第48話 これでも一応は女子高生
服が乱れてほぼ全裸の状態でニヤけたまま眠っているマヌケを起こす。私の顔を見た瞬間、顔を真っ赤にして服を整える。
「あ、あはは。お、おはようアンブ! 今日も……その、いい天気だね!」
明らかに挙動不審なマヌケを無視して、身支度を整える。そして、昨日王都で買った可愛い服に変身する。
「うん! やっぱりその服はアンブによく似合ってるよ!」
――あははは。まぁお世辞でも喜んでおこうじゃないかね。一応これでも麗しき女子高生の端くれだ。女子高生は可愛い服が好きなのだ!
同じく、昨日と同じ服に袖を通すマヌケ。
――うん、この子は服の可愛さもプラスされてとても可愛いね。羨ましいぞこの野郎!
私達は朝ご飯を食べた後、王都へ向かう準備をする。皆が戻って来た時の為に、マヌケ手作りのデバイスとメモ書きを添えてテーブルの上に置いた。
その後、昨日服を買ったあのショッピングビルの屋上へ転移した。
何故、城の屋上や研究施設の屋上へ直接転移しないのかというと、調査するべき対象の前に、まずはその周りから先に調べるのがスパイとしての基本だからだ。要するに、研究施設だけではなくてその周りの街並みも調査対象にすることで、いろいろな見えない部分の変化にも気が付くことが出来るらしい。
これは修行していた時にしっかりとおばあちゃんに叩き込まれていた。
私達はそのまま地上へ降り立ち、朝の王都の街並みを歩いて進む。
そこで、少しだけ違和感を感じた。それは、マヌケや私と同じような格好をしている人達が何人かいたのだ。その中には全く同じコーディネートの人もいた。
――まぁ同じ格好をしてくれていた方が紛れやすくていいんだけど……。
私達は少し不振に思いながらも研究施設を目指した。
今日は残り全ての調査を行うつもりだ。ということで、まだ侵入していない研究施設の排気ダクト内に侵入した。
ここは、生活に必要な魔道具が研究されているようだった。魔動力を充填した電池みたいな物をセットしスイッチを押すと火を出して料理をすることが出来る、どっからどう見てもカセットコンロや、料理を温める電子レンジや、電気ポットらしきものなど、生活に必要なものが溢れかえっている。
今の主流は魔動力を電池みたいなものに充填して、それを魔道具にセットして使用するのが普通らしい。こちらは電気がないからしょうがないのだろう。
地球で言うところの、生活家電の全てが電池式になったみたいなもんだね。
その様々な道具が全ての階で実験や研究などが行われていた。因みに、この建物も41階~50階はこの研究者達の宿泊施設になっているようだった。
次に隣の建物に来てみたけど、ここも先ほどと同じ生活に必要な魔道具の研究が行われていた。先ほどの施設と違って、こちらは大型の物が多かった。例えば冷蔵庫や洗濯機、冷蔵馬車用の荷台など様々な大型家電があった。
こちらも同じように、41階~50階は宿泊施設となっており、特に不審な点はないようだった。
そして最後の施設が、新しい分野の開拓を行う為の施設だった。ここはインチキの言う通り、研究室内には誰もおらず休止中のようだった。41階~50階は同じように宿泊施設になっているようだった。
そこまで上がってみると、人の気配がした。
悪いとは思ったが、少しだけその夫婦らしき人達の会話を聞いてしまった。どうやら今この施設は動いていないようなので、皆は他の施設へ応援に行って働いているようだった。その夫婦はここに住んでいるが、夫が風邪を引いていたようで昼休みに様子を見に来ていたようだった。そこまで聞くと私達は地上に向かって移動し、エレベーターの前に来た。
すると、この施設でもエレベーターが地下へ続いているのが分かった。
中に入って確認したいところなんだけど、エレベーター内に監視カメラが無いとも限らないから無闇に中に入ることは出来ない。
こんな時クモでもいれば、この前やったみたいに身体を小さくしてエレベーターに乗り込み、その視覚をスマホに投影していろいろ調べることが出来るのだけれど……。
――しょうがない。
ここはエレベーターを使わずに直接下に降りる方がいいと判断した。それには誰かに、エレベーターを使用してもらう必要がある。何故なら、1階にエレベーターがあると当然下に進むことは出来ない。更に、このエレベーターは使わない時は必ず1階で停止するように設定されているのだ。不用意にエレベーターを呼べば、それが記録されており更にそこに誰も乗らなかったら監視人が不振に思う可能性があるからだ。
これも全てスパイの知識だが、多分間違いないと思う。
なので、一度私達は研究施設からショッピングモールの屋上へ転移した。少なくとも、さっきの女性は仕事を終えるとあの施設へ戻るはずだし、48階に住んでいる人なので5階くらいの扉から侵入して下に降りようと考えた。
マヌケがインチキにスマホで就業時間を聞いているので、その内返事もその内来るだろう。私達はお腹も空いたので、このモールの中のレストランへと向かった。
――やっぱりおかしい。いくら何でも同じ服の人が多い気がするよ?
地球ではここまで同じ服の人に出会うことも無かったと思う。もちろんたまにはいたけれど、お互いちょっと気まずかったりするものだ。
とりあえずレストランでランチをハムハムしていたんだけれど、なんかチラチラと視線を感じるので、ゆっくり落ち着いて食べられない。
私達はそそくさとレストランを後にして、服を購入したお店に向かってみた。
すると、何という事でしょう……。
――何やら人通りが多い気がするのは私だけでしょうか。
私とマヌケが着ているコーディネートされた服が全面に押し出され、そのカゴに群がっている女の子達がいるのは気のせいでしょうか。その横にデカデカと私とマヌケの写真が飾られているのは、気のせいでしょうか。
――引くわ~。もう一回言っておこう、引くわ~。
――なんだこの状態……。
唖然としていると1人の女の子が私達に気が付いてしまった。
「あれ?! ここに写っている女の子じゃない?!」
「えぇ?! マジで?!」
「ホントだ! 超かわいい!」
「アタシやっぱこのセーターほしくなっちゃったぁ!」
「私も~」
「私も~!」
「キャッキャッ! ◎△$♪×¥●&%#?!……。」
――なんじゃこりゃ~!
この辺りで私の意識は途切れた。




