第55話 光の戦士
突然のことに困惑する私とマヌケ。先ほどまで話をしていた機械人♀は心臓を一突きにされて息絶えてしまった。
その機械人♀の胸に刺さっているのは黄金に輝く光の剣。
やがて、それは光の塵となって消えていく。
その光の剣で機械人♀を殺した者と思われる人物は、迷宮の通路側からカツン、カツンと足音を立ててやってきた。その人物は着物のような黄金装束に身を包み、腰には身の丈よりも長い剣を携えている。
「ヘタ……レ?」
「ヘタレなの?!」
そう、その人物はヘタレだった。
いつもとは明らかに違った雰囲気が出ているヘタレは私に近づいた。
「ヘタレ!」
私は珍しく少し大きめの声を出してヘタレに抱き付いた。
「アンブ、久しぶりだね。」
ヘタレは優しくそう言うと私の背中に左手を回し、突然右手で鳩尾を打ち抜いた。神成モードを解除した状態でゼロ距離からの打ち込みに加え、左手で背中をしっかり抑えられていたことで衝撃が逃げことなく私の身体の中に直接ダメージを与えた。
「ガハッ……?!」
それにより胃腸やその他の臓器が圧迫されて、血液を混ぜていろんな物が飛び出した。吐血が収まることなく、逆流を続ける状態に私はたまらず倒れ込む。
「全くビックリしたよぉ~あんな堂々と服屋さんに写真飾ってるんだもん。さすがに目を疑ったよぉ。あははは。」
「アンブ?! そんな、ヘタレ?! あなた操られているの?!」
「ん? 違うよぉ~。私は正真正銘のヘタレだよ。」
ヘタレは優しい笑顔でそう言いながら尚も私を足で仰向けに転がし、同じ鳩尾を踏みつける。
「うぅ“ッ! あぁ“っ……、ガハッ。」
「ヘタレ待って! アンブが死んじゃうよ! 一体どうしたっていうの?!」
「だから今から殺すんじゃん。本当いつもいつも目障りでしかなかったんだよぉこの子はさぁ~。」
――え?!
「そんな……あんなに仲良かったのに! 本当にアンブはヘタレの事が大好きなのに!」
「知ってるよぉ? だってこの子、私がいないとな~んも出来ないんだもん。少し優しくしてあげただけで、何か仲良くなった気でいるからうざったいな~なんて思ってたのよ。」
――え? う、うそだよね?
「まぁ~私が構ってあげてたら~みんなからの私の評価も上がるから、仲良いフリはしてあげてたんだよぉ~。本当勘違いもいいところなのにねぇ~。あははは。」
――そ……んな……。ヤバい……なんも考えらんない……。
《おいコラしっかりしろ主! 死んじまうぞ! マヌケ様! 主を助けてくれ!》
「ヘタレ、本当に冗談はやめてよね? いくらヘタレでも本当に怒るよ?」
マヌケは神機モードを発動し、拳銃を向ける。
――や、やめて、喧嘩しないでよ……。
「ねぇ、本当にヘタレは操られてないの?」
「だから違うって言ってるんだよぉ。しいて言うならこっちが本心かな。仲良くするフリもいい加減しんどかったからねぇ。なんなら、地球での私とアンブしか知らないエピソードでも話そうか? もっとアンブが追い込まれるだけだけど。あははは。」
「それ以上アンブを傷つけるなら、流石にもう許さないよ!」
「あれぇ~? なんでマヌケが怒るのぉ? 私とアンブの問題でしょ?」
「アタシは2人が大好きになった。アンブがヘタレを助けたいっていうから、アタシはそれを全力で守ってあげたかった。2人の友情を守ってあげたかったのに!」
*****
アタシはヘタレに向かって拳銃から火炎魔法「フレイムカノン」を放った。ヘタレは背中に奇麗な羽根を出現させ、それを空中に飛んで回避した。
「危ないんだよぉ。怪我したらどうしてくれんの?」
「アンブを殺そうとしておいて、よくそんなこと言えるね!」
アタシは尚もフレイムカノンを連続で放った。
「光月流、光弾派」
ヘタレは右掌をアタシに向けて、そこから光のエネルギー弾を放った。それがフレイムカノンを打ち消し、尚もアタシに向かって襲いかかる。瞬時に翼を羽ばたかせて空中へ逃げたアタシはそれを回避する。
「大体さぁ~普通に考えて、たかが友達の為に命懸ける? おかしいでしょ?」
「……。」
「あなたが一番よぉ~みたいなアピールされてもさぁ~、私は普通に男にモテたいし~チヤホヤされたいし~。あの子がいたんじゃ顔が怖くてみんな寄ってこないのよねぇ。ホント迷惑なんだよぉ。」
「もう……やめて。これ以上アンブを傷つけないで。」
《おいコラ主! さっさと起き上がれってんだ! あぁもう! 頼むから起き上がってくれよぉ。 おい! クモ、今すぐこっちに来て主を守れ!》
「え?! よ、よくわからないけど、了解です!」
スマコちゃんが一生懸命アンブに声をかけているけど、全くの無反応だ。コンちゃんとデスくんとインコくんは気が付いた機械人♂を抑えているから手が離せない。それどころかアンブに目がいって、不意打ちをくらっている。
だからクモちゃんを呼んでくれた。
「光月流、光一閃」
ヘタレは自身の周りに小さな光の刃を無数に出現させる。右手で人差し指と親指を立て、笑顔で『バンッ』と言うと同時にその無数の光の刃がアタシに襲い掛かる。その光の刃は自分で意識を持っているかのようにバラバラで襲い掛かる。
「エアードショット」
アタシは魔動力を風属性の弾丸に変換し、拳銃で素早く撃ち出す。つまりは空砲なんだけどその威力は強くて早い。なので連射や早打ちが可能だ。その風の弾丸は四方八方から無数に向かってくる光の刃を次々に撃ち落としていく。
「銃撃戦ならアタシに勝てないよ。」
「あらそう? なら、これならどうかなぁ。光月流、光牡丹」
アタシの周りを囲うように光の玉が無数に現れる。
「だからアタシにこの手は通用しないってば!」
アタシはそれに向かってエアードショットを放つ。すると、その光の玉は爆発を起こしてそれに連鎖するように次々と光の玉が爆発していく。マズイと思った時にはもうアタシを巻き込んで大きな爆発へと変わっていた。
その爆発で通路の天井が抜け落ち、土砂がなだれ込んできた。
アタシは何とか翼で全身を覆い、爆発から身を守っていた。纏っていた翼を開いた時には、土砂の中にアンブが巻き込まれそうになっている瞬間だった。
アタシはすぐに救出へ向かうが、それよりも先に駆け付けたクモちゃんが蜘蛛糸でアンブを手繰り寄せ、救出した。
「あ、主様?! どうしたの?! ねぇ、大丈夫なの?!」
涙を流したまま絶望に満ちた顔をしているアンブに向かってクモちゃんが必死に声をかけていた。崩れた土砂により、アタシ達がいる迷宮側とヘタレがいる地下側で道が分かれてしまった。
それとほぼ同時に機械人♂を3人が完全に抑え込んだ。
アタシはそっとアンブを抱き寄せ、地下側にいる姿が見えないヘタレに目を運んだがそれから襲ってくる気配も、人の気配らしきものもそこにはもう無かった。
「一度、ここから出よう。クモちゃん、あの機械人♂を身動き出来ないようにしてくれる? それとさっき捕まえた3人を連れてきて。この人たちは国王に突き出そう。」
クモは頷くと、機械人を身動き出来ないように何重にも蜘蛛糸でグルグルに巻きにした後、捕まえていた3人を連れて来た。




