第43話 威厳(インチキ)は大事
城の中の排気ダクトから城の内部へ侵入した私達は、そこから廊下や部屋などをどんどん進んで行く。廊下では兵士と思われる者たちが入れ替わり立ち代わりに走り回っており、こちらに気付くことも無かった。
そこら中から兵士たちの会話が聞こえてくるが、全て魔物の襲来に関するものだった。一応、防衛システムが全て消滅させたという事にしているみたいだが、まだ魔物が全て消滅しているのか確認が取れていない状況のようで、不安を感じているようだった。
また、王都の裏にあった大きな山が急に消滅してしまったことに対して、魔物の攻撃によるものだとか、実は山には大量の爆弾が設置されていて魔物と一緒に爆発させたとか、いろいろと憶測を交えて意見を言い合っている。
――本当はここにいるマヌケが破壊してしまったんだけどね。当の本人はキョトンとしてるし、全く……。
そんな会話を聞きながら私達は更に内部へと侵入していく。
やがて、ある部屋の天井裏まで来たところで聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「では魔物の反応はもうないのだな?」
「はい。王都周辺で生存を確認できる魔物の反応は消えております。」
「ふむ、分かった。それでは直ちに避難勧告を廃止し、住民に安全を知らせるのだ。以上、下がれ。」
「はっ。」
部屋の中に国王以外誰もいないことを確認した後、私達は国王の前に姿を見せた。私達が急に現れたことで偉そうに踏ん反り返っていた国王がビックリしてひっくり返った。そしてクモの姿を確認すると、それはそれはとても見事な土下座をしてみせた。
「ありがとぉおおお! おかげで助かりましたぁぁああ! クモにしがみ付き、泣き付く。」
「わ、わかったから離れてマジで。」
珍しくクモが引いてる。これはこれでなかなか面白い。
しかしこの国王、家来の前との態度にギャップがあり過ぎだし。家来の前だけあんなに威張っちゃってるけど、本当はめっちゃ弱虫なんじゃん。決めた、こいつの事は「インチキ」と呼ぼう。
「この人が私の主様と、その親友様。このお2人のおかげで王都は救われたんだからね! 感謝しなさいよ?」
「おぉ~ありがとぉおございますぅ~。」
私とマヌケの手を取り、全力でお礼を言われる。その涙と鼻水だらけの顔面を近づけるので、私とマヌケは全力で引いた。
ふともろに目が合ってしまった。
「なッ?! か、かわい… いや、失礼。き、君の名前は?」
――へ?! 私?! ……あれ? マヌケさん? なんか横から凄い殺気を感じるんだけど?!
「国王様。アタシの大事な友達を口説くおつもりなら、命をおかけ下さいね?」
殺気を全開に銃を突き付け脅しをかけるマヌケ。インチキは口をパクパクさせながら後ずさりする。
「い、いや決してそんなつもりは……ん?! 君はもしや、あの勇者候補ではないのか?」
「……はい。」
「そうか。どうりで……。君にはつらい役目を押し付けたと思っている。謝って済む話ではないだろうが、どうか許してほしい。」
「いえ。それはもういいんです。人の役に立ちたかったのは本当ですから。それに今のアタシはかけがえのない大切なものを見つけました。」
「そう言ってもらえると助かる……。君達のおかげで王都は救われた。本当に感謝している。」
「君がここにいるという事は……あの魔物は迷宮から出て来た魔物なのかい?」
「まだ正確に調べていないのでわかりませんが、あの魔物を仕掛けたのは機械人と名乗る者達でした。」
「機械人だと?! そんな……あの研究は昔廃止になったはずだ……どうして……。」
「それはまだわかりません。それより国王様、私達は友達を探しています。天上界という場所をご存じないでしょうか。」
「天上界……すまない、その名前に聞き覚えはない。しかし、遥か古に存在したと言われる地名で天空界という場所があるのは知っている。名前が似ているがこちらの間違いではないだろうか?」
――天空界? 確かに名前は似ている。なにか関係性があるのだろうか……。
「天空界……。アタシ達が探している場所とは違うようですね。でも無関係とも思えません。そこはどこにあったのでしょうか。」
「あれは北の国テンガラスの上空に存在した空中都市であると言い伝えがあるが、それが実在したのかもわからない都市伝説と言われておるぞ?」
「なるほど……。そこまで分かれば大丈夫です。ご協力感謝致します。」
そう言うとマヌケは立ち去ろうとしていた。
「ま、待ってくれないか? その様子なら君はもう迷宮へは行かないのだろ? もし君たちが良かったらでいいのだが、この国の秘密特殊部隊として働いてはくれないだろうか。もちろん給料も出す。俺の直下部隊ならこの国内も含め、他の国にも入国しやすくなる。テンガラスに行くつもりなら、お前たちの人探しの役にも立てると思うのだが。」
――なるほど。確かに、この国外に入るのは簡単じゃないだろうね。それがインチキの直下で動けば容易に出来ると。
思念「確かに今後のことを考えればいい案かもね。アンブ、スマコ、どう思う?」
思念「《まぁ想定通りだ、構わん。》」
思念「うん。」
マヌケはインチキに向き直った。
「わかりました。ただし、条件としてアタシ達の存在は国王様以外には極秘として下さい。それと、アタシの給料はいらないので、その分港町から納品される魚の単価を3%程上げてもらえないですか?」
私はクモの裾をクイっと引っ張り、合図する。
クモ<主様もいならないって言ってるからさぁ、アタシの分含めてそっちに回してよ>
「そうか、君は港町の住人だったな。それは構わないが、どうしてだ? ついこの前、町の住民の生活が苦しいからという町長から申し入れがあったから、単価を引き上げたばかりだぞ? まだ町の住民は不満を持っておるのか?」
「それは……。」
[……ふむ。なにか事情がありそうだな。とりあえずその要求はのもう。王都を守るためには君達の力が必要だしな。]
――こいつ意外と話がわかるなぁ。ちょっとだけ見直そう。それよりもあの町長のくそ野郎……。今回引き上げた分もまた自分の懐に納めるに決まっている。
「ありがとうございます。それと私達は王都内では生活しませんので、このデバイスを渡しておきます。これは直接私達と通話やメッセージのやり取りをすることが出来ます。私達が王都内にいない間に何かありましたらこれで連絡をください。」
そう言って国王にスマホらしきものを渡すマヌケ。
「これで通信ができるのかい? 見たことない通信機器だなぁ。」
「はい。ですが用もないのにアンブに……」
プルルル。
私のスマホが鳴った。
「……電話をかけると、殺しますよ?」
笑顔で銃を向けて脅しをかけるマヌケ。
「す、すまない。一応念のため試しにかけてみたかったのだ。許してくれ。」
おどおどしながら謝るインチキ。
――なんで私にかけるんだこいつ。バカか? やっぱ見直したの却下ね。ていうか私のスマホこの星で使えんの?
私の戸惑いに気付いたのか、思念でマヌケが説明する。
「構造を調べて、使えるようにしておいたよ。私もコピーで作っちゃった。えへへ。」
――いやいや、私達は花びらの機械で喋れるから必要ないじゃんよ。まぁ……いいか。
その後、家来らしき者が近づいてきたのをアイレンズが感知したので、私達はまた来ることをインチキに伝え、国王室を後にした。




