第29話 未来都市
王都はその広い領土全てが高い壁に囲われた円型となっており、その壁には砲台らしきものが張り巡らされていた。その中の街並みはまさに未来都市。
形が独特な大きな建物や高いタワーがいくつも立ち並び、あちこちの大きなディスプレイから映像が流れ、光り輝くネオンにより感動すら覚えてしまう。
また空中では四角いボックスのような物があちこちで行き交っており、それをアイレンズで見てみると「物品運搬用箱」と表示される。
――す、すごいなぁ。遠い未来に地球もこんな感じになるんだろうか……。
「さて、そろそろオレたちはレーダーに引っかかる距離だ。この辺りは魔物の侵入を感知するレーダーが張り巡らされているからな。」
なるほど、確かにアイレンズで見てみると王都周辺の壁から直径500m程は木々や障害物などが全く無く、壁から赤外線? みたいなものがあちこちに出ていてそれが空中にも張り巡らされていた。多分それに魔物が触れるとセンサーが反応する仕掛けなのだろうか。
「アンブ、森の中で蜘龍ちゃん出してあげようか!」
私達は赤外線が届かない森の中に降りて、異空間から蜘蛛を引っ張り出す。
「うふぉい?! びっくりしたぁ! いきなり突っ込まれたり引っこ抜かれたりすると心臓に悪いよ?! んでもあの異空間っていうの? なかなか居心地は良かったよ! 時間の流れは止まってんのに、あたし達普通に寛いで会話してたし、よく分かんないけど、カボチャが大量にあったからお腹も空かなかったし、なんていうのかなぁ~秘密基地的な? あっ、でも引っこ抜くなら一声ほしいなぁ~マジで! 本当に心臓悪いんだもん! 寿命縮むかと思ったよ魔王様~。あははは。」
――うるさいわ! 出てきて早々よく喋るやつめ。
「蜘龍ちゃん? 早速で悪いけど王都に侵入してくれる?」
「え?! わぁ! もう王都着いてんじゃん! よ~し、あたしに任せてよ! ちょっくら見てくるから!」
「うん。ポーチが落ちていた周辺に女の子と男2人がいるかもしれないから、注意してね?」
「はいは~い! 了解でありま~す!」
軽い感じでそう言いながら、巨大な蜘蛛は忽ち小さくなり視界では見えなくなった。もちろん私はアイレンズで見ているので位置が分かっている。一応、七つ道具の1つであるヘアピンで超小型の発信機を瞬時に作成し、蜘蛛にも付けておいたのだ。
マヌケも同様に自身のレーダーで追っているようだ。
「オ、オレどうしたらいい? オレデカいから目立ってない? ここにいてい……。」
ウジウジとうるさいので鷲龍も異空間へ放り込んだ。
「アンブってば……ひどい。」
マヌケが何か言っているが、私はアイレンズに集中する。
蜘蛛はその身軽な身のこなしで赤外線の隙間を上手く躱し、更に蜘蛛の糸を巧に使ってどんどん奥に入っていく。おそらく蜘蛛には赤外線が見えている感じだ。やがて、あっという間に壁に張り付いてそのまま上って行く。ここには赤外線のようなものしかなかった為、それを避けたらいいだけだったが、当然、私達のような普通の大きさの者達が入り込めるような隙間は無かった。最小で1センチ程に小さくなれる蜘蛛だからこそ成し得る技だった。
その身のこなしは、まるで忍者みたいで少し羨ましさも感じてしまった。
気付けば壁の頂上までたどり着き、中に侵入したようだ。
「蜘龍ちゃん凄いねぇ。こんな簡単に入っちゃうとは思わなかったよ。逆に言えば、これだけ簡単に侵入出来る魔物もいるってことなんだよね。それは王都に暮らす人たちにとってはちょっと怖いことかもしれない。」
確かにその通りだ。蜘蛛程の魔物はそうそういないかもしれないが、同じように身体の大きさを変えることが出来る魔物や、自在に形を変形出来る魔物がいてもおかしくはない。
「この王都は、他の国から見てもかなり技術が進んだ街なの。まぁそれは全ての国の中心点で他の国にとってもここは大事な場所だからそうなっているんだけど、その最先端技術でも最強ではないってことなんだね。」
ここが栄えているのはそういうことなんだ。つまり、この王都を中心に他の国同士のつながりがあるのだろう。逆に言えば、この国が落ちたら大変なことになるということだ。
――そんな街にヘタレは来ている? カオスもいるの? 一体ヘタレに何をさせようというの? 分からないことばかりだ……。
蜘蛛は相変わらず家なのかビルなのか建物の上をピョンピョン飛び回って奥に進んでいる。
「結構遠くまで行くね。センサーが当たらない範囲で空から追っかける?」
私はコクンと頷く。
ヘタレは神機モードを発動し、機械の翼を羽ばたかせた。私はまたマヌケの腕にしがみ付いて飛んでいく。
かなり上空から見渡してみると、本当に映画や漫画のような世界感だった。しかし、先ほどよりも明かりは少ない。外に設置されている大きなディスプレイや建物内の明かりがほとんど消えていた。もう夜遅いもんねぇ。
蜘蛛はどんどん奥に進み一際大きなタワーのような建物の方へ向かっているみたいだった。その周りを囲うように建てられている歪な形のでかいビル。蜘蛛はそこで止まった。
どうやらあのタワーみたいな建物が国王の城で、ヘタレのポーチが落ちていたのが今蜘蛛がいるビルの屋上なのだろう。
蜘蛛はビルの屋上をピョンピョン撥ね周り、周囲を探してくれているようだ。結構な時間うろうろしていたが、来た道と同じところを戻り始めた。
私達も元の位置に戻る。
しばらくして蜘蛛も戻ってきた。
「ごめん魔王様。ビルの屋上とか結構探してみたんだけど、何も出てこなかったし誰もいなかった。どうにか力になりたかったんだけどなぁ……。」
私とマヌケは顔を見合わせ、頷き合う。
「ううん。蜘龍ちゃんたちは良くやってくれたよ? ちゃんとアンブの力になってくれていたから。謝る事なんて何もないよ。」
「あたし達、もっと頑張ってお2人の力になりたいからさぁ……これからも一緒にいちゃダメかなぁ?」
私はマヌケの手と、蜘蛛の足を持ち港町へ転移する。
「ひゃい?! え?! 何今の?! ここあの港町?! え?! 何で?! どうして?!」
やかましい蜘蛛は放っておいて、異空間へ放り込んでいた他の魔物をポイポイと引っ張り出す。
狐龍「きゃ?!」
壊龍「ぬぉ?!」
狼龍「わぁお!」
鷲龍「おぅ?!」
みんなは突然異空間から出されてオロオロしている。
――スマコ、この子達使い魔にするよ。
《はっはっは。了解だ! 我主。》




