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第5話 スパイ忍者

 私は鹿の火の玉をなんとか避け続けながら、機会を伺っていた。私が普通の人間であったらならとっくに死んでいたかもしれない。


*****


 私は現代に生きる忍者の父親とスパイである母親の間に産まれた子供だ。私の家系の服部一族は代々忍者の末裔だったのだ。お父さんは代々受け継がれてきた忍法技術を用いて世界中を飛び回りながら、裏世界の悪事を壊滅させている。その表向きは海外出張が多い、サラリーマンという事になっている。


 お母さんの家系は忍者ではなく、スパイの家系だった。服部家より歴史は浅いが、最新技術を用いて作られた機械や道具を使用して、裏情報を隠密に入手するスパイ活動を代々行ってきた。


 現在2人は世界中に5名しかいないとされる秘密の最高権力者からの直命で動く極秘の特殊部隊らしい。事実、その5名が世界を統べており、大統領や総理大臣といった者は表向きの権力者でしかないのだ。実はその5名のうち1名が日本にいるらしく、お母さんは日本を担当している。


 その人物の存在は現代の総理大臣も知らず、天皇のみ知っているらしい。


 また、スパイも両親含めて世界中に12名存在しているけどこれは世界のトップ5名にしか知らないこと。そのスパイ12名も、お互いのことを何も知らないらしい。


 実は私の両親も結婚してからお互いがスパイであることを知ったそうだ。それも凄い偶然で。


 極秘部隊に所属する以上は、家族であっても個人のスパイ活動に関与してはいけないらしい。まぁ、それでもある程度は裏で通じ合っているみたいだし、お父さんがお母さんのことを異常なほどに心配しているくらいで、それ以外はたいした問題ではないと嬉しそうにお母さんが話していた。


 子ども相手に赤くなってノロケるのは本当にやめてほしい……。


 私は小さい頃からスパイ忍者になる為の修行をしていた。私の家は一般的な普通の家だが、地下には巨大な訓練場があったのだ。そこで、忙しい両親に代わり元くノ一だったおばあちゃんが修行を付けてくれていた。忍者とスパイの基本となる動きはそのほとんどが共通している部分が多く、私は両方のより優れたものだけを習得していた。それは、今まで交わることのなかった忍術とスパイ技術の初めての融合であった。


 それも病気に掛かってしまってからというもの、苦労して習得していたものが全くの無意味になってしまっていたんだけどね。でも今は厳しい修行に耐えていたことを心底良かったと思っている。


****


――このクソ鹿め! メチャメチャに火の玉吐きまくってんじゃないわよ!


 私が素早く動き回っているのもあるが、手あたり次第に火の玉攻撃をしてくるので、おかげでこっちはさっきから走りっぱなしだ。いくら身体が動くようになったとはいえ、ブランク開けしたばかりの私にはかなりきついものがある。


 鹿の攻撃である火の玉や破壊された岩の破片などを何とかギリギリで躱していく。しかし、このまま逃げるだけじゃあ埒が明かない。何か武器になるようなものがあればいいんだけど、そんなものは持っていないしその辺にも落ちてもいない。七つ道具の残り2つを持っていなかったことを後悔しながらも別の方法を考える。しかし、攻撃手段は自身の拳だけという結論になった。正直あんなものに近づきたくは無かったけど仕方がないようだ。


 私は重心を落としたまま素早く動き続け、徐々に距離を詰めていく。岩場が無くなってしまったので、姿を見せることになるがそれも想定済み。


 予想通り私を目視した鹿は、すぐさま火の玉を私に向かって吐き出す。それをスキル感知で先読みし、何とか躱す。


 今やっているのは忍者の素早い動きでスパイの状況判断による合わせ技だ。鹿の動きを観察していると、今のところ攻撃はこの火の玉しかない。それに口から吐き出しているので必ず正面を向く必要があり、攻撃にはインターバルがある。

 この状況下なら、今の私に使えるスキル感知で鹿の動きや熱変化などを感知して先読みし、素早い忍者の動きでそれを避けている。


 一応私の変化服は防弾チョッキや耐火服並みの耐久性はあるが、もちろん死なないにしても当たれば痛いし、怪我をするかもしれない。

何とかギリギリ、火の玉を避けながら忍者とスパイの融合暗殺拳である「忍殺拳」が届く距離まで近づいた。


 鹿が火の玉を放った瞬間に、それを避けて一気に距離を詰めた。そして鹿の横側から忍殺拳の蹴り技「蹴雷拳シュウライケン」を放った。


 全力の蹴りにも関わらず、少し横に傾いた程度で殆ど鹿には効いていないような感じだった。


――これでも混信の蹴りを3連撃与えたんだけど?! 普通の人間ならこれでノックダウンよ?! なんでアンタ無傷なの?! 私の命がけ返してよ!


 しかも逆に鹿を怒らせてしまったようで、先ほどよりも強い殺気をまき散らしながら、鋭い角をブンブン振り回してきたので私はまた距離を取った。


――引くわ~。


 流石に4足歩行のものを対象に組手を行ったことも無かったのでこいつを倒せるプランが全く思い浮かばない。


――スマコ、何とかならない?


《主、何を先ほどから遊んでらっしゃるのですか?》


――え?! ひ、ひどくない?! これでもめっちゃ真剣なんですけど?! ていうかこっちは命がけよ?!


《お気に触ってしまったのなら謝ります。》


――いやいや、そんなのいーから! それより何とかなんない?


《主の内なる力を開放しましょう。》


――いや、さっきからやってんじゃん? 忍者とスパイの力のことじゃないの?


《違います。正確にはそれもですが、主には内なる2つの力が存在しております。》


――そんなものが私にあるの?! どうやってその力使うの?!


《まず力の根源を感じ取る為に、身体の中にある力を主のイメージで具現化しましょう。》


――ごめん、ちょっと何言ってるのかわからないんだけど……。それムズくない? どんなものをイメージしたらいいの?


《それはもうわかってらっしゃるのでは? 昔、主はこの力を一度使用していますので。》


――いやいやいや、全然わかんないんだけど? そもそもそんな力を持ってること自体初めて知ったけど?!


 唐突にそんなことを言われた私は動きが少し鈍くなってしまっていた。鹿が放った火の玉が地面にあたって爆発し、その勢いで地面にゴロゴロと転がりとっても恥ずかしい格好で止まった。


――熱いわこのバカ!


 ムキィ~っと威嚇してみたら、鹿はその倍の勢いで威嚇してきた。


――ひぃ~?! 私なんかした? なんで私がこんな目に……。


《あなたの守りたいという気持ちはその程度ですか? ヘタレ様を助けるのでしょう?》


 スマコのその言葉で我に返った。

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