第62話 一応復活?
*****
――私は何をしているのだろう。何故ここに来たのだろう。何のために戦っていたのだろう。嫌われた、嫌われた、嫌われた……。
ひたすら真っ暗な暗闇の中で自問自答を繰り返し、その度に「嫌われた」という悲しい言葉のみが頭の中でこだましていた。
*****
アタシはアンブの様子を見に行こうと2階に上がった。インチキさんはデスくん達と話をしている。アンブのことは代わりにクモちゃんとコンちゃんにお願いしていたのだ。
アタシが2階の寝室のドアを開けた瞬間、目を疑うような光景が広がっていた。
そこには今まで寝ていたはずのアンブが起き上がり、代わりにベッドの上にはあられもない姿でピクピクと痙攣しながら失神している美女2人……。
――一体何が?!
《マヌケ様、逃げろ! ちょっとした暴走モードに入っちまった! この2人みたいに裸にひん剥かれるぞ!》
「ふぇッ?! そん……。」
そこまで言いかけたところで、このアタシが反応できない速度で背後に周り手でがっしりと抑えられた。
「あ、アンブ?! ちょっと待って! ストップストップ! ひぁっ?!」
一瞬で着ていた衣類を全て剥ぎ取られる。
「……忍法、剥ぎ剥ぎの……術。」
《そんな忍法ねぇよバカ! 主止まれっての!》
とんでもない威圧感を出しながら裸のアタシに向かってゆっくりと歩み寄るアンブ。後ずさりをしながらベッド側へ追いやられる。後ろには幸せそうな顔をしてピクピクと痙攣している2人……もうダメだ。アタシもこの2人みたいに……と諦めと少しの期待感を胸に抵抗することをやめた。
そして、アンブはギュッとアタシの胸の中に顔を埋めたまま動かなくなった。
「……これこれ……。」
「……ん? アンブ?! お、終わり……なの?」
覚悟を決めていたのと少しだけ期待してしまっていたので何とも残念な気持ちになった。頭を撫でてみても反応がないし、ギュッと抱き着いたまま離れそうにない。そこへインチキさんが下から声をかけて来た。
「マヌケくん、俺はそろそろお暇しようかと思っているのだが……もし可能ならまた送ってもらえないだろうか。2階にいるのかい?」
そう言いながら2階に上がってこようとするインチキさん。
「あっ、ちょっと待って下さい! 今来ないで下さい! 来たら本当に殺しますよ。」
「お、おぉ、すまない。怒らないでくれ。」
ビクビクと震えながら下に降りて行くインチキさん。
「アンブ? インチキさん送り出してくるから、ね?」
アンブにそういうと、一応離れてくれた。服を着て下に降りようとするとまたくっ付いて離れなくなってしまったので、仕方がないので抱っこしたまま下に降りた。
「すまないね。ん? やぁアンブくん、久ぶ……」
そこまで言ったところで、アンブは突然アタシを抱きかかえインチキさんの首根っこを掴まえて国王室へ転移した。
「りッ?! え?! ちょ……。」
そしてお別れも言わずにインチキさんだけを放り投げてまたすぐさまログハウスへ転移した。その後もアンブはアタシにしがみ付いて離れなくなってしまった。
「ア、アンブ? もう大丈夫なの?」
「……。」
「主様! 良かった! 起きたんだな!」
「……。」
「スマコちゃん? なんか様子がおかしい気がするんだけど。」
《主の意識はまだ真っ暗闇の中で心を閉ざしたままだ。だけど、おそらく極限の悲しみの中で唯一マヌケ様への想いだけは残ってる状態なんだ。だから無意識に身体が動いちまってる一種の暴走モード状態だな。》
「え?! じゃあまだアタシ達の声は届いていないの?」
《そうとも言えるし、そうとも言えない。やっぱり一番の根本的な原因をなんとかしないといけないだろうな。》
「そうなのね……。」
しばらくすると、服を着たコンちゃんとクモちゃんがフラフラしながら降りて来た。
「あ、主様……凄まじいですね。」
「ア、アタシあんな感覚は初体験だったよ……意識が宇宙まで飛んでいったみたいだった……。」
「ク、クモちゃん……それはあまり人前で言わない方がいいかもね。とりあえず、アンブも一応動けるようになったし、インチキさんの護衛を兼ねた国王会議に紛れてテンガラスを調べるよ!」
「「はい!」」
それからアンブの容態を見ながら3日程過ごした。暴走モードのアンブはいろいろと凄まじい。基本はアタシにくっ付いて離れないのだけれど、何かスイッチが入ると一瞬で服を剥ぎ取られる。これがアタシでも反応できないくらいに早いもんだから、困ったものだ。クモちゃんやコンちゃんは更にその後意識を宇宙まで飛ばされて毎回失神している……。
それが屋外にいる時にはスイッチは入らないようだから、そこだけは本当に安心した。さすがに人前で裸にされる趣味はないからね……。ただし、何がスイッチなのか全く分からないから今でもちょっとビビッている。
そして、国王会議に出発する日となった。
アンブの転移でインチキさんの城に転移したアタシ達は国王室へ来ていた。
「今日は皆よろしく頼むよ。基本俺には親衛隊が付いているからずっと近くにいる必要はないよ。ただ、出来れば遠くからでも監視してくれていると助かる。今回は、いろいろと暗躍が渦巻いているからな、おそらく命を狙われることになると思う。」
「分かりました。近くには小さくなったクモちゃんと、医療班ということでコンちゃんが同行しますので、アタシ達は見えないように上空や地上の様々な角度から見ておきます。それとインチキさん、これを渡しておきますので肌に身に付けておいてください。」
アタシはアンブのヘアピンで作成した超小型の桜の花びらの形をした発信機兼盗聴器を渡した。これで、アタシのレーダーにも位置が映るしイヤホンで盗聴も可能だ。
「わかった。すまないがよろしく頼む。」
それからインチキさんの元を離れ、アタシとアンブはインコくんの背中に乗り上空を飛んでいる。
空を飛べるインコくん、デスくんは空から監視を行い、姿を見えないように小さく出来るクモちゃんと医療の知識があるコンちゃんはインチキさんのすぐ傍に、地上を俊足で移動できるポチくんは地上からそれぞれ監視している。
テンガラスまでの移動は馬車で移動している。目的地までの道のりは専用道路があり道路も舗装されていて馬車も非常に走りやすい場所だった。ただ、逆に言えば敵が狙うには絶好の場所ともいえる。
正直皆の力を使えばすぐに到着することが出来るが、それはインチキさんが断った。どうしてわざわざ危険に飛び込んで行くのかと不思議だった。
「何か仕掛けてくるなら必ず移動時だろ? だから普通に移動してやるさ。俺は君達を信用しているからね。」
――なんてことを言っていたけど、本当に大丈夫なの? あそこまで信用されても困るんだけど……逆に嫌とも言えない雰囲気を作り出しているのよね。これもインチキさんの話術なのかなぁ。
そんなことを考えながらも一応、監視を続けていた。




