第3話 クズの暗躍
「ピピッ……バキュ……再生。システムイン……完了。再構……完了。ピピッ、ピー……」
――にゅおうッ?!
全身を針で軽く突かれたような何とも言えない感覚に、変なうめき声が……出なかった。
――声も出せない程私の身体はヤバいのか? 身体の感覚もないし、目も開けられないし……引くわ~。
――これって詰んでんじゃね?! 死ぬってこんな感じ? それとも植物人間状態?! 引くわ~。
――しかし…ここは天国? それとも地獄なのかな?
「しいて言うなら、地獄ですかね?」
――きゃぁあああ! 何か喋った!
「初めまして。神です。」
――う~ん、頭おかしい人? コミュ障な私に神との会話はハードルが高すぎるわぁ。こういう時は無視だ。うん、それがいい。
「頭がおかしいのはまだ許しますが、無視はさすがに傷つきます。滅ぼしますよ?」
――ひぇ~?! めっちゃ怖いんだけどこの人。なんか喋れってことよね?! え~っと……会話ってどうするんだっけ? そもそも初対面の人ともろくに会話できないのに、神と会話なんてレベル高すぎるってぇ~。だいたい、自分で神なんて言ってる人なんてヤバい奴じゃん! 普通なら絶対関わっちゃいけない奴だわ。そもそも私今目見えないし、体の感覚なんてないし、言葉なんてしゃべれ……ない?
――……あれ? これ全部聞こえてる?
「はい。もちろん全て聞こえていますよ。よく喋る方ですね。面白かったので、いろいろ失礼な発言は今回だけ許しましょう。」
――いやぁ~、心の声が聞こえるなんて神様もお人が悪い。
――ははは……ごめんなさい。
「素直でよろしい。さて、あなたは先ほど立派に消滅しました。私がそれをたまたま見ていたので気まぐれに再生してます。まだ身体は見る影もありませんが。」
――えぇ……。私の身体どうなってんの?
「あなたは時空の狭間に閉じ込められて体の維持が出来ずに崩壊しておりました。簡単に言えば、グッチャグチャのバラバラ状態ということです。どうです? 面白いでしょ?」
――ははは、笑えね~。
想像を絶する言葉を平然と言ってのける神。一応この神のおかげで生きているわけだ。
「あなたを生かすのは私にも目的があるからですよ。お友達を助けるのでしょう?」
私はその言葉でハッと我に返った。
――ヘタレは?! 無事なの?!
「はい。一応生きてはいるようです。もともとは私を狙った消滅魔法でしたが、長距離からの攻撃で座標がずれたのでしょう。不運にもたまたまあの方に当たってしまいました。」
――消滅魔法?
《彼方もそれに気付き、目的を変えてお友達を彼方側へ転送することにしたようです。その理由はわかりませんが、わざわざ再生させて転送していたくらいなので、生かして何かに利用するおつもりなのでしょう。》
――彼方側? ヤバい全然ついていけない…。
「しかし、不覚にも貴女が転送魔法に入り込んでしまった為、不要な貴女だけを別の異空間へ飛ばしたようです。普通ならそれで消滅しますので。」
――私だけいらない子?
「まぁ彼方の思惑通り見事にグッチャグチャのバラバラになっておられましたけれどね。ふふふ。」
――おい! 何かバカにされてるのが気にくわないんだけど?! でもまぁ、とりあえずヘタレが無事なら良かった。
――うん? それにしても、私を狙った消滅魔法とか言ってなかった?
「あ……。」
――あん? おい、まさかあそこにいたのか?
「……。」
――つまり、アンタがあそこにいたから私達は巻き込まれたってことなの?!
「……てへっ。」
――アンタのせいじゃないかぁああ!
「私にも予想外だったのですよぉ。まさかあの距離から攻撃してくるなんて思わなかったですし、何よりもあの新しいクレープを食べてみたかったのですよ。まぁ、もし私に魔法が当たっていたとしても全く問題なかったのですけどね。ふふふっ。」
――こいつ、いけしゃあしゃあと。
「まぁまぁ、そう怒らないでくださいな。お友達はどうやらご無事のようですし。貴女もきちんと改造してみせますから」
――うぉぉおい?! 改造されてんの私?!
「はい。だってこのままでは滅びますし。心配しなくてもあの貧相な体形と不思議な道具は少し弄って再生してあげますから。ぷぷぷッ。」
――こいつ~! 私が結構気にしていることを……七つ道具も再生してくれんの?
「うふふふ。この貧相な体形がこれから育つことを祈っておりますよ。不思議な道具はあちらの星でも使えるように私が弄って再生してあげますよ。」
――おいっ! なんか胸を突かれてる感覚があるんだけど?! さわんじゃないわよ! でも七つ道具を再生してくれるのは助かるわ。てか身体の改造ってどういうこと?
「う~ん、面倒くさいので嫌です。」
――なんやねん! もっと教えてよ!
「面倒な方ですね。もともとあなたの身体は内面がボロボロの状態でした。正直見るに堪えない状態でしたよ? あのままでは余命半年もあったらよかったくらいに。」
――え? マジで?!
「はい。おそらく貴女の不思議な力が関係しているのでしょう。それが暴発して内側からグチャグチャになっていました。そのままでは生命活動が維持できないので、無意識に身体が防衛反応を起こして寿命を少しばかり伸ばしていたようですが。」
――そうなんだ。これが原因不明の病気の正体だったんだ。
「たまたま私があなたに興味を持って良かったですねぇ。本来貴女が半年後にもがき苦しんで死のうが私の知ったことではなかったのですが。」
――おい、言い方! それより、あんたの目的って何なの?
「貴女はお友達を救出してくれるだけでよろしいですよ。それで私の目標もほぼ達成されますので。せいぜい死なないように頑張って下さいまし。」
――言われなくてもヘタレは絶対助け出すし!
「簡単に死なないように、神ちゃん特典として複数のスキルをプレゼントしちゃいます。今日の私はかなり太っ腹ですよぉ。美味しかったクレープのおかげですねぇ。」
――私クレープ食べてないんですけどぉ?! 何自分だけちゃっかり食べてんの? ヘタレと2人でずっとずっと楽しみにしていたのに! どうしてくれんのよ!
「そんなことはどうでもいいので、目が覚めたらあなたのAIスマコちゃんにいろいろ聞いて下さいね。後はそれで全てわかりますので。これで貴女も魔法少女人生の始まりですね。せいぜい私を楽しませてくださいな。》
――何でスマコって名前知ってんの?! てかスキルって? 魔法少女ってどういうことよ? 私その辺の知識が全くないのよ! ゲームなの? アニメなの? それ美味しいの? というかお願いだからクレープ奢ってよ!
「すみませんが、ゆっくり話をしていられなくなりました。」
――へ? クレープは?
「ふふふ。もう着いちゃうので諦めて下さい。今から貴方が目を覚ます場所は、お友達が転送された世界です。その世界に私は干渉しませんが、暇つぶしに時々覗いてあげますよ。せいぜい私を楽しませて下さいね。それでは、良い旅を。 ふふふ。」
――待ってよ! クレープは?! ねぇってばぁぁあ……。