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第41話 危ない狐

*****


――ウチは名前はコン。狐の魔物であり、龍魔族の血を引くもの。


 今は主様の命令により、王都へ侵攻してきた魔物の大群を殲滅する役目を負っているのだけれど、魔物の数がありえない程に多い。


――これは何かあるみたいね。単純に迷宮の中の魔物が出て来たとかいう話では済まないみたい。


 しかし、この魔物達の数では倒しても倒してもきりがないし、少しでも気を抜いたら進行を許してしまいそうになる。


――そんな状態なのに、増援てどういうことよ?! スマコ様の話なら強敵とのことだけど、この状況に強敵が来たら軽く死ねるわね。もともと他の皆よりウチは強くないし……。


 しかし、この魔物達をよく見るとウチらでも知らない魔物も少し交じっているようだ。それにこの夥しい程の殺気。これは今までに感じたことのない殺気だった。


――何かに操られているかのようなこの殺気。気になるわねぇ。


 その辺りの魔物の身体の中でも解剖して調べたいところだけれど、魔物は命を絶ってからある一定の時間が過ぎると、細胞が急激に破壊を始めてパリンと消滅してしまう。だから今は全くその時間がない。


――解剖するには眠らせておくか、生かした状態で生と死の狭間のギリギリの状態で切り刻むかどちらかなのよね……。ウチはそうやって魔物の身体の中身を知り、医療と言う名の技術を身に付けた。もちろんそれは人間に関しても同じ。


 ウチは人も魔物も動物も生きる物全ての身体の中身の仕組みを知りたいと思っているので、生きたままでも切り刻むことに一切の躊躇はない。


 そうした殺戮から逆に怪我や病気を治す為の妖術を編み出すことも出来たし、逆に壊し方も知ることが出来た。まぁ魔物は病気などにはかからないから面白くないのだけれど。


 今まで迷宮内の魔物の解剖を繰り返して気付いたことがあるのだけれど、魔物を構成している細胞や遺伝子などのデジタル物質が同一だったのよね。


 要は、元は全て同じ細胞で作られてはいるけれど、その行動や仕草などはそれぞれの個性を持ち、別の生き物として存在しているということ。


 それが何を意味するのかはまだわからない。けれど、いずれはそれを解明してみたいとも思っている。


 大体この話をすると普通は引かれたりするんだけど、あのやかましいクモだけは褒めてくれたっけ。自分がどれだけ危険な存在なのかということを知った上で、クモはそれでも仲良くなろうとしてくれた。それはウチにとっても初めてのことで、最初は戸惑いもあったけど今では心を許せるかけがえなのない存在になっていた。


――と、今はそんな悠長なことを考えている暇はなかった!


 相変わらず、うじゃうじゃと魔物が押し寄せているところに妖術を発動し消滅させる。しかし、その魔物の大群の中に人間の女性が1人いるを見つけた。


――何故ここに人間が?!


 とりあえず威嚇と妖術で周りの魔物を排除する。


「あなたは誰ですか?」


「はは。迷宮の管理者だな? 九尾の化け物よ。」


「ウチのことを知っているという事は、ただの人間ではないようですね。」


――おそらくこの方が、スマコ様がおっしゃっていた強敵と見るべきね。


「一応教えてあげるよ。 あたしゃ機械人。その辺に散らばった出来損ないじゃなくて、本物のねぇ。あんたは当たりだよ。嬉しいかい?」


「えぇ。非常に興味をそそられますねぇ。黙って解剖させて頂けませんか?」


「はっはっはっ! 面白いことを言う化け物だ。身体の中身を見たいだなんて悪趣味な化け物もいたもんだよ。笑っちまうねぇ。まぁアンタがあたしに勝てたら好きにするといいさ。 勝てたら……ねぇ?」


「ふふふ。それではお言葉に甘えましょうか。」


 ウチは全力で威嚇を発動する。すると、自身の姿を巨大化した九尾の化け物に変化させる。そして、青い火の玉を口から吐き出した。機械人はウチ全力の炎を片手で簡単に塞いでみせた。


「おぉ~やっぱ迷宮の管理者だけはあるんだな。でもこれで終わりじゃないんだろ? 出し惜しみすんなよぉ!」


「ふふ。おしゃべりが好きな方のようですねぇ。うちにもやかましいのがいるので、そちらを紹介してあげましょうか?」


「お? そいつは興味あるなぁ。でも残念だ。お前をここで殺さなくちゃいけないんだわ! わりぃがそろそろ死んでくれよな?」


 機械人はそういうと背中に背負っていた機械式の弓を構え、魔動力で発生させたと思われる光の矢をウチに向けて放つと、その矢がウチに刺さってしまった。


 しかしそれはウチの本体では無かったので無事だが、魔術で作り出した疑似の細胞が一瞬で侵食され、内部から破壊されてしまうとても危険なものだった。


――ここでウチは確信した。この方は全力の自分よりも強い……。


「あれ~? 殺したと思ったんだけどなぁ。なんだいその技? 魔法じゃないのか?」


「ふふ。魔法の上を行く秘術ですよ。本体に当たっていたら間違いなく消滅していましたねぇ。」


「なるほどなぁ~。ますますあんたに興味が出てきたところなんだがこっちも急ぎなんだよ。頼むから引いてくれないかい?」


「お断りです。」


「そりゃあ残念だ。」


 先ほどの光の矢がウチの身体の本体目掛けて放たれた。ウチはそれを何とか回避し、青い炎の火柱を発生させる。機械人はそれを簡単に打ち消して、矢の雨を降らせる。それにより少しずつ身体を削られていく。


――痛いなぁ……。身体を少しずつ削られるのはこんなに痛いんだ。今までやってきたことの仕打ちかな? どうやら、ここまでかなぁ。


 そう諦めかけたその時、光の矢の雨が止んだ。目の前をみると、もの凄いスピードで矢を全部裁いている主様の姿があった。


「主様?! なぜここに?!」


「みんな……怪我してる。……行って。」


 主様はそう言って指をさし、機械人に向き直る。

 おそらくここにウチがいても邪魔になるのだろう。ここはお任せして、皆の治療に行けとおっしゃっているようだ。正直、悔しいがそうする他にない。




「主様。ごめんなさい。」


 ウチはそういうと、皆のもとに急いだ。

 周りを見てみると、進行していた魔物は全ていなくなっていた。そして皆がこちらに向かって来ていたので、丁度合流することが出来た。


 デスは背中に軽い打撲。

 ポチは背中と脇腹に打撲と火傷。

 インコは翼に打撲。

 クモは無傷だから無視。


 皆大事には至っていないようで安心した。

 ウチはそれぞれ妖術を使って回復を施す。


「コンの治療は本当に凄いねぇ。さっきまで痛かったのに、温かくて気持ちがいいよぉ。」


「全くその通りである。心まで安らぐようだ……。」


「オレは感動し過ぎて涙が出そうだぜ……。」


――それでもウチは弱い。先ほどの不甲斐無さで自分が嫌になる……。ウチは本当にここにいていいのかな……。


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