第44話 変身!
国王の城から外に出た私達は、さすがに疲れたので家に帰ることにした。ギャアギャアやかましいクモを異空間へ放り投げ、マヌケと手を繋ぎ港町の家の前に転移する。
その後、急いでお風呂に入り身体の汚れだけを落として、ゆっくり眠ることにした。国王からスマホに「今日はありがとう。」とメッセージが入っていたことはマヌケには内緒だね。
――あいつは私に好意を持ってるの? 今まで異性に好意を持たれたことが無いからよく分かんないんだよね。まぁ悪い気はしないけど、正直あいつに全く興味はない。
そんなことを考えながら私達はベッドで横になった。
「いろいろあり過ぎてちょっと疲れたねぇ。」
「うん。」
「手がかりは天空界……天上界と無関係じゃなさそうだよね?」
「うん。」
「だね。調べてみる必要はあるね! 早くヘタレに会いたいね。」
「うん。」
私達はお互いに抱き合ったまま眠りについた。
――おはよう。
私は窓からの朝日に照らされ目を覚ます。大きなアクビをしながら両手両足をピ-ンと伸ばし、背伸びをする。目を擦りながら少しづつ瞼を開くと、マヌケが至近距離で見ていた。
――うぉ?! マヌケさん?! いつから見てたの?!
「あはは。おはようアンブ。アンブは見ているだけで癒されるね。朝ご飯作るね。」
そう言って立ち上がるマヌケの服を見てみると、今日は乱れていないようなのでホッと胸を撫で下ろした。
《あれは整えた後だぜ?》
――ちょっと何言ってるかわからない。
私はスマコのいう事を軽く無視して歯を磨き、服を着替えて下に降りる。キッチンではマヌケがせっせと朝食を作っている。出来る奥さんみたいだなぁ。あんな奥さんいたらその男は幸せ者だ。今は私がその幸せを感じていよう。
「みんなも食べるかなぁ。アンブ、みんなを出してあげてよ。」
私はポイポイと皆を引っ張り出した。
「「ぐぅ……ぐぅ……ぐぅ。」」
――ね、寝てやがる。起きやがれ! このッ! このッ!
足で踏みつけながら皆を起こした。
デス「む?! はっ! おはようございます魔王様。」
ポチ「おはよう魔王様。ムニャムニャ……。」
インコ「ふぉあ~、おっす、魔王様。」
コン「おはようございまふぅ、魔王様。」
クモ「ふにゃ?! あ、魔王様! おっはよぉ~ん! 今日もいい天気だね! あははは。」
――クモだけ騒々しい。
「みんなおはよう。ご飯食べる?」
「よ、よろしいのデスか?! いつも申し訳ないのデスが……。」
「大丈夫だよ! みんなで食べたほうが楽しいからね。」
<マヌケ様。ウチも何かお手伝いします。>
「コンちゃん、ありがとう! 助かるよ!」
キッチンに並ぶ美女2人。
何もしない私に騒がしいバカ1人が絡み、そして男同士3人で何やら話し合い。
そうこうしているうちに朝食が出来たようなので、皆一斉に食べ始める。私はまた一人隅っこで食べている。
クモ「主様! これ一緒食べようよ! コンのヤツ盗んでやったよ! イッシシ。」
コン「こらクモ~! それウチのなのにぃ~!」
全く何でこいつらはいつも騒がしいだ。食事の時くらい静かに食べろってんだと思いながらも、とりあえずクモが差し出したコンのソーセージをパクっと頂く。
コン「あぁ……。」
悲しそうな美女は無視して、ハムハムする。するとマヌケがニコニコしながら自分のソーセージをコンにあげる。そのソーセージを見て、笑顔を取り戻す美女と更に横取りを企む悪い笑顔の美少女。
何で私の周りには美女しかいないのだ。何の嫌がらせなのだろう。苛立ちを隠すようにこっそりクモのソーセージを略奪し、全力で朝食をハムハムした。
ご飯を食べた後、私達は今度のことについて話し合っていた。
「やはり、あの魔物達の襲来が気になります。ワレらは一度迷宮の方へ確認をしに行かせては頂けないでしょうか? 何かわかるかもしれません。」
「それはまぁ今まで管理していたなら尚更気になるよねぇ。行かせてあげてもいいんじゃないかな?」
――確かにマヌケの言う通りだろね。まぁその間に他を私達で調べればいいわけだし。スマコはどう思う?
《異存なしだ。》
――ならそれで決まりだ!
私はマヌケに合図した。
「いいみたいだよ。」
「ありがとうございます! では、早速我々は行って参ります。」
そういうと5人は迷宮の方へ行ってしまった。
「私達は今からどうする?」
《まずは調べることをまとめるか。1番の目標はヘタレ様の救出だ。その為にはまずヘタレ様が立ち寄ったと思われる、あの研究施設の建物内部を調べるのが一番だな。その次にヘタレ様が連れて行かれたと思われる天上界に名前が似た天空界、これを調べる為に北の国へ行こう。》
「だね。なら今日から研究施設を調べるとして、どうやって調べる?」
《最初にインチキの元へ行こう。そして研究施設の概要を聞いた後、その言葉通りの施設なのか確認が出来ればそれでいい。》
「なるほどね。もしかしたらインチキさんの知らない何かがあるかもしれないし、実は知っていて隠している可能性もあるかもしれないってことだね。」
《そういう事だ。》
――そうと決まればすぐに転移だぁ!
私はマヌケの手を取り、国王室へ転移しようとした。
「アンブ、ちょっと待って? できれば国王室の前に街の中に転移してくれない?」
「? うん。」
私はマヌケにそう言われたので、街中の少し目立つ建物の屋上へ転移した。
街中にいきなり人が現れたら皆パニックになるだろうから転移先にも気を付けなければいけない。それを考えるとこの屋上に転移するのはいいかも。
普段上を向いて歩いているようなスーパーポジティブ人間はいないだろうし、いたら見てみたい。それにこの建物は結構な高さもあるので、まず見つかることもない。よし、ここも転移先の有力候補に入れておこう。
「あっ! 丁度、この建物に来たかったんだよぉ! アンブ、ありがとね!」
マヌケはそういうと、私の手を引いて屋上の階段から下に降りていく。
この建物内は様々なお店が入っているようだ。そしてこの建物の周辺にもお店や遊歩道や公園などの施設があり、大型のショッピングモールのようになっていた。
私達はこの建物内にあるアパレルショップに入った。どうやらマヌケは服を買うつもりらしい。
確かに、この王都内ではお洒落な服用をしている人たちが多い。私は高校の制服だからかなり目立っちゃってるし、マヌケも服装では田舎感が出ている。都会に馴染むには都会の服装ということだろうね。でも私は服を買う必要はないのだけれど……。
「いらっしゃいませぇ~。どうぞごらんくださぁ~い。」
――この掛け声は地球もこちらも全く変わらないのね。
魔法とか魔物とかそういうのを除けば、本当にこの星は地球…というか日本にとてもよく似ている。そんなことを考えながら私はマヌケに手を引っ張られていく。




