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第51話 帰還

 額に少し生暖かい感触を感じて私は目を開けた。超至近距離でマヌケの顔があった。どうやらおでこ同士をくっ付けて熱を比べているようだった。ちょっとでも動けば唇が接触してしまいそうなほどに近い。


「う~ん、熱は下がってるみたいだなぁ~。」


 ボソッとそう呟いたマヌケは目を開いて、私と目があった。


「ア、アンブ?! 起きてたの?! 具合はどう? 一日中寝てたから心配しちゃったよぉ。もう夕方だよ。」


――ち、近いからとりあえず離れてほしい。恥ずかしいじゃんかぁ。ってかもう夕方?! あれから私はずっと寝ていたの?!


 そんなことを考えていたら、突然グゥ~とお腹から大きな音が聞こえた。


「ふふふ。お腹で返事するなんてアンブってばやるねぇ! 後で昨日異空間に入れておいた料理を出してくれる? あとすぐに暖かい物も作るから、それまで寝てて?」


 そう言うと、タタタッとマヌケが階段を下りていく。すると下から、「きゃああ?!」とマヌケの悲鳴が聞こえた。ビックリした私はすぐに下へ向かった。


 そこには人型になっているあの5人が床に雑魚寝していた。

 その寝ている様子を見ると少しホッとしてしまう。


 私は足で踏ん付けて起こしてみるが、がっつり熟睡しており起きそうにない。


――まぁいいか、もう少し寝かせてやろう。


 それから私達はマヌケが作ってくれたご飯を一緒にハムハムしていた。

 すると先にデスが目を覚ました。


「はっ?! 主様、マヌケ様、只今戻りましてございます。」


「お帰りデスくん。迷宮はどうだった?!」


「なかなかひどい有様でした……迷宮内の魔物は全体の30%が連れ出されており、生態系も崩れてしまっていました。我々しか知らなかった地上への出口も何か所か開けられていたので、おそらくそこから連れ出されたのだと思います。」


 デスが話をしていると、他の皆も起き出した。


――しかし、やっぱりあれは迷宮の魔物だったんだね。機械人達はどうやって迷宮の魔物を操っていたんだろ……。


《おいこら、てめぇら。魔物以外に異常は無かったか?》


「そういえば、迷宮内のあちこちにこのような物が落ちていました。怪しかったので全て回収してきましたが。」


 そう言ってコンはカプセルのような機械を差し出した。


「あの魔物達の様子からして、ウチの見立てでは何か薬剤などによる幻覚作用を利用したものと思っています。この機械と何か関係がありそうな気がするのですが……。」


《マヌケ様、これ分解できないかい?》


 マヌケはスマコの指示通りにいろいろな道具を具現化してカプセルを分解し始めた。電動ドライバー(擬き)や電動ノコギリ(擬き)で火花を散らしながらカプセルを分解しているその様子だけ見ると完全に工場で作業を行っている人みたいだ。


――学校の近くにこんな小さな町工場があったっけ……。


 やがてカプセルの分解が終わると、スマコが口を開いた。


《やっぱりこれは薬剤を噴射するためのカプセルだな。しかも時限式で起動するようになってる。》


「つまり、この中に魔物を操る薬剤を入れてバラ巻いておき、時間が来たら薬剤が噴射されてその場にいた魔物が幻覚作用により操られるということですね。」


「マジで?! それ超ヤバいじゃん! そんなのもっと迷宮のあちこちにばらまかれたら、もうアタシらじゃ対処できなくない?!」


《とんでもねぇもん作ってやがるなぁ。主どうするよ?》


――ふぇ?! そこ私に振るとこ?! スマコが言うから皆こっち見てんじゃん! 見んじゃないわよマジで!


 私はマヌケの後ろに隠れながら考える。


――とりあえず……そのカプセルの製造元を叩きたいね。そしたらもう魔物は操れないだろうし。


《だな。そうなるとやっぱりあの地下が怪しいよな。》


――だよねぇ。またあっこ行かなきゃいけないのかぁ~。憂鬱だなぁ~。


《今度はこいつらもいるんだ。なんとかなるだろうよ。》


「スマコ様の声しか聞こえないのに、何やら話が進んでるんだが……。」


「主様の声もき-き-た-い-よ-! アーアー! もしも~し! ブホォッ?!」


 私の耳元で叫ぶやかましいクモにアッパーブローをお見舞いした。

 ピクピクと、くの字で痙攣しているクモは置いといて話を進める。


「とりあえず、インチキさんのとこに行く? 機械人が人をさらうようなことを言っていたのが気になるから、一応厳戒態勢を敷いてもらった方がいいと思うし……。」


《いや、逆にこちらだけで動いた方がいいだろ。あっちはこちらの存在を知ってるんだぞ? 変に厳戒態勢を敷けば、こちらがいろいろ探っているのがバレるだろ?》


「で、でも……そうであっても、関係ない人を見殺しにしていい理由にはならないよ!」


 まぁ両方の言いたいこともわかる。マヌケは関係ない人が死ぬようなことは絶対に見過ごせない人だ。対してセツは、こちらの動きが相手にバレてもっと危険が及ぶことを気にしている。


 マヌケの言うことを優先すれば、その場の人は助かるかもしれないけど、逆にもっとたくさんの人が死ぬようなことにもなりかねない。

 しかし、スマコの言うことを優先して調べて行けば、カプセルの元を特定して破壊し、魔物を操れなくすれば被害は各段に減ることになる。でもそれまでは事を荒立てることが出来ないので、目先の人は救うことが出来ない。


 両方正しくもあるし、間違いでもあるんだ。

 なら、正しい部分だけ欲張って取っちゃおう作戦だ。


 連れ去られるとしても、すぐにどうこうされたりはしないと思う。少なくとも必ずあの地下までは運ぶ必要があるからだ。それまでは手出ししない可能性の方が高い。その前にカプセルの製造箇所を特定して破壊し、作ってる奴らを確保。隙を付いて機械人を無力化。そして、連れ去られ者達を開放。


 問題は機械人との戦闘だけど、あの2人だけなら隙を付いてのこの人数なら負けることもないはず。後はあの地下にいる人間がどのくらいの人数いるかだけど、そこはクモがいれば大丈夫。


――てな感じでどうよスマコ?


《……人を連れ去る時に、残虐なやり方をするかもしれんぞ? それにあの地下だけでカプセルを作っている確証もないんだぞ? 確実性がないプランは、1つでもそれが崩れたら身を亡ぼすぞ?》


――だから私とマヌケがいるんでしょ? ふふふ、ちょっとは信用しなさいよ。長い付き合いでしょ?


《……ったく。お前はとんだ主だよ。》


――ふふふ、まぁね。


 こうして私達の意見はまとまった。

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