第42話 ひとまず終息
コンを皆の治療に行かせた私は人間の姿をした人間ではない者と対峙している。
「今度はお前が相手かい? お前もただの人間じゃなさそうだねぇ。何者だい?」
「……。」
「全く……。無視かい。さっきの九尾の化け物の方が愛想が良くて好きだったねぇ。あんたはどうも好きになれそうにないわ。」
光の矢が私に迫る。それを忍殺、制動忍空圏で回避していく。
私には飛び道具がない。だから近づかないと攻撃を当てられないのだ。黒炎魔法があるけど、多分こいつには避けられる。速くて投げられる殺傷能力の高い武器がほしい。そんな時に、先ほどクモが使っていた蜘蛛糸手裏剣を闇分身で見ていた。
あいつ頭いいなぁ~とか思ったけど、多分スマコの仕業だろう。あれを参考に、私にでも出来る物で手裏剣を作ってみる。前にスマコに聞いた氷結魔法を使った方法だ。それをスマコの補助を借りながら、氷で手裏剣の形を作ってみた。
――即席で作ってみたけど、大丈夫みたいだね! ってか氷なのに鋭すぎない?!
私は相手の攻撃を制動忍空圏でヒラリと回避しながら勢いを増して氷の手裏剣を投げる。シュルシュルと回転しながら相手に向かって飛んでいった手裏剣は、やがて機械人の身体を引き裂いた。
「氷遁……氷手裏剣の術。」
機械人は何が起こったのかよくわかっていないようだった。
「お前…アタシに傷をつけたねぇ? ただじゃおかないよ!」
そう叫びながらもの凄い剣幕で、突っ込んできた。私は忍殺拳の構えを取り、待ち構えようとしたが急に機械人は動きを止めた。
その瞬間、王都の裏側にあった大きな山が大爆発とともに蒸発して無くなってしまった。
――マ、マヌケしゃあ~ん?! 山の後ろに隠れている魔物を片付けてとは言ったけど、山を片付けてなんて言ってないよぉ?! ありゃマジの全力でバーストブレイカー撃ったね……。
そこには神機モードをフル装備した起動要塞が全身の武装から煙を立てつつ、こちらに向かってピースサインをしている姿が感知で見えた。
――引くわ~。
「おいおい……いったい何が起こってんだ?! 本体が消滅しちまったじゃねぇか! あれもお前らの仕業か?! ちぇ、やってくれたねぇ。こりゃあ引き上げだ。」
機械人はそういうと王都とは逆の方向へ飛んで行ってしまった。
――つ、疲れたぁ。流石に無理をしすぎたみたいだ。
私は強烈な疲労と吐き気に襲われ、その場で倒れてしまった。
大きな山に隠れている魔物の軍勢をマヌケに任せた私は、皆のところに向かった強敵に対抗する為に闇分身体を4つ作ってみんなの補助に向かった。
そして、コンのもとに現れた一番の強敵にはこうして私自身が向かったのだ。インコの方の機械人も強かったが、そちらの方は先にインコが魔物の大群を全滅させていたので2人がかりで何とかなると思った。最悪の場合は、逃げればいいと。
実際はあっさり引いてくれたから正直助かったけどね。
でも闇分身をフルに動かしながらの戦闘はヤバかった。スマコも全力でサポートしてくれたけど、マジで吐くかと思った。でも頑張ったおかげで、みんなは無事だった。ちょっと怪我させちゃったけど、コンがいれば問題ないでしょ。
正直、あのままではコンが殺されていてもおかしくなかった。それくらいあの機械人は強かった。本当に守れて良かった……。
さっきの戦いの中で分かったことは、王都への魔物の襲来を仕掛けたのは機械人という者達であること。それぞれの強さが結構バラバラだったけど、全身が機械で出来たヤツよりも、身体の一部が機械化されたヤツの方が強いということ。
自分で本物の機械人とか言っていたくらいだしね。確認できたのはコンのもとに現れたヤツとインコのもとに現れたヤツ。両方とも会話することが出来ていて、他のヤツより人間っぽかった。
そして、そいつらはマヌケと同じように魔動力を体内で作り出して、自然と魔法を使うことが出来るということ。それも機王化する前の勇者候補としてのマヌケよりもかなり強い魔法が使えていた。
機械人が何処から来て、何の目的で王都を攻めたのかまだはよく分からない。
確か、今の人間に代わって自分たちが新人類になるとか2番目に強かった斧のヤツが言っていたがその真意もわかんないし、まだ裏にバックが潜んでいるようなことも言っていたし。
――はぁ、面倒事ばかり増えてくなぁ~。人類の滅亡? そんなもんは知らんよぉ。
正直マヌケがいなかったら私がここまで本気になることも無かったと思う。私の目的はあくまでヘタレを助けることなのだから。でもマヌケが守りたいと思うものなら私も全力で守る。
――それが親友ってもんでしょ?
それに面倒だけど、意味のないような情報でも少なからず今後の為にはなるはずだ。とりあえず、いろいろ考えるのは後にして王都側に危機が去ったことを伝えなきゃね。
仰向けに倒れてそんなことを考えていると、マヌケや皆が迎えに来てくれた。マヌケが私をお姫様抱っこしてくれる。
――ふふふ、もう自分で動けるけどもう少しこうやってスリスリしていよう。
マヌケの柔らかい感触を十分に味わい、元気をもらう。私にとってはこれが回復魔法だ。
クモ「ねぇ主様! 主様ってばぁ! さっきあたしのところにいたよね?! みんなのところにも来たって聞いたけど?! どうなってんの?! ねぇねぇ!」
デス「主様のお手をお借りてしまい、申し訳ありませんでした。」
ポチ「あいつ強かったねぇ。主様来てくれなきゃ本当にヤバかったよぉ。」
インコ「オレは自分が恥ずかしい。何であんな奴に手も足もでなかったんだ……今日は泣こう。」
コン「主様……お役に立てずにごめんなさい。……インコ、今日はウチも付き合うよ。」
――こいつらうるさい……。でもこの子らもそれぞれ思うことがあるのだろう。スマコ、後で面倒みてあげてね?
《……あぁ。》
――スマコ? 大丈夫?
《うぷっ……私も無茶し過ぎたわ。……うぷっ。》
――スマコが酔ってる……。まぁ私よりも全然負荷が多かったもんね。てか、AIなのに酔うんだね。いつもならスルーしないところだけど、私も今は喋りたくないからスルーするよ。
私達はクモ以外の皆を異空間へ放り投げ、国王に会う為に王都内の国王の城の前までやって来た。
「アンブ、もう大丈夫?」
「うん。」
マヌケが心配してくれているが、動くのに問題ないくらいには回復した。今は夜中だけれど、城の中では人がバタバタと走り回っているのがわかる。私達は闇の中に紛れ、建物の排気ダクトと思われるところから城の内部へ侵入した。
――うわぁ~これスパイっぽいわぁ~。
お父さんとお母さんも毎日こんなことをやっているんだろうねぇ。
――今頃私のこと心配してくれてるのかな?




