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第27話 望まぬ再会

 それから何件か出店を見て回った。出店を回るたびに、これ食べやぁ~っておじちゃんやおばちゃんがいろいろな食べ物をくれた。いろいろな種類の美味しいものをちょっとずつ食べるのってなんかいいよね。


 しかも皆タダでくれるし、なんか得した気分だ。こんないいところなら毎日来たいくらいだね。


 出店ではマヌケがいろいろと食材を買っていたので、それをどんどん異空間に収納していく。


「アンブの収納は本当に便利だよねぇ! 時間が経っても腐らないから買い溜め出来るのが嬉しい!」


 マヌケもご機嫌だ。しかし目線が完全に主婦だ……。


――多分、料理を作ってくれる気なんだろうなぁ~。何作ってくれるかなぁ~

嬉しいな~。楽しみだなぁ~。


 ご機嫌でそんなことを考えていると、遠くからとても強い魔物達が向かってきていた。私とマヌケは顔を見合わせ、ため息を付いた。

 

 このとても強い魔物達を私達は知っていたからだ。

 すぐに人気のない海岸沿いに移動して、そいつらを待つ。


「あ、魔王様みぃ~~~~け! お~い! みんなぁ~! こっちこっち~!」


 そう言いながらノリノリで一番乗りにやってきたそいつは、身の毛もよだつ程に見た目が恐ろしいデカい蜘蛛の魔物で、確か蜘龍ちりゅうとかいうお調子者だ。


――待って?! こいつたくさんの足をワシャワシャさせながら海の上を走って来たんだけど?! アメンボなの?! 見た目蜘蛛よね?! そういえば忍法に水蜘蛛の術があったわ。蜘蛛は水に浮けるのね。きっとそうなのね。


 勝手にそうと決めつける私。


「わぁ~蜘龍ちりゅうちゃんって海の上走れるんだねぇ!」


 マヌケが私と同じ疑問を蜘龍ちりゅうに投げかける。

 マヌケも気になったようだ。


<なんか知らないけど、あたしは昔から出来たんだよねぇ! あたしの真似した蜘蛛の魔物が水中にブクブク沈んでいった時はお腹抱えて笑った笑った! あはははは。>


――どうやらこいつだけらしい。他の蜘蛛は浮きません。こいつだけ異常です。認識を正さねば……。


 その後、続々と魔物達が現れた。


 壊龍かいりゅう鷲龍しゅうりゅうは空を飛び、狼龍ろうりゅうは水面を瞬時に凍らせながらそこを走り、狐龍こりゅうは青い炎を足に纏い、宙に浮かんだ状態で走ってやって来た。


 もう何も驚くまい……。


「こちらにいらっしゃいましたか、魔王様。」


 正直に言うとさっきまでこいつらのことすっかり忘れていた。というかもう面倒くさいとすら思っている。


「魔王様。極上の食事をご用意させて頂きました。必ずお気に召すと思われます。」


 壊龍かいりゅうがご丁寧にそう告げるが、私は先ほどから美味しいものを食べていたばかりだ。まぁ、美味しいものなからまだ入らなくはないんだけど……。


 一応用意したものを見てみることにした。魔物達は順番に食材アピールをするみたいだ。


「まずはこのボク、狼龍ろうりゅうの番だよ! 極上の食材と言えばもちろんお肉だよね?! そうでしょう?! そういうことでボクが用意したのはこのお肉だよ! これは南のセンテロスに生息する「ヘビ」ってやつのお肉なんだけど、コリコリ食感がたまらない極上の食材らしいよ?! 魔王様、どう?!」


――今、らしいって言った?! 絶対言ったよね?! 引くわ-! てか何あの物体。ヘビって言ったの?! 皮だけ剥いで、形そのままんじゃないの! そしてメチャメチャデカいわ! グロいわ、バカ!


 私は震えながら首を横に振る。


「えぇ……。喜んでくれると思ったのにぃ……。」


 耳としっぽを垂らしてしょんぼりと残念がる狼龍ろうりゅう。犬かこいつは。


「今度はこのオレ、鷲龍しゅりゅうの番だな。オレはこう見えても結構な食通でね。食材にはかなりこだわる方なんだぜ? そんなオレが用意したものに、間違いは無いはずだから安心してくれ! これは、北のテンガラスに生息する「ミミズ」という生物だ。これがなかなかのモチモチでクセになるらしいぞ? さぁ、遠慮せずに食べてくれよ!」


 うじゃうじゃと蠢く巨大な物体……。


――うひゃああああ?! 全身の毛という毛が逆立ち、鳥肌が立ちまくった。全身が硬直状態で、もうぶっ倒れそうよ私。マヌケなんか私にしがみ付き、ギャアギャア泣きながら騒ぎ出してしまった。私も出来るならそうやって泣き叫びたい。


――しかしこいつら……私達をなんだと思っているのかしら。本人たちは至ってマジだから本当にタチが悪いわ。前の魔王ってこんなもの食べてたの?!


 私はもう考えることをやめた。

 そして呆れたように、首を横に振る。


「な、なんだって?! この食材でもダメなのか?! オレはもうショックで生きていけないかもしれん……。」


――メンタル弱っ! 口調は偉そうなのに心はガラスのハートなのね。


「お前たちもう下がれ。全くどいつもこいつもしょうがないやつらだ。魔王様が今何を求めているのかを一番に考えなくては駄目だろうが。今度はこのワレ、壊龍かいりゅうの番だ。>


――おぉ~。さすが仕切っているだけはあるなこの壊龍かいりゅう。これはなかなか期待できそうだ。


「最強であられる魔王様が求めている食材は即ち、世界最強の食材だ! さぁ、魔王様。お召し上がり下さいませ。ワレが用意した食材は、東のリスリルに生息する地上生物上最強と言われる<カエル>という食材です。少々大きすぎまして、全てを持ち帰れなかったので頭だけ落として参りました。お望みでしたらすぐさま追加をお持ちします。」


 ズンッと目の前に巨大なカエルの頭だけが現れ、そのカエルの目がギョロッと下を向き、私と目が合ってしまった。


――んぎゃぁぁあああああ! 怖い怖い怖い怖い怖い! 目ぇ合った?! ねぇ、今目が合ったよね?! 絶対目があったとよね? やばい、変な言い方になってしまった。私は気付いたらそれを黒炎魔法で跡形も無く焼き尽くしていた。


――こいつらはゲテモノしか持ってこれないのか! 今後一切、こいつらに食材を頼むことは絶対にしない。


 横を向くとマヌケは天を見上げ、泡を吹いて固まってしまっていた。


 私は首を横に振る。


「な、なんと……。これでもダメでしたか。ワレは自信をもっておりましたが……。」


 しょんぼりと項垂れる壊龍かいりゅう


「みんな全然ダメねぇ。やっぱり魔王様も女の子なんだから、同じ女の子であるウチの方が気持ちを分かってあげられみたいね。さぁ、魔王様。今度はこのウチ、弧龍こりゅうの番です。これは、西のハピシスにある植物の「一種」なのですが、それをいろいろな植物と一緒にサラダにしてみましたよ! そしてこの植物は凄~く美容にいいんですよ?>


――おぉ。見た目はあれだけど、さすが女の子の弧龍こりゅう。美容に気を使ってサラダをチョイスするなんて、なかなかだ。


 私はそのサラダを見ようと近づいた瞬間、鼻から脳天にかけて強烈な刺激臭が襲った。そのあまり強烈な臭さに鼻を押さえてゴロゴロと転がり悶絶する。


「あ、あらら?! 魔王様?! な、何で?! ちょっと大丈夫?!」


 おろおろしながらサラダを持ったまま近寄ってくる弧龍こりゅう。私は鼻をつまみながら、シッシッとあっち行けの合図をする。


 すると壊龍かいりゅうたちと同じように、しょんぼりと項垂れる狐龍こりゅう


――こいつらはマジでダメなやつだ。


 凶悪の魔物4匹が集まって項垂れている姿はなんともシュールだ。


 そして最後に残っているのはオドオドしながら足をワシャワシャさせているこの蜘龍ちりゅうだけ……。

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