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第57話 崩壊

 それからのアンブは酷い有様だった。


 あの後、クモちゃんとコンちゃんが戻って来て状況を知らせてくれた。連行した人間は研究施設の3人いる責任者の内の1人と、その側近部下の3名だったようだ。ある程度コンちゃんがインチキさんにも報告を行ってくれたみたいで、この4人は後にしっかり取り調べを行うことにするらしい。これで手を貸していた他の国もわかるといいのだけれど……。


 あの機械人については、いろいろ調べたいということでコンちゃんが引き取った。インチキさんも危険性をよく分かっているので、それには了承したらしい。


「とりあえず港町へ帰ろうか。」


 いつもならアンブの転移魔法で一瞬だけど、この状況なので飛んで行くしかない。


《転移は流石に無理だが、異空間なら何とか私でも一瞬開くことは出来る。インコ以外はすぐに入れ。》


「主様……。」


 クモちゃん含め皆がアンブの方を心配そうに眺めながら異空間へ入っていた。


 アタシはアンブを抱いたまま、インコくんの背中に乗り港町を目指した。その道中もアンブは涙を流したまま、何を言っても動かない人形のようになっていた。それは港町のログハウスに着いてからも変わらなかった。


 インコくんは異空間へ入ってもらい、アンブをベッドに寝かせる。


《主よぉ。頼むから返事してくれよぉ。寂しいじゃんか。》


「アンブ……。」


――アタシには何も出来ないの? 励ます? 慰める? そんなことをしても逆に苦しめてしまうかもしれない。希望を与える? どうやって?


 何とかして力になりたいのに、どうしたらいいのか分からない……。

 何も出来ない自分に腹が立つ。


「ごめんね。ヘタレ。」


「アンブ?!」


「ごめんね。本当は嫌いだったんだね。本当は嫌だったんだね。本当は迷惑だったんだね。ごめんね……。」


 無表情だった顔が絶望と悲しさと寂しさに満ちた顔へとなり、涙をぽたぽたと流しながら謝り続けるアンブ。


「アンブ……。」


 アタシは謝り続けるアンブの手を握り、涙を拭い続けた。それは何時間も続いていたが、やがてアンブは目を閉じて眠ってしまった。


「スマコちゃん……どうしたらいい?」


《私にもわかんねぇんだよちくしょう……。主の悲しみも寂しさもどんどん流れ込んできやがる。今の主の心は完全に崩壊しちまった。これをどうやって戻せってんだ? 何もわからねぇ。主専用AIが聞いてあきれるわ。》


――スマコちゃんもアタシと同じなんだ。何かしてあげたいのに何も出来ない自分に腹を立てている。


《……こればかりは時間がかかる。すまねぇが主を守ってほしい。》


「もちろんだよ。アタシはずっと一緒にいるって決めてるんだから。」


《ありがとう。私は主に仕えるようになってから「想いの力」ってのが大事なんだと知った。しかしそれは時に、凶悪な凶器にもなるんだな……。人間なんて本当にめんどくせぇ。》


 アタシは何も言えなかった。


 ヘタレが実は内心あんなことを「思って」いたなんて想像もしなかったし、それはアンブの「想い」を真っ向からグチャグチャに踏みにじってしまった。

 もちろんそれはアタシにとってもかなりショックなことであり、思い出したくもない。人間の思いや想いは複雑で確かに面倒くさいのかもしれない……。


 もう外は朝方で少し明るくなりかけていたけれど、アタシはそのままアンブの横で眠ってしまった。


 アタシは自分のデバイスが鳴っている音で起こされた。

 モニターを見るとインチキさんからだった。


「……はい。」


「あっ、今大丈夫だったかい? 昨日のお礼と、その後の取り調べから得た情報を伝えておこうと思ったのだが……。」


「はい……いいですよ。」


 それからインチキさんは報告を始めた。

 あの研究施設の地下は、今調査団を派遣して隅々まで調査を行っていること。そして、あの研究者施設を管理していた者は黙秘を続けているが、その部下だった者達は口を割り始めたこと。どうやら奴らは高い報酬を受け取る代わりに、不定期にあの地下へ出入りして内密にカプセルの製造を行っていたようだ。それが、この王都を滅ぼす為の物とも知らずに。


 それとあの魔物を操る薬剤については何も知らなかったらしい。あの責任者の男に、この薬剤を時限式かスイッチ起動で広範囲に散布できるようなものを作れと指示を受けただけのようだ。


 となるとあの薬剤は責任者の男が開発したか、もしくは他の国からの情報を元に作ったものなのか、また機械人化計画についてなどは男が黙秘を保っているため、まだ調査中とのことだ。それと、機械人にされてしまっていた人を地下の牢屋みたいな場所で見つけたようだ。ただその人達は発見された時には皆息を引き取っていたらしい。


 その辺りまで聞いたところで、アタシは電話を切った。


 横に寝ていたアンブに目をやると、涙の後が残ったまま顔はいつもの無表情に戻っていた。しかし、天井の一点を見つめたまま微動だにせず、その様子からとても悲しそうな雰囲気を感じる。


「アンブ、お腹すかない? 何か食べる?」


「……。」


「……それともお風呂入る?」


「……。」


「アンブ……。」


 何を言っても手を握って見ても身体を少し揺すってみても無反応。


《主は今、真っ暗の闇の中を落ち続けている。私の声もマヌケ様の声も届いていないんだ……。》


「そ……か。」


――どうしたらいい? アタシに何が出来る? 誰か……アンブを助けて。


《うふふふ。何やら助けを呼ぶような声が聞こえましたが、どうやらお困りのようですわねぇ。》


 突然、アンブのスマホから聞こえる声。


「…え? えぇ?!」


《出来ればマヌケちゃんもアンブちゃんみたいに可愛いおパンツを丸出しにするくらいの面白い反応を見せてほしいものですねぇ。ふふふ、今思い出しただけでも……ふふふ。》


「か、神様?! た、確かお名前は……[アクシス]様?!」


《おっとマヌケちゃん、その名ではあんまり呼んでほしくはありませんねぇ。私はただの邪神ですよ。》


「ご、ごめんなさい神様。それよりもアンブを助けて下さい! アタシには何も出来ないんです……何も……。」


 言っている途中で涙が溢れてきてしまった。


《まぁまぁ、まずは落ち着きましょう。あなた方、さては昨日お風呂に入っていませんね? 可愛いいお2人が身だしなみを整えないとは、そんなことではいけませんよ? 今直ぐにお風呂へ入るのです! ぐふふふ。》


「神様……何やら言葉にいやらしさを感じるのですが……。」

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