第60話 真実
アタシを見た町長は明らかに動揺を見せていた。
町長「な、なぜお前がここにいるのだ! ま、まずい。おい! お前たち!」
「無駄ですよ? クモちゃんの糸は人間が斬ったり焼いたりしても簡単にほどけるものではありませんので。」
目の前に魔物姿の巨大なクモちゃんが現れる。
町長「あ、あわわわ?! な、何故こんな化け物が……た、頼む! 見逃してくれ!」
「それは出来ませんよ。だってあの方々に危険が及びますから。」
町長「このままでは……まずい! 悪く思うなよ!」
そう言ってアタシに銃を向ける町長さん。
「お願いですからその銃を下ろして下さいね……90号さん。」
90号「え?! 一体何を言っているの599号ちゃん! この人がおかしな行動を取っていたようだから、私はたった今後を付けて来たところなのよ?!」
「……。」
90号「これは一体どういうことなの?! まさかあなたが町の人たちを攫っていたの?!」
町長「……あ、あぁそうだ。全ワシがやった。」
90号「なんということを……。これは国へ正式に報告を行う必要があるようですね。」
「お2人ともお芝居はいいですよ。もう全てわかっていますから。」
90号「……っ?!」
90号さんが拳銃を構えて撃つ前にアタシはエアードショットでその拳銃を撃ち抜く。
「無駄な抵抗はやめて下さい。あなたではアタシに勝てません……。」
90号「……123号、やりなさい!」
90号さんがそういうと突然123号さんが人間離れした動きでアタシに向かい、突っ込んで来た。
「デスくん、お願い。」
デス「はっ!」
デスくんはアタシに突っ込んでくる123号さんへ空中から龍気と衝撃波を纏った拳で押さえつけた。
90号「んなっ?! チィッ! お前たち、出ておいで!」
「インコくん。」
インコ「もう終わってるぜ、マヌケ様。」
沖合にいた別の船がアタシ達の近くの船着き場に停まった。そこから2人の機械人の反応をレーダーで察知していたが、全身が機械の不完全な機械人はインコくんの奇襲により、身体がバラバラになっていた。
この5人はコンちゃんから情報で機械人の身体の構造と弱点を聞いていた。不完全の機械人は機械で身体を成型しているので、どうしてもパーツ同士を組み合わせている連結部分は弱くなっているらしい。更に心臓部にあるコアを破壊する事で魔動力の提供も止まり、動けなくなるのだ。そこをインコくんお得意の風の刃で切り裂いたというわけだ。
90号「そんな?! なんてこと……。」
「さぁ90号さん、終わりにしましょう。」
90号「どうして私が怪しいと思ったのですか?」
「先日、今日と同じように町長さんが機械人へ連れ去られようとしていた人を逃がそうとしていました。最初は町長さんが機械人に人を引き渡していたのかと思っていたのですが、町長さんに発信機と盗聴器を仕掛けていたので、それが勘違いであることを知りました。そして、実際は裏で北の国側と内密なやり取りをしながら、こちらの情報と人を定期的に送っていた人物が90号さん、あなたであったことも。」
90号「ちっ、本当に最後まで使えない男だわ。何やら裏でコソコソやっているのは知っていましたが、こちらの邪魔だけではなく秘密まで調べられるとは。」
町長「こ、これまでワシがどんな思いだったかわかるか! お、お前たちに大事な町の住民を何人も連れ去られて……。」
90号「だから邪魔をしようとしたのですか? あははは。結局あなたは何もできなかったではありませんか。」
町長「う、うるさい! それでもこの2人は協力してくれたのだ。」
そう言ってクモちゃんにグルグル巻きにされている2人組を指さす。
90号「全くこれだから。あの方々は私側の者です。何人か連れ去る人物を助けたつもりだったのでしょうが、残念ながら全て彼方側へ送っていたのですよ?」
町長「そ、そんな……。それじゃあワシはなんの為に……。」
90号「おほほほほ。惨めですわね。町では全員に嫌われ、裏で助けていたつもりの人物達は全て自分の手で人体実験の材料として送っていたなんて。傑作ですわ。」
町長「お、おぉ……。」
町長は膝を落とし、涙を流した。
「90号さん、北の国は機械人化計画を行っているのですか?!」
90号「ん? おほほほほ。機械人化計画とは、何を昔の話をしているのです?」
「え?! どういうことですか?」
90号「そんなものは随分前に完成されていますよ? あなた達人間側が気付いていないだけですわ。」
「それなら北の国は機械人をそんなに作って一体何をしようとしているのですか?」
90号「お喋りはここまでです。123号、やりなさい!」
デスくんが抑えていた123号は突然全身から煙を噴き出した。それが煙幕となり周りが全く見えなくなってしまった。しかし、アタシにはレーダーがあるので、それで位置を察知しようとしたが、なんと90号と123号はレーダーに反応しなかった。その間に2人は姿を眩ませてしまっていた。煙がはれた時には、遠くの沖合を飛行している2人の姿をデスくんとインコくんが確認していた。
――90号さんは分からないけど、123号は明らかに機械人だった。それがアタシのレーダーに反応しないのは何故?!
今までは魔物にも機械人にも反応していたので、心配していなかったが反応しない機械人もいるということだ。
――今後は気を付ける必要があるかも……。
町長「599号……その、なんだ……。すまなかった。」
「いえ……。それでは、アタシ達はこれで。」
アタシは逃げるようにその場を立ち去った。
今までの町長の嫌味な発言や悲惨な行いなどは全て90号が仕組んでいたことは分かった。90号はわざと町長に嫌われ役を買わせ、逆に自身が町の皆に慕われるように誘導していたのだ。そして裏では町民への無理な住民税の引き上げ、王都側への納品単価の引き上げなどを町長にやらせて、その利益分を全て自身の元にくるようにしていたのだ。
そんな中でも町長は本当に町の皆を守ろうとしていた。連れ去られる人物をおそらく90号が仕組んだ人物からの情報で入手し、助けようとしていた。結果的にそれは拉致の手伝いをしていたことになっていたけど……。
因みに、アタシを引き取って町長へなろうと仕込んだのも90号だった。町長夫人の方がいろいろと動きやすいと思ってのことだったようだ。今になって思えば、90号も会えば凄く優しくしてくれてはいたのだけれど、家を追い出されて1人暮らしをはじめた時も、熱が出て苦しくて動けなかった時も、90号は一度も助けてはくれなかった。
――アタシは今まで表面上の愛情の中で生きて来たんだね。……だからなのかな、アンブやヘタレに心を動かされるのは。




