いで談笑をしていた。そこにいるのは国王5人のみであり、それぞれの親衛隊は別々の部屋で休んでいる。
「皆、遠いところわざわざすまなかったな。良く来てくれた。」
「何を言うか「キリサメ」。国王会議は平等に各国で行うと皆で決めたではないか。」
「そうだったな、「マキシム」。お前は若いのにしっかりしておる。」
「そりゃ~天下の中央の国王なのじゃ。ワシらとは考えることが違うわ。」
「あまりいじめないで下さいよ、「ロドリグ」。」
「しかし、この国は寒くて敵わん。老体のワシには堪えるわい。」
「あらあら、そうおっしゃるのならそろそろ引退なさってはいかがです?」
「全くこんな時までやめないか「シリウス」。国王会議は明日だぞ?」
「分かっていますわ、「エドルド」。冗談ですわよ。」
この国王達は決して仲がいいわけではない。顔を合わせる度にこのような嫌味を言い合うことになる。中でも西の国王と東の国王は特に仲が悪い。顔を見合わせては嫌味を言い合っている状態だ。
しかし、中央の国王と南の国王は昔から仲が良く、忙しい合間を見つけてはこそッと一緒に食事を行うほどの仲であった。
北の国王はいつも近寄りがたいオーラを出しており、会議の場でも基本は聞き役に徹している。その場で出たいろいろな意見をいつもまとめる役なのだ。
一見何気なく談笑しているように見えるが、実はもう相手国の探り合いが始まっている。ちょっとした会話の中でも相手の裏を読み、予測し合うようなやり取りが繰り広げられている。
「さて、会議は明日だ。キリサメよ、俺はそろそろ部屋で休ませてもらおうと思うが、良いか?」
「構わんよ。今日はもうお開きにしよう。夕刻には食事を持たすので、どうかゆっくり寛いでくれ。」
それからそれぞれの国王は用意された自室へと戻っていった。インチキさんも同じように用意された部屋のソファに腰を下ろす。
「……。」
「もう喋って大丈夫だよ。一応調べたけど何も無かったわ。」
「クモくん、ありがとう。さすがに部屋には何も仕掛けをしなかったか。」
このような用意された部屋というのが一番危険だ。いくら国王といえど、人間であれば疲れもするし気を抜く時もある。すると、ポロッと重要な情報を喋ってしまうこともあるし、不審な動きをすることもある。
「はぁ……やっと気を抜けるよぉ。しんどかったなぁ~。そういえば、あの槍の子はどうしてるんだい?」
「あぁ~アイツなら他の親衛隊さんの目を盗んで抜け出していたわよ。多分自分の国のところへ行ったんじゃないの?」
「そうか……。ひどいことされないだろか。心配だな。」
「アンタねぇ……自分の命狙ってたやつの心配なんかすんじゃないわよ全く。ちゃんとマヌケ様が付いてるよ。」
「そうなのかい? さすがマヌケくんだ。」
アタシは今、城の中のある客室の天井裏に潜んでいる。
「何故あいつは生きてるんだ? 暗殺部隊はどうなった?! お前は何をやっていたのだ、450号!」
「も、申し訳ありません。ロドリグ様……。」
「全く使えない奴らめ。このままでは国が悪い状態が悪化するだけでないか。お前は国民の命を背負っているんじゃぞ! わかっておるのか?!」
「ひっ?! も、申し訳ありません!」
東の国王は450号という名の槍を持った勇者候補を押さえつけ、拳を上げようとしていた。すると突然、部屋の中に巨大な狐の化け物が出現する。
「ななっ、なんだお前は?!」
「東の国王よ。お前の悪だくみは全て分かっている。お前が仕向けた暗殺部隊の者は全てウチの炎で焼き尽くした。残るはその者だけだ。」
狐の化け物はそう言うと槍の勇者候補を一飲みで食らってしまった。
「あ、あ、そんな、嫌じゃ……助けてくれ……。」
「ウチがいる限り、中央の国王は殺させぬ。肝に銘じておくがよい。」
狐の化け物はそう言うと忽然と姿を消した。1人になった東の国王は膝を付いて、その場でしばらく動かなかった。
コンちゃんは分身体から気絶している槍の勇者候補を回収し、アタシのところに連れてきた。ショックが大きかったのか、がっつりと気を失ってしまっているので、一応アンブの異空間にコンちゃんが連れて行ってくれた。
これでもう東の国王はインチキさんにちょっかいを出すことが出来なくなった。後は本命の北の国王と西の国王だけだ。
仕掛けて来る気なら、北の国は機械人、西の国は魔物を操って攻めて来ると踏んでいる。しかしスマコちゃんの予想は少なくとも今日は攻めて来ることはないだろうという考えだ。
アタシとアンブはその日、城内のマッピングだけを行い近くの宿へ入っていた。インチキさんの計らいで、滞在期間中はこの宿屋に止めてもらうようにしていたのだ。
アンブも横になると眠ってしまったので、アタシもしばらく休んでからコンちゃんやクモちゃんと交替しようと思っていたところで、天空界についての調査を行っていたデスくん、インコくん、ポチくんが帰って来た。
「マヌケ様、只今戻りましてございます。」
「皆お疲れ様。どうだった?」
「それが、全く情報が無いんだよ。オレたち結構聞き込みやってみたんだけどな。」
「誰に聞いても、知らない。分からない。としか言わないんだもん。困っちゃうよぉ~。」
「そうなんだ……。でも何かこの国にあるはずなんだよ。天空界に繋がる情報が……。」
「とりあえずオレらはまた明日も情報を探してみるさ。」
「うん。頼むね。」
しばらくの間ゆっくりした後アンブが起きたので、再度城の中へ戻った。そしてクモちゃんとコンちゃんを異空間で休ませて、アタシ達が代わりに天井裏から見張りを行う。
「クモくん、いるかい?」
「クモちゃんは今異空間で休んでもらってます。」
「マヌケくんか。今丁度クモくんも休んでくれってお願いしようとしていたところなんだよ。オレにずっと付いていてくれたからね。」
「今日はもう何か起こる事はないでしょう。明日に備えておやすみ下さい。」
「ありがとう。やっぱり君たちは信頼できるよ。おやすみ」
「……。」
そういうとインチキさんは本当にスヤスヤと眠ってしまった。
――命を狙われているかもしれないこの状況でよく眠れるよこの人は。
アタシの心配を他所にその夜は本当に何も起こらなかった。クモちゃんとコンちゃんと交替したアタシ達は会議の時間までしばらく宿で休むことにした。
アタシの腕の中でスヤスヤ眠るアンブを抱きかかえながら、宿の方へ向かう。
すると、宿の方で黒い煙と炎が上がっているのが見えた。びっくりしたアタシは急ぎ足で宿の方へ向かう。すると、全体を炎に包まれ勢いよく黒炎をまき散らしながら焼けている宿の姿があった。アタシは周りの野次馬を押しのけて、前に出る。
ここにはデスくんとポチくんとインコくん3人が寝ていた。普通の火事なら全く心配ないが、この炎からは強い魔動力の力を感じる。
いくらあの3人といえども、これほどの強い炎に囲まれては無事では済まない。
――デスくん、インコくん、ポチくん……無事なの?!




