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第4話 転移

 私は目を覚ました。


――あのクズ神め、今度あったらマジで1回ぶん殴る。クレープの恨みは怖いんだ。


 私は仰向けに寝ていた。特に身体に変化は感じられなかった。服装はここに来る前の格好と全く同じで学校の制服のままだ。一応変身出来るか試してみたら何も問題無かった。後、アイレンズとスマコ、ヘアピンにイヤホンも問題なく起動した。一応ポケットに入れていた手持ち鏡で顔も確認したけど、いつもの私の顔だった。


――しかし身体も本当にそのままじゃん! 少しくらいはいろいろと大きくしてくれても良かったのに。


 自身の身体を触りながら、ため息を付いて体を起こす。周りを確認してみるとここは洞窟のような場所だった。


――本当にこんなところにヘタレがいるのだろうか。とりあえずヘタレに会えるまで歩くしかなさそうだね。こんなことならヘタレに発信機渡しておけばよかったな。


 そう思いながらも歩き出す。すると身体がめちゃめちゃ軽いことに気が付いた。どうやら身体を改造されたのは本当のようだ。今までとは違って身体に力が入る感覚がある。


――ヤバい。普通に人と同じように動けるっていうのはマジで嬉しいわ。そういえば思い出した! クズ神がスマコにいろいろ聞けって言ってたっけ! どうやって? 呼べばいいの? おーい、スマコー!


《はい、主様。》


――ふぉぇえ?! どっから声した?! 機械染みた女の人の声だったけど……。


 キョロキョロしてみたけど、誰もいない。思わず足を止めてしまった。


《主様。スマコです。》


――ひゃあッ! イヤホンからとかじゃなくて頭の中で直接声が聞こえるんだもん……びっくりしたよぉ。ていうかスマコ喋れるの?


《はい。クズ神様に改造されたことにより会話機能が追加されました。直接脳波に語りかけています。》


――普通にクズ神言うてるし、ウケる。それなら今までよりもやりやすくなるね! これからもよろしくね!


《はい、主様。》


――あのさ、クズ神が言ってたスキルって一体何なの?


《クズ神から授かった力はスキル感知、スキル空間収納という2つの力です。》


――それはどんな力があるの?


《スキル感知は、魔力・振動・風・熱・電磁・音・生命の気配・殺気などこれらの情報を全て感知します。スキル空間収納は、異空間を発生させそこで物の出し入れを行うことが出来ます。》


――うわぁ~何言ってるかよく分からないけど、メッチャ便利な力に聞こえる。……何か裏でも?


《はい。今の状態でスキル感知を発動すると情報量の多さに脳が処理できず、瞬く間に脳が破裂するでしょう。スキル空間支配も同様に魔力の制御を行う必要があり、自身だけで無理やり発動すると空間の歪みにより、瞬く間に爆発が起こります。》


――引くわ~。あのクズ神、頭おかしいんじゃないの? その力使ったら脳が破裂するか、空間爆発で死ぬってことよね?


《その為に七つ道具の一つである私が改造されたようです。私は主の身体と常時リンクしていますので、スキル感知の情報をそのままアイレンズへ表示できます。また、スキル空間収納も主の魔力を私が制御することが可能なようです。》


――なんと頼もしいのスマコちゃん! てか魔力なんてものが私にあんの?!


《それはクズ神からの特典のようです。しかしその特典のせいで、不本意な力まで宿してしまったようですが……。》


――なんだろ……それは聞かない方がよさそうだね……。


 とりあえず、とても信頼できる相棒が出来たようだ。安心した私はそのスキルの力を使ってみたくなった。


――スキル感知はどうやって使うの?!


《スキルの発動や力の発動にはある決まったポーズがスイッチになっているようです。そのポーズを取りながら、スキルの発動を念じればいいみたいです。》


――そのポーズって何?!


《それは、主のお父様がよくやってらっしゃる……あのポーズでございます。》


――うそ……だろ? あんな恥ずかしいポーズを私にやれと?


 そのポーズとは忍者が忍術を発動する時に取るあのポーズだ。両手の人差し指と中指を上に向け、左手を下に右手をその上に重ねて胸の前に持ってくる。一応お父さんの真似をしてやってみた。すると頭の中で「キーン」と聞こえた気がしたので、「スキル感知発動」と念じてみる。


 すると、ものすごい量の情報がアイレンズやイヤホンを通して一気に流れ込んできた。一瞬頭がクラッとしたが、それはすぐに治った。おそらくスマコがうまくやってくれたのだろう。

 

 慣れてくると、先ほどまでは気が付かなかった微かな風の流れや、様々な匂いを身体と嗅覚で感じる。またアイレンズには視界部分の温湿度以外に風速、熱量、生体反応、付近の全体マップなど様々な情報が追加で表示されていく。またイヤホンに集中すると、遠くの微かな音まで鮮明に聞き分けることが出来た。


――これは凄いなぁ…。私も一応人並み以上には気配とかを察知する動物的な感というものを鍛えていたつもりだったけど、そんな概念が一気に覆るほどの情報量を簡単に感知出来ている。


――この気配は生命反応?


《はい。近くに魔物がいます。》


――この星には魔物がいるの?! 見付かったら襲って来る? 危険? 怖い? ヤバい?


《今見つかるのは少々ヤバいですね。》


 ヤバいらしいです。私はさっそく生きていけるのか不安になるのでした。


 私はいつも以上に気配を消して岩陰に隠れ、魔物の気配に集中する。10m先くらいに鹿と呼ぶにはあまりにも体や角が大きく、目がカマキリみたいに飛び出している魔物がいた。


――なんでそんなことわかるかって? 私が聞きたいわ! 魔物の動きもその周りの風景も立体映像みたく鮮明にアイレンズで見えてるんだもん。これがスキル感知の力らしいね。


《感知でマッピングを作成し、アイレンズで表示させています。》


――便利だねぇ。しかし直視でこんな化け物見ていたら間違いなく失神してたね。


――スマコ、あの魔物は何?


《鹿の魔物です。》


――やっぱ鹿なのか…。あれ鹿って呼んだらダメなやつよ。あの飛び出た目が、テレビの映画で見たエイリアンみたいな目で怖い。


 あんな危険なものはやり過ごすに限る。どっか行くまで隠れていよう。


――あれ? なんか風の流れが変わったような……それに熱も上がっ…


《主、すぐに頭を下げて下さい。》


 ズドーン?!


 私が隠れていた岩の隣の岩が炎の塊で破壊されて、その破片が私の頭上を通り過ぎていった。


――ひぃぃ?! なに今の?!


《どうやらこちらの存在に気が付いたようです。》


――な、なんで?! 私気配消してるのに?!


《あの魔物は鼻が効きます。おそらく主の匂いを嗅ぎ取ったのでしょう。》


――私そんな臭いの?! ふぇ~ん!


《まだ正確にこちらの位置を把握していませんが、面倒なので処分しましょう。》


――いやいやいや! 無理っしょ?! どう考えても無理っしょ?!


《主の力を使えば、容易です。》


――な、なんですと?! どうやって?


《主には内なる力が存在しているではないですか。それを開放しましょう。》


――やっぱあれをやるのね……。


 私はスパイでもあるけど、同時に忍者でもあるのだ。忍者の動きをするのは何年もやっていなかったし修行も途中でやめていたので全く自信はないが、今はそんなことを言っていられる場合でもない。


 私は動きを忍者の動き方に切り替えた。重心を下に降ろし、物陰にかけれながら素早く移動する。動く事で自身の匂いを分散し、位置を掴みにくくしている。


 それに鹿は苛立ったのか、先ほどと同じように口から火の玉をあちこちに吐き出した。

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