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第61話 情報の共有

 翌日、町長は緊急の町民会を開いた。

 そこで今までの事を全て打ち明けた。

 90号の悪事も、それを自分が結果的に手伝っていたことも、町の皆を危険な目に合わせていたことも、今までたくさんの犠牲を出していたことも。


 その全てを土下座して謝っていた。


 当然の如く、町の皆が納得するわけがない。たくさんの罵倒や非難中傷が飛び交い、悲惨な状態だった。しかし、町長は土下座をしたままその全てを受け入れた。そして、自分は町長を辞めてこの町からも出て行く覚悟をしているようだ。


 アタシは空を飛び上空から、町長に仕込んでいたアンブの盗聴器でそれを盗聴していた。


――これも1つのけじめだね……。アタシはそれをとやかく言うつもりもないし、許すつもりもない。それでも……一応はアタシを引き取ってくれた人物だ。その恩を感じているからなのか、なんか心の奥がチクチクする。


 それからもひたすら謝り続ける町長。正直見ていられなかった。アタシは、この辺りで見るのも聞くもの辛くなり、アンブが待つログハウスへと帰った。


 アンブは相変わらず、一点を見つめたまま全く動かない。コンちゃんがずっと付いてくれているんだけど、状態は平行線を保ったままだ。アタシ達の言葉に対して反応は全くないが、食事だけはきちんと取っている。それがまたアンブらしくもあって可愛いんだけれど、やっぱり前にみたいに反応してほしいし、スリスリしてきてほしい……。


 昼間はそんな感じなんだけど、夜になるとまた突然涙を流し初めてひたすらヘタレに謝り続けている。

 その度に涙を拭いながら、必死に声をかけて励まし続ける。


 そんな日が何日か続いた。


 町の方は次第に落ち着きを取り戻しつつあった。


 結局町長の処分はこの国の国王であるインチキさんに判断を委ねることになったようだ。町の皆の怒りはやっぱり簡単には収まることは無いけど、全て町長が悪いわけではないことも皆は分かっている。かといって何のお咎めもなしで無かったことにしてしまうのは筋が通らない。ということで判断をインチキさんへ任せたのだ。


 インチキさんの評判はこの港町でも良い方だ。たまに視察で訪れた時には、きちんと1人1人の話を真剣に聞いている。

 その威張りくさっていない気さくな人柄で支持されているので、今回の判断を委ねられたのも納得する。


 一応、アタシの方からインチキさんへ連絡を取ったらすぐに港町へ行きたいと言ってきたので、インコくんへお願いしてインチキさんを迎えに行ってもらった。


 3時間後くらいにはインチキさんが港町へ現れた。


 突然の国王の登場に、町のみんなは慌てしまったけれどそれぞれに事情を聴き出した。そして、全ての真実を知った国王は、町の皆の前で土下座した。


「このような事態を招いてしまったのは私のせいでもあります。本当に申し訳ありませんでした。」


「こ、国王様?! 顔を上げてください!」


「私は国の王として恥ずかしい。みなさんがどれだけ苦しい思いをしたか、どれだけ我慢の日々を過ごしていたのか、考えただけでも胸が苦しくなります。」


「……。」


「この町長も日々戦っていたことでしょう。確かに過去は無かったことには決してできるものではありません。しかし、未来を変えることは出来ます! みなさんどうでしょうか、今一度この者に町を守らせてやってはくれませぬか。」


「……」


「みなさんを守ろうとしていたその思いは紛れもない事実です。今度は私も全力で一緒に守ります。どうでしょうか、もう一度チャンスをいただけないでしょうか。」


 しばらく沈黙の後に、小さく拍手の音が鳴り始めた。

 それはやがて、次第に大きな祝福の音へと変わり町のみんなの気持ちが1つになったことを示した。


 アタシはそれをログハウスからイヤホンで聞いていた。


――ふふふ、良かったね。


 その後町長は町の皆と今後のことについて会合と町をあげての「反省会」という名の飲み会が始まったようだ。会合に出席していたインチキさんから電話がかかってきた。


「あっ、今大丈夫かい? 今日は連絡くれてありがとうね。助かったよ。」


「いえ。たいしたことではないですよ。」


「今この町にいるんだろ? 少しだけでも話が出来ないかい? あれからいろいろと情報が分かったのと、テンガラスでの国王会議の話をしたいのだが……。」


「……わかりました。それでは、迎えを出すのでアタシ達の家に来てください。」


「わかった。」


 アンブがこの状態なので、正直どうしようかと思ったけれどヘタレの事を追うなら情報が必要なので、話を聞くことにした。

迎えはポチくんに行ってもらった。地上では一番の速さだし、その身軽さで誰にも見つかることなくここまで連れて来てくれると思ったからだ。


 想像通りに誰も見つかることなく、このログハウスにインチキさんを連れて来てくれた。


「やぁ、お邪魔するね。とても素敵な家じゃないか。しかし、君の仲間達もみんな凄いんだねぇ。」


「はい。大事な仲間です。」


「そうか。ん? アンブくんはどうしたんだい?」


「……今は上で寝ています。」


「? そうなんだね。まぁ、起きたらお礼を言っておいてくれると助かるよ。」


「はい。」


 それからインチキさんが知った情報を教えてもらうと同時に、こちらが知り得た情報を共有化した。

 まず、あのカプセルを作らされていた3人からは全て事情聴取は済んだらしい。3人からの証言で特に進展は無かった。そして、あの責任者だった男からはそれなりの情報が手に入った。やはり、あの女の機械人と研究者は手を組み、機械人化計画を内密に進めていた。

 それは、北の国(テンガラス)が先に機械人化計画を完成させていた為それを上回る機械人を作ろうとしていたとのこと。

 

 そしてテンガラスよりも上回った技術を持って、更に魔物を自在に操れる薬を開発した西の国(ハピシス)と共同し、この中央の国(ルドラルガ)の王都と、北の国(テンガラス)を滅ぼそうと企んでいたようだ。

 要するに、機械人化の技術を持ったテンガラスの技術と、魔物を操る技術を持ったハピシスの技術2つを用いて自分達がこの星の頂点に立とうとしていたわけだ。


 しかし、それは結果的にハピシス側に唆されたに過ぎない。結局あの男は機械人化計画も完成できず、魔物を操る技術を持ってしても王都を滅ぼすことは出来なかったのだ。

 テンガラスとハピシス側との接点は完全に消去されているところを見ると、やっぱりあの人達はただの捨て駒だったといえる。


 そしてテンガラス側は定期的に人さらいを行い、その人たちを機械人にしているのか又は人体実験に使っているのか、その用途は不明。


「どちらにしても、今回の国王会議はいつにも増して荒れるな……。」


 インチキさんは悲しそうな目で遠くを見つめていた。

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