第52話 闇に紛れて-1
もうすっかり日も暮れていた。その間に皆でご飯を食べ、お風呂に入り、準備を整えた。そして、作戦を開始することにした。
まず私とコンとクモで地下に転移し、カプセルや薬剤を作っているところを捜索する。基本的には隠密行動が得意な私とクモで捜索するが、薬剤などに関してはコンもいた方がいいという判断だ。
そして、残りの皆で機械人の捜索にあたる。マヌケはレーダーを用いて王都を中心にその周辺を飛び回りながら捜索する。そうすることで、王都もその周辺も両方を捜索出来るし、何かあってもすぐに駆け付けることが出来るからだ。
デスとインコは暗闇でも目が見えるので、港町を含めた国の外周を広範囲で空から飛び回り、不審者などを見つける。夜中の森の中を出歩いているだけでも不審者の可能性が高いからだ。
そしてポチは見つからないように王都中を地上から走り回って監視する。これは王都の護衛も兼ねて、嗅覚と俊足を生かせるポチがいた方がいいと判断した。
人さらいというものは必ず闇に紛れて行われるはず。ここを抑えることが出来たら、一番楽に事を運べるんだけど……。
――まぁ、臨機応変に対応しよう!
「ということで行くよ。」
クモ「きたぁ~! いつもの……。」
ポチ「さすがにもう慣れ……。」
デス「ワレが一番では……。」
インコ「慣れってこぇ~……。」
コン「何気に皆うれし……。」
私はいつも通りポイポイと皆を異空間へ放り投げ、マヌケと手を繋いで王都のインチキの城の屋上へ転移した。
――ここでいったん離れ離れかぁ~。私的にはすっごい寂しい……。そんな私の雰囲気を悟ってか、ギュッと抱きしめてくれた。
「また、後でね! 何かあったらすぐ連絡してね? あと、危ないことは絶対しちゃだめだからね! それと……。」
《早く行けよ! お前らずっとイチャイチャしてる気か! バカやろうが。》
あはは~と笑いながらマヌケは神機モードを発動し、奇麗な翼を出現させる。私は皆を異空間から出して、行動を開始する。
マヌケとデスとインコは空を飛び、一緒に王都の外へ飛んで行った。
そして、ポチに王都の地上を任せて私とクモとコンは地下へ転移する。
――それにしても、スマコもあんな言い方しなくてもいいじゃんよ。私だって凄く寂しんだけど。
《うるせぇよバカ。いっつもイチャイチャイチャイチャしやがって……。》
――なんでスマコが怒るのよ。
そんな会話をしながらも地下を進む。最初にアイレンズを起動し、あの機械人に取り付けた発信機の位置を確認するとこの地下にはまだ来ていないようだった。しかし、信号があるその位置が何処なのかまでは分からなかった。
「忍法、闇分身の術」
そして私は闇分身体を4体作り出した。
前は10分くらいしか持たなかったけど、今は20分弱くらいまでは分身体を維持できるようになった。この前の戦いで、フルにこの力を使っていたら身体が慣れて時間を延ばすことが出来るようになったようだ。
戦闘したり魔法《忍術》を使用したりすればその分時間は短くなるようだけどね。でも今は捜索だからそれも無いだろう。
とりあえず時間制限があるのは事実なので、早速捜索を開始する。クモと分身体4体はそれぞれ単独で捜索し、本体の私とコンは一緒に行動する。コンは隠密行動にはあまり慣れていないのと、もし機械人がいたら危険と思ったからだ。
私の闇分身は時間制限があるので、とにかくあちこちを走らせている。クモは小さくなればほぼ見つかることも無いので、人や機械人が良そうな部屋などを回っている。私とコンは空間支配で重力を操作し、天井を歩いて捜索している。
すると、私の闇分身2号がある部屋を見つけた。試験管や分析機器と思われるそれらがいっぱいに並んでいる部屋だ。もしかしたら薬剤を作っている場所かもしれない。
私とコンはその闇分身2号が見つけた場所に向かって移動する。流石に分身体のいる位置へ転移することは出来なかったようだ。ちょっと期待していたんだけね……。でも位置は分かっているので、そこへ隠密で動ける最速のスピードで向かう。
思念「主様。私がいては足手まといです。異空間へ入りましょうか?」
思念「嫌。」
コンが心配しているが、私は1人になりたくないだけだ。ただ、それだけ。
なんでかって? 寂しいっていうのが一番なのと、実はこの暗闇が結構怖かったりしているだ。こんなこと言うとスパイ忍者失格なんだけどね。
するとコンは何故か嬉しそうに後を追って来た。やがて、問題の部屋に到着した。直ぐにコンはその辺りの試験管や資料などに目を通していく。日本語なので私でも読めるのだけれど、専門用語のオンパレードで全く理解できなかったのだ。
やはりコンは理解が出来ているようで、フムフムと何やら頷いている。コンと一緒に来て正解だったよ。コンが調べている間私は暇なので、その辺りを散策する。
見た目的には気色の悪い物がずらっと並んでいる。培養液と思われるものが入った瓶の中に、人の目玉らしきものや何かの臓器と思われるものなどが浮いている。あまりに悍ましいのでコンの元に戻ろうとしたその時、あちこちで走り回っていた私の闇分身体が消滅した。
どうやら時間切れみたいだ。でも結構な範囲の捜索を行うことは出来たようだ。
アイレンズでマッピングしてみて分かったけど、この地下も思ったより広い。基本は通路が長いのが特徴だけど、部屋らしきものが何箇所か存在している。その部屋の中には少ないけど、人の気配も感じることが出来ていた。
流石に分身体でそこに入るにはリスクが大きかったので、スルーしていた。しかし人がいるということは何かをやっているはずなのでそこを今クモが調べている。
するとクモから思念で連絡が入る。
思念「はいは~い! こちらクモだよ! 主様どうぞ! ……聞こえてますか? どうぞ? あれ? 聞こえないのかなぁ~。距離が遠いのかなぁ? それともいつもの無視? 泣いちゃうよ? クモちゃん泣いちゃうよ? いいの? ねぇ~ねぇ~主様~。」
思念「うるさい。」
思念「あっ! 返事した! あのね、あのね! 迷宮に落ちてたのと同じカプセル見つけたよ! 偉い? 偉いよね! 後で褒めて下さいね?」
私はアイレンズ上で映像を確認すると、クモが見ている視界がそのままアイレンズに投影された。そこには大きなガラス張りの中で、1つ1つ機械で作られているカプセルの様子と、その外でデバイスのような物を操作しながら機械を動かしている人間が3人が見えた。
《おいクモ。そいつらは何か話しているか?》
クモ思念「いや~今のところ主様みたいに無口ですねぇ、全く喋ってません! どうぞ!」
――こいつ調子乗りやがって。後で絞めてやろう……。




