第30話 新しい自分へ
《マヌケ様、その化け物達を横に並べてくれるかい? 今から儀式に入るからさ。》
「そっか! やっぱり使い魔にすることに決めたんだね! まぁそんな気はしていたけど!」
マヌケには全てお見通しだったようだ。
《こいつらはまぁまぁ使えるぞ! せいぜいこき使ってやろうぜ! はははっ!》
――でたよ……悪スマコ。
「うふふふ。力強い仲間が出来たね!」
そう言うとマヌケは魔物達に向き直り、言葉で喋り出した。
「皆の力をアンブは認めてくれたみたいだよ? 良かったね! 使い魔としての儀式を始めるけど、いいかな?」
「ほ、本当でございますか?! 蜘龍や鷲龍はまだしも、我々は全く魔王様のお役に立てていませんので、その資格がないと思っておりますが……。>
壊龍と狼龍と狐龍が悲しそうに頭を下げる。それ以上に蜘龍と鷲龍が悲しんでいた。
全くこの子らは……。
「それはね、皆がお互いを大事に思っているからだと思うよ? 鷲龍くんにしても、蜘龍ちゃんにしても、皆のことを気にかけていたでしょ? アンブとアタシは今大切な友達と離れてしまっているの。だからお互いのことを大事に思い合う気持ちを持った皆を一緒にいさせてあげたかったんだと思うよ? こう見えてもこの魔王様、実は優しいんだから!」
マヌケがそういうと涙を流しながら魔物達が平伏した。
――や、やめてくれぇ~。泣くな、拝むな、平伏すな! 私は優しくなんてない! ヘタレの救出の為にこいつらをただ利用するだけだし。だから感謝される筋合いなんてないんだし、全く……。
――でもどうやって使い魔にすんの?
《私が今からいう言葉を念話でいいから復唱してくれ。それと、主がこいつらのことを認めたっていう証を1匹ずつ授ける必要があるわ。》
――その証って何?
《新しい個体名だ。名前を授けるっていうのはそれだけ特別な意味を成すんだよ。とまぁ前置きはその辺で、適当にあだ名を付けたらいいだけだ。気にすんな!》
――なるほど、なら適当に付けちゃおうっと。
思念伝達でスマコの話を聞いていたマヌケにアイコンタクトする。
そして、マヌケは頷き口を開く。
「それじゃあ、始めるよ!」
「は、はい! よろしくお願い致します。」
《主、自分で決めたこいつらのあだ名だけは口で発音してくれな?》
――えぇ~。本当は声出すやだけど……まぁしょうがないか。
私は魔物達の前に立ち、スマコが言った通りの言葉を念じた。
――我、服部桜夜の名の下にこの5匹の魔物を使い魔として認め、ここにその証を授ける。
すると、魔物達から光が放たれる。すかさず私は続けた。
「壊龍、名を<デス>」
「狼龍、名を<ポチ>」
「鷲龍、名を<インコ>」
「蜘龍、名を<クモ>」
「狐龍、名を<コン>」
――とし、我に仕えよ。
「我らが魔王、主様。この命果てるその日まで、我らの命は貴方様の為に。」
全員が口を揃えてそう告げた瞬間、魔物達から放たれていた光が私の身体の中に吸収されていった。
――え?! お、終わり?!
《終わったな。これでこいつらは主のしもべだ。》
――はぁ~結構緊張したよぉ。てか心なしか、私の魔力随分減ってない?! かなりフラフラするんだけど……。
《そりゃ~破滅級クラスの魔物を5匹も使い魔にしたんだぜ? このくらい魔力持っていかれるのは当然だって。普通の人間ならこの中の1匹でも使い魔にしようとしたら身体が持たずに死んでしまうからな。因みに、そのおかげで魔物達も魔人族に進化したぞ?》
――もう知らん、何でもいいや。
クモ「やったねぇ~! これでずっと皆と一緒にいられるねぇ! 主様のおかげだぁ! それにみんなの新しい名前すっっごく良いじゃん! ねぇデス!」
デス「ふむ。これもちりゅ…クモとインコのおかげだな!」
ポチ「ボクはポチだってよぉ!? すっごくかっこいいよねぇ!」
コン「うんうん! ウチはコンだって! めっちゃ可愛くない?!」
インコ「オレ自分の名前にマジ感動してるわぁ。感動しすぎて涙が止まらねぇ。」
――お、おぉ。想像以上に喜んでくれているねぇ……。なんか、ごめん。適当に付けて、ごめん。一応説明しようか?
デスは、破壊が専門とか言っていたから、デストロイヤーを略してデス。
ポチは、犬に名前つけるならこれに決まってるでしょ?!
え? 狼だろって? ……狼って犬じゃないの?!
クモは、正直何も思いつかなかったから、そのままのクモ。
コンは、狐の鳴き声なら誰でもコンコン言うくない?! ……言うっしょ?!
インコは、喋る鳥ならもうこれの一択じゃん?!
――てなか感じで適当に付けてみたんだけどさ、皆が喜び過ぎて逆に困ってしまう。
「うふふ。みんな素敵な名前もらえて良かったね!」
コン<マヌケ様も素敵な名前ですよねぇ! 正直ずっと羨ましいなぁなんて思っていたんですよぉ~!>
「いいでしょ? この名前もアンブが付けてくれたんだよ? アタシの大事な名前なんだぁ!」
――もうやめてぇ! そろそろ照れるからぁ~マジで。それよりちょっと疲れたよぉ~。そろそろ帰ってお風呂入って眠りたい!
私はマヌケの袖をクイっと引っ張り、帰りたいアピールをする。
「ん? うん! とりあえず帰ろうか! 皆がいると目立っちゃうから、今日はアンブの異空間の中で休んでくれる?」
デス<了解しました。実は結構あの異空間はきにい……>
ポチ<またきたこのパタ……>
インコ<オレはまだなれ……>
クモ<主様だいす……>
コン<ありがと……>
皆何か話の途中だったけど、まぁいいか。
私達は星の光が奇麗な真夜中の田舎道を歩き、家に帰った。
その後、2人でお風呂にゆっくり浸かってすぐにベットへ入った。
「小さいけどヘタレの手がかりがあったね。明日起きたら港町の町長さんのところに行って、通行証をもらえるように頼んでみるよ。アンブの個人カードは無理かもしれないけど。」
この世界の住人ではない私は個人を証明できる個人カードを持っていない。通行証はなんとかなったとしても、個人カードだけはどうしようもないのだ。偽装で作れればいいんだけど、そもそもこの世界の個人カードというのは、直接人間の身体の左手の甲に特殊なチップが埋め込まれているものらしい。
そのチップを機械が読み取って個人を特定するそうだ。もうカードじゃないじゃんという突っ込みを入れるのもめんどくさい。それは流石にマヌケの神機の力を持ってしても作ることは不可能らしい。
――まぁそれはしょうがいないね。とりあえず、通行証さえもらえれば後はなんとかしよう。
そんなことを考えていたら、マヌケはスヤスヤと眠ってしまったようだ。
――しかしいつも距離が近いんだよなぁこの子は……。まぁ、その方が私も安心するけどさ。
マヌケの頭をなでなでして、私は目を閉じた。




