第45話 普通の女の子になりたいの
私の手を引っ張りながらニコニコ笑顔で服を選んでいるマヌケ。
――こうしてみると本当に普通の女の子だよね。凶悪な起動要塞だけど……。
私の制服はこちらの服装と違い過ぎて結構目立ってしまうから、こちらの服を持っておいた方がいいとのことだった。まぁ意外とこの制服も動きやすくて気に入ってるんだけどね。本当は変化服だけど。ストレッチ素材っていうの? 結構伸びるし軽いのよ。下もスカートだけど、中に短パン履いてるから問題ないし。そもそも誰も見たいなんて思わないだろうけど。
でも目立つのは困るね。
これだと遠くからでも私ってバレるし。
まぁ、ついでに自分の服も買うって言っていたし、マヌケが楽しそうだからいいや。
「アンブ、これ着てみてよぉ!」
そう言ってお洒落な店員さんと大量の服を持ってくるマヌケ。
――おいおいおい、こいつ頭大丈夫か? いくら試着はタダっていってもそんなに着れないよぉ。しかも私は服を買う必要が無いんだって……。
とりあえず一番着てほしいってせがまれた服だけ試着することにした。お洒落な店員さんに試着室へ案内されて中に入る。
ニットのセーターとスカートみたいに見えるガウチョパンツ。
――やばい……地球でモデルが着ていたような可愛い服だ。これは私には似合わなさ過ぎるよマヌケ……。
私は試着室の中で変化服を解除してキューブにする。そして、ボタンを押してその可愛い服達をスキャンする。その後、その服達は異空間へ収納した。
変化服を起動するとスキャンした服が具現化された。その可愛い服を着た自分を鏡越しに眺め、ため息を付く。
カーテンを開けて、マヌケと店員さんとご対面。
「……。」
「……。」
――無反応かーい! 泣くぞこのやろう。
ポカーンと口を開けて動かない2人……。
「……て、店員さん。これそのまま下さい。」
「は、はい。承知しました。」
――か、買うの?! 似合わないんじゃなかったの?! てか買わなくて大丈夫だから……でもそれはいけないことだしねぇ……。
その後、マヌケもメチャメチャかわいい服を選んで試着する。この子は元が可愛いから何着ても似合うよね。お洒落な服を着て、奇麗な碧色の髪を靡かせているマヌケから目が離せない。
――可愛い……羨ましい。
その後、お会計を済ませようとレジに向かった。
「あの……お2人があまりにもその服がお似合いなので、もしよろしかったらそのコーディネートのモデルとして写真を撮影させて頂くことは出来ませんか? もし、撮影の許可を頂けるようでしたらこの服の代金は頂きませんので、如何でしょうか?」
思念「アンブはどう? 嫌?」
思念「私お金……ないし。」
思念「ふふ。それは心配ないって言ってるのに。でもここで目立つとまずいかな?」
《別に撮影くらいはいいだろ。お金は後々もっと必要になるかもしれねぇからな。》
――まぁ、スマコが問題ないと言うのなら大丈夫なんだろうね。多分私を撮りたいわけじゃなくて、目当てはマヌケだろうし。それに日本人の私としては、タダという言葉には非常に弱いのだ!
正直、この変化服を使えば服を買う必要は全くない。でもそれはいけないことなので、一応購入してからスキャンするようにしていたのだ。
「わかりました。撮影は大丈夫ですので、ありがたくご厚意に甘えさせて頂きます。」
「本当ですか?! こちらこそありがとうございます! わぁ~嬉しい! それでは写真を撮らせて頂きますね! こちらにどうぞ!」
ノリノリの店員さんに連れられ、フォトスタジオに入って写真を撮られた。意外だったのは、カメラマンさんに笑顔を要求されなかったことだ。私はこんな顔だから、必ずカメラを向けらえると笑顔を要求されるのだ。それが正直嫌で嫌でしょうがなかった。一応今回もその覚悟はしていたのだが、幸いにもその要求は無かった。これで服の代金がタダになったのでまぁ良しとしよう。
私達はその店を後にし、街並みを歩きながらインチキの城に向かう。その時、道行く人にすれ違いざまにチラチラと見られていた。私は普段から隠密行動をしているので大抵の人には気付かれにくいはずなんだけれど、マヌケがかなり目立ってしまっているので、自然と私にも目線が来ている。
――目立つのは嫌だな~マジで。
当の本人はキョトンとした顔で気が付いていないし。
そんなことを考えていたらインチキの城にもう少しで着くところだった。マヌケがスマホ片手にメッセージを送っているようだ。
しばらくすると、返信が来た。
「このデバイス凄く便利だね。この星でも売り出したらかなり普及しそうだよ。あっ、インチキさん今大丈夫だって! 行こうか!」
私はマヌケの手を取り、国王室へ転移する。
一応天井裏に降り立ち、誰もいないことを確認してからインチキの目の前に現れる。
「うわぁ?! 本当に急に現れるんだな君たちは。心臓に悪いから連絡も無しに来るのはやめておくれよ? それにしても今日はまた一段と……何でもない。要件を聞こうか?」
私を見ながら何やらゴモゴモ言い出すインチキ。
――似合ってないとか言いたいのか? こいつ……死んでしまえ。
「それではインチキさん、研究施設について少し教えて下さい。」
マヌケは唐突に質問を始めた。
「インチキ?! それは俺の名前かい? かっこいいなぁ! 気に入った。」
私が付けた混信のあだ名がお気に召したようで良かった。それからインチキは研究施設に関して説明をし始めた。
この王都の研究施設では、魔動力の研究が行われている。
建物としては5棟あるが、それぞれに普段の生活に生かすための研究施設が2棟、魔物に対抗する為の武具などを研究する施設で2棟、魔動力を生かした新しい分野への研究で1棟という割り振りになっている。
生活の分野では、人間が生活していく上で必要な物の開発や今ある物の改善などを行っている。例えば、地球でいうところの電気で動く家電みたいなものだ。こちらでは魔動力が電気の代わりになっており、それで動く家電が人間の生活を支えている。それを更によくするための研究を行っているのだ。
生活に関する分野は研究項目が多いので2棟あるらしい。
次に、魔物に対抗するための武器などを研究している施設については、普通の人間が魔物に対抗できるように武器などを開発することが目的の施設と、勇者候補の為の武具の研究施設がある。
普通の人間は魔動力を自身で発生することは出来ないので、代わりに魔動力を充填した武器を所持しておき、それで魔物に対抗しようとしている。
更にこの王都周辺に設置されているような防衛システムもここで作られている。
そして、もう1棟ではマヌケが持っていたような勇者候補の為のギアメタルなどを研究し、開発を行っているとのことだった。
最後に、魔動力を新しい分野で使用するための研究施設だが、今のところ新しい研究項目が決まっておらず、現在は休止中とのことだった。
しかし、実際はここからいろいろな新しい研究がスタートするようで、全ての研究の出発点となっている場所だった。
これが研究施設に関する簡単な説明だった。




