第59話 もう一つの暗躍
アンブはそれから黙々とご飯を食べた。
相変わらず目に光は灯っていないけど……。
ご飯を食べさせたアタシはスマコちゃんに5人を出してもらった。皆の分のご飯も作ったので、皆で食べようと思ったのだ。
皆も心配そうにアンブを見ながらご飯を食べた。
特にクモちゃんは凄く寂しそうだった。
いつもならご飯の奪い合いなんか始めていつもアンブからイジられているもんね。ずっとアンブを眺めながらチビチビ食べているが、あまり箸が進んでいない。
「そういえばコンちゃん、あの機械人はどうなった?」
ふとあの機械人♂のことを思い出してコンちゃんに聞いてみた。すると、とても邪悪な笑みを浮かべて、ウィナーを斬っていたナイフをクルクルと回し始めた。
コン<なかなか切り刻みがいのある者ですよ。主様の異空間にウチの研究室があるのですが、そこでいろいろと切り刻んでおります。おかげ様で少し機械人の身体の仕組みが分かってきているところですよ。>
「あ、あはは~。異空間に研究室まで作ったんだねぇ……。何か他の情報は吐かなかった?」
コン「それが、あの者はあまり情報を与えられていなかったようなんですよ。基本はあの女の機械人の指示で動いていただけのようです。ただ、完成された機械人はあの2人だけではないようなんです。あの女機械人でも下っ端の位置づけだったようですよ。」
「それは気になるね。これで全て解決したつもりでいたのに。まだ事件は終わってないってことだよね……。」
デス「コンの話から推測するに、あの魔物を操る薬剤もどこかの国ですでに完成されており、更に完成された機械人達もどこかで機会を伺っているような気がします。」
ポチ「こんなまわりくどく王都の地下であいつらにコソコソやらせていたところを考えると~それすらも実験だったのかもしれないねぇ~。」
インコ「確かに。最初からあいつらは捨て駒だったのかもしれんな。」
クモ「ていうことは何何?! まだ機械人はどこかにいるってこと?! あのカプセルの恐怖はまだ消えてないの? いやだなぁ~。」
「とりあえず、まずは出来ることを片付けていこうか。皆も協力してくれる?」
「「はい!」」
それからアタシ達は数日かけて、もう1つ気になっていたことをいろいろと調べ始めた。そのおかげでまだ事件は終わっていなかったことを知る。それがこの港町の中で内密に行われていたことも。
そして、それはまた本日の夜に内密に行われようとしていたことも。
アタシは町長さんの家に向かう準備をしていた。インチキさんに納品単価の引き上げをしてもらったので、その報告を行う為だ。
「スマコちゃん、コンちゃん、アンブのことお願いね。」
《あぁ、マヌケ様も気を付けてな。》
コン「お任せ下さいマヌケ様。主様は命に代えてもお守りします。」
「うん。よろしくね。」
アタシは町長の家まで歩いて来た。
玄関から呼び鈴を鳴らすと、いつものように123号さんが迎えてくれる。
そしてすぐに90号さんが駆け付けてくれた。
90号「599号ちゃん! よく無事で。帰って来てくれて嬉しいわ。」
「こんにちは90号さん。無事に戻れて良かったです。ご心配をおかけしました!」
笑顔で挨拶を行い、居間に通される。
しばらく90号さんと談笑していたところに町長が入って来た。
町長「ふん、生きて戻ってきおったか599号。魔物にでも殺されてしまえばよかったものを。」
90号「あ、あなた。さすがに言い過ぎですよ。仮にも私達がこの子を引き取った責任が……。」
町長「年増は黙っとれ。お前に発言は認めておらん。」
90号「……申し訳ありません。」
「お約束通り、国王様に納品単価引き上げの件の承諾をいただいて参りました。」
町長「それに関してはご苦労。これでこの町も豊になるというものだ。何といってもこのワシが豊かになるからな! わっはっは!」
「……あの、出来ればいつも頑張って下さっている町の皆さんへ少しはお恵みをいただきたいのですが。」
町長「あぁん? お前、誰に向かってものを言っておる? このワシに文句があるのか?」
「いえ……。それでは、この港町で定期的に人がいなくなっている件についてのお話をお聞きしたいのですが。」
アタシがそう発言した瞬間、明らかに町長の顔色が変わった。
町長「何のことだ? 確かに行方不明者は何人か出ているが、それは全て魔物に攫われているからだ。それもこれも勇者候補であるお前が、あの魔物が湧いて出る迷宮を早く何とかしないからだろうが! 自分の無能さを棚に上げてこちらのせいにするんじゃない。」
「はい。申し訳ありませんでした。それではもうここに戻ってくることはないでしょう。今まで、お世話になりました。」
90号「え?! また迷宮へ行ってしまうの? もう戻らないってどういうことなの?!」
「90号さん、そのままの意味ですよ。アタシはもうここには戻りません。」
90号「599号ちゃん……。」
「それではアタシはこれで。123号さんもお元気で。」
123号「はい、599号様もどうかお気を付けて。」
それからアタシは町長さんの家を後にした。
もうすっかり夜は更けていた。
しばらく時間が経った後、暗闇の部屋の中で話声が聞こえる。
……「おい! どういうことだ! 感づかれているぞ! 大丈夫なんだろうな?」
……「お前の意見はいい! 王都側が何もしてこないとは限らんぞ?!」
……「何?! それは確かな情報なのか?!」
……「わかった。連れて行こう。」
その人物は、港町のある一人暮らしをしている男性の元を訪れていた。
……「夜分にすまない。少し顔を貸してくれないか?」
「ちょ、町長さん?! 何故僕のような者の家に? 僕が何かしましたでしょうか。」
町長「いや、そうではない。いつもお前の働きぶりを見ていて関心していたのだ。だから、こそっと褒美をやろうと思ったのだ。」
「ほ、本当でございますか?! いつも見て下さっているとは気づきませんでした。正直今までそのような態度を取られていなかったので……どうやら僕は町長さんのことを勘違いしていたようです。すいません。」
町長「良いのだ。町の長という者は嫌われているくらいがちょうど良い。今度の為にも内緒にしていてほしい。」
「わかりました! でも僕は嬉しいです。僕達の町長さんが本当はこんなに素敵な方だったなんて。」
町長「ははは、よしなさい。さぁ、早く一緒に行こうじゃないかね。」
「はい! それではお言葉に甘えます。」
会話を終えた2人は暗闇の中を海の方へ向かって進んで行く。町長は頻りにまわりを気にしながら先頭を歩いていく。なんの危機感も持っていない男性はそれに続いて歩く。
やがて船着き場へと着いたが、いつも停まっていない場所に小さな船が停まっていた。そこへ一直線に向かっている町長と男性。
町長「この船に乗ってくれ」
「え?! どうしてですか? 今からどこかに行くのですか?」
突然のことに男性は混乱している。
町長「いいから乗るんだ! お前たち頼む!」
町長がそういうと2人の男が船の中から出てきて、男性を無理やり船に乗り込ませてしまった。すぐに船を動かそうとしていた男2人が、突然細い糸のような物で瞬時に拘束されて倒れ込んでしまった。
何が起こったのか分からないという顔をしている町長の前にアタシは姿を現した。
「……何をしているんですか? 町長さん。」
町長「お、お前は……599号か?!」




