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第46話 勇者候補

 インチキの話の中では、地下に関することが何も出てこなかった。私達が侵入した時、確かに私はエレベーターが下に続いていたことを知っている。


 私のスキル感知は、建物内や空気の流れが無い場所などはどうしても能力が落ちてしまう。それは空気の流れや音の反響、熱の伝導や匂いなどの情報を総合して処理しているからだ。なので、あの地下に通じるエレベーターの先は感知することが出来ない。


 研究施設に関する簡単な説明を聞いた私達は、その研究施設へ侵入することを伝える。黙っていても良かったけど、インチキの反応を見る為だった。


「それは構わんが、何も出てこないと思うぞ? 俺も時々視察には行っているし、数少ない俺の信頼する男の3人に管理を任せているからなぁ。」


「調べて何も無かったらそれでいい事です。もし何かあれば、その時はお知らせします。」


「分かった。それと、近々北の国(テンガラス)で5つの国王が集まる国王会議が開催される予定だ。君達の腕を見込んでのお願いなのだが、影から護衛をしてはくれないだろうか? この立場上、敵が多くてな……。」


《ここは引き受けろ! それぞれの国の情勢を知るいい機会だ。しかもテンガラスを調査出来るまたとない機会だ。》


 思念でスマコがそう言うと、すかさずマヌケが続けた。


「わかりました。その護衛の話、引き受けましょう。」


「本当かい?! 良かった。君達なら安心できる。」


「どうしてそこまでアタシ達を信頼しているのですか?」


「だって君たちは人の命を一番に考えてくれただろ? それ以外に理由がいるかい? 一応これでも国王だからね。人を見る目はあるつもりだ。」


 そう言って笑うインチキ。


――なんか、生意気。信頼されていた方がもちろんこちらは動きやすくていいんだけど、自分の命を守る役目に会ったばかりの私達を選ぶなんて……。ここまで絶対的な信頼を置かれてもなんか困る。


「また日程については改めて連絡させてもらうよ。」


「わかりました。それでは私達はこれで。」


 私達は国王室から城の屋上へ転移した。


「インチキ様は地下については何も言わなかったねぇ。知らないのか、もしくは隠したいだけなのか……。とりあえず調べてみたらわかることだね!」


「うん。」


 早速私達は昨日忍び込んだ、武器の研究施設へ再度忍び込む。今日は昼間なので、建物の排気ダクト内から侵入した。


 物音を立てないように気を付けながらダクト内を進んでいく。ダクトの中は空気が通っているので、スキル感知を発動しアイレンズでどんどんマッピングしていく。中では白衣を着た研究者達が、様々な実験を行っている最中だった。


 魔動力を充填した、拳銃、バズーカなどの大砲、剣、防具などたくんの種類が作られているが、正直なところ全く使えない。おそらく迷宮の上層にいる魔物でも通用し無さそうな武器ばかりだ。魔物ではなく、人間相手にはかなり有効かもしれないけど。


 まぁそれもあって、王都周辺の警備員や城の兵士などが所持しているのだろう。


 この研究施設は50階建てだが、1階から10階が拳銃関係、11階~20階が大砲関係、21階~30階が剣関係、31階~40階が防具関係となっているようだ。そして、41階~50階が宿泊施設となっていた。


 ここまで調べたところで、次の施設へ移動する。地下の有無は、ひとまず後回しだ。次の施設も全く同じような作りの建物だった為、侵入は結構楽に行うことが出来た。この施設も武器関連の研究施設だった。


 先ほどの研究施設と違うところは、魔動力を充填した武器では無くて勇者候補が使うギアメタルの開発が行われているところだ。


 マヌケと出会った当時に持っていた杖のギアメタルがずらっと並んでいるのを見たら、マヌケは苦笑いしていた。微妙に形も違うので、いろいろと実験されているのだろう。


――でも、どうやって実験してるの?


 実験するなら勇者候補の力が必要になると思うんだけど。そういう疑問が浮かんできた。ふと、マヌケに顔を向けるととても悲しそうな顔をしていた。それから思念でマヌケは話してくれた。


 勇者候補は各国に1人しか生まれないものらしい。という事は、この星にはマヌケの他に4名の勇者候補がいるという事になる。


 そして、今の勇者候補が命を落とすとまた次の勇者候補が生まれるという不思議なサイクルになっているようだ。


 迷宮への入り口はそれぞれの国に1つずつ存在しているので、そこから迷宮へ入り魔物を滅ぼす為に一生を捧げる。これが成人した勇者候補としての使命らしい。そして、見事に迷宮内の魔物を全て滅ぼすことが出来たら、勇者として扱われる。


 これは人間が生きていく上で魔物の排除は必ず必要であり、平和をもたらすことになるという教えに従うためのもらしいが、そんな危険なことをたったの5人に押し付けて、他の人間たちはのうのうと生きている。


 なんとも身勝手で、とても人間らしいクソみたいな教えだなって思う。

同じ人間として恥ずかしいと思わないのだろうか。私は違う星の人間かもしれないけど、それでも胸糞悪い。


 この中央の国ルドラルガではマヌケが勇者候補として生まれたが、彼女は生まれてすぐに研究施設に入れられ、様々な検査や実験を繰り返していたようだ。


 この星で唯一、魔物に対抗できる勇者候補の存在はとても貴重であり、有効な実験材料であることは間違いなかった。更に、マヌケが迷宮内の魔物を殲滅すれば、このルドラルガの功績へと変わる為、研究者達も必死に研究していたようだ。


 そして、その当時のマヌケに一番合った杖のギアメタルが作られた。


 それからわずか5歳の時に当時、港町の住民だった今の町長に引き取られが、別の家に1人で住まわされていたのだそうだ。


 誰も好き好んで勇者候補を引き取ろうとする者はいないところ、自分が引き取ってやるから、俺を町長にしろと国王に言ったらしい。


 自分が町長になる口実がほしいが為に……。


 だけど、一応引き取ってもらったという恩があるから、あの町長には何も言わないんだね。


 その後、この施設はマヌケから得た研究結果を更に向上されるために日々研究が行われている。それが、次に生まれる勇者候補の為にもなり、その歴史が続いていくことになる。


 マヌケもここでの思い出は、ただただ痛い思いを我慢していたという記憶しかないらしい。


――それを聞いていたらムカムカが止まらない。


 今すぐこの研究施設をぶち壊してやりたいとすら思えてくる。でもマヌケはそんな私をギュッと抱きしめ、眩しい笑顔を向けて来る。


「今は、もういいの。それよりも、先に進もう?」


 それから私達は施設内をいろいろ調べたけど、何も不審な点は見つからなかった。


 先ほどの施設と同じように1階~20階がギアメタル、21階~40階が大型防御システム、41階~50階が宿泊施設となっていた。


 しかし、この施設に地下は存在しないようだった。それを確認すると、私達は研究施設を後にした。

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