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第37話 機械人と破龍

 前には5つの強い反応。後ろには山に隠れた敵の本体と思われる大量の魔物達。このピンチを救う方法は……。


「マヌケ。」


「うん?」


*****


――ワレはデス!

 主様より頂いた偉大な名前に恥じぬ働きをする者。全ての敵を破壊するのがワレの専門である。今のところワレに勝てるような魔物は存在しない。


――しかし、数が多すぎるぞ! こやつら何処から湧いて出たのだ!


 ワレら5名の魔物は迷宮の管理を行っていたが、正直言って全員が放置していただけだ。生まれながらにワレらが与えられた使命は3つ。


・誕生するかもわからない魔王が現れるその日まで迷宮をそのまま維持しておく。


・少量の魔物を地上にも放ち、人間達と戦わせる。


・勇者候補が現れたらそのまま好きに行動させる。


 というもの。この使命を誰から与えられたのかも全く分からなかったが、何故か自分の使命であるという認識があり、それにずっと従っていた。


 ワレは他の魔物と違って、生まれながらに理性があり圧倒的な龍魔族の力を持っていた。1人淡々と日々を過ごしていたが、ある日ワレと同じように使命を持った者達が現れた。それは、ワレと同じように龍魔族の血を持った者達だった。

 最初は驚いたが、今までお互いに話す相手もいなかったので、自然と仲良くなってしまった。そして、定期的に状況報告などを行いながらお互いのことを知っていった。


 他の4名もワレと同じ使命の元、ただ淡々と迷宮の管理を行っていただけだ。


 地上に魔物を放つのもほんの一部が勝手に出ていくだけであり、人間の数があまり減らない範囲に抑えられていたので、そのまま放置していた。


――しかし、現在これだけの数が迷宮から出てきたということか?! 迷宮で何があった?! ワレらが迷宮を留守にしたことで、何か問題が起こったのか。しかしワレが生まれて今日まで、このようなことが起こったことは一度もなかった。これは主様にお願いして一度迷宮を調べる必要があるかもしれん。


 それはひとまず置いておく。今はこの魔物の軍勢を殲滅させることが先決である。このままでは人間が滅んでしまう。それだけは何としても防がねば。


 しかし、数が多すぎてワレの力を持ってしてもこの軍勢を止めておくだけで精一杯だ。それに加えて先ほどスマコ様からの強敵の増援の連絡……。


――さて、どうしたものか。


――む? あやつがスマコ様がおっしゃっていた敵か。 ……に、人間なのか?!


「おぬし、何者だ!」


「……。」


「答えぬか。人間の分際でワレに勝てると思ってか?!」


「……。」


 その人間は突然もの凄いスピードで向かってきおった。ワレは衝撃波を纏ったパンチで応戦するが、拳が衝突した瞬間に吹き飛ばされたのはワレの方であった。

 その隙に魔物共が進軍を始める。


 痛みに耐えながら、その魔物共に向かってディストラクションを放つ。その攻撃で魔物は塵と化すが、その瞬間を狙って正体不明の人間の拳がワレにヒットする。その攻撃でまた吹き飛ばされ、地面にめり込んだ。


「はぁ……はぁ……。このままではまずい。」


 この人間、1対1でもほぼ力が互角なのに対して、尚も進軍を続ける魔物共。これはかなり部が悪い。早く何とかしなければ……。


 そう思い、進軍する魔物共に向かってディストラクションを放とうとしたが、人間に顎を蹴り上げられてそれを阻止されてしまう。宙に蹴り上げられてしまった状態で、人間が止めとばかりに拳を向けてきた。


――まずい! ガードが間に合わん。やられる?!


 人間の拳がワレに届くその瞬間、突然その者が吹き飛んだ。


「忍殺……龍雷拳リュウライケン。」


「あ、主様?!」


 そこには主様の姿があった。主様の攻撃で吹き飛ばされた人間は顔の皮膚が捲れ、中から機械と思われるものが見えていた。


「お主……人間ではなく機械人なのか?! そんな、存在しているはずが……いや、機械人は体の一部を機械化しているだけのはず。お主は全てが機械で出来た人形であるな?!」


 そう、それは遥か昔のことである。


 勇者候補と同じように、魔動力を自身で生成できる人間を作る研究が行われていた。その中で、人間の一部をサイボーグ化させてその目標を達成した組織が存在した。しかし改造された機械人の寿命はかなり短く、改造されてから僅か3日で生涯を終えてしまうという哀れな末路を辿ることになったのだ。

 機械化する労力や経費、また非人道的な考え方から研究は中止となり、その組織自体も完全に消滅してしまったと聞いていた。


――もしかしたら、その技術は未だに失われていないのだろうか。今のところは何もわからんが、考え事をしている暇はない!


 機械人は起き上がり、変な音を立てながら蒸気を放出している。その後、先ほどよりもかなり速いスピードでワレに向かい攻撃してきた。ワレはなんとかそれを回避する。それよりも周りの魔物がかなり進行してしまっていることが気がかりだった。


「それ……倒せ。」


 そういうと、進軍していた魔物達に向かって黒炎魔法を放って魔物の大群を消滅させていく主様。ワレがこの者との闘いに集中できるように周りの魔物共を引き受けて下さるつもりのようだ。


「主様、感謝致します!」


 ワレはそういうと、機械人と対峙する。


――ワレは人間が嫌いだが、主様とマヌケ様のお2人は好きだ。あのお2人は紛れもなく人間であるが、我々皆の一緒にいたいというその気持ちを受け入れて下さった。そのお2人と同じ人間に対する価値観もいつの間にやら変わっており、自然と攻撃を躊躇してしまっていたようだ。


 しかし、人間ではないと分かった以上はもう手加減はせぬ。


「龍魔族の力を思い知れ。」


 ワレは魔龍族としての真の力を開放した。すると龍魔族しか扱う事の出来ない、龍気と呼ばれる力が内側から漲ってきた。 機械人は変な音を立てながらワレに向かってきた。機械人の全力のパンチを龍気で纏った腕でガードする。

 

 すると、自身の攻撃の反動で機械人の腕が壊れる。


 すかさず機械人は腕の中に仕込んでいた銃口をワレに向けて炎魔法フレイムバレットを放った。おそらく自身の魔動力から魔法を放っているのだろう。その攻撃はとても強力だ。


 しかし、龍気を纏ったワレには全く通じない。その魔法を放っている銃口ごと、拳で粉砕する。行き場を無くした魔法が腕の中で暴発して吹き飛んでいった。尚もギリギリと嫌な音を立てながら向かって来ようとしている。


 ワレは龍気を口の中に集めていく。

 そして溢れんばかりのエネルギーを一気に放出した。


破龍はりゅうの咆哮」


 口から放たれた龍気のエネルギーは機械人だけではなく、その後ろから進軍していた魔物達をも飲み込み消滅させてしまった。正直かなり体力を消耗してしまったが、まだ主様が戦っていらっしゃる。


 ワレもすぐに向かわねばと思い翼を動かしたが、もう王都へ向けて進軍している魔物の姿も主様の姿も無かった。


*****

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