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第25話 田舎の港町

 闇分身で出来た4つの私は忍者のように木々を飛び回り、順調に攻撃を仕掛けていた。途中で魔物と間違って木や石に向かって攻撃しているおバカな私もいたけど、魔物の数は結構減っていた。


 これはまぁ、慣れれば結構楽かもしんない。だってわざわざ自分が動かなくても安全に魔物を倒せるのは嬉しいね。そんなことを考えていたら、いきなり分身体が消滅した。


《時間切れだ。最初にしてはまぁまぁだな。ほとんど私が動かしてけど。》


――そ、それは言わない約束でしょ?!


 しかし10分というのはあっという間だ。まだそれなりに魔物残っている。人間、何かに集中すると時間が早く感じるもんだね。


「アンブお疲れ様。ここまで数を減らしてくれたから大丈夫! 後はアタシがやるから休んでていいよ!」


 お言葉に甘えよう。まだ少し酔いが残っていて気持ち悪いし。二日酔いのおじさんってこんな感じなのかな?


 マヌケは2つの拳銃を構えたかと思うと、突然四方八方にバンバン撃ちまくった。

正直こいつの気でも狂ったんじゃないかと思っていた。


「ふぅ! はい、お~わりっ!」


 と銃口から出てもいない煙を吹き、そう言った。アイレンズ上から魔物の反応が次々に消えて行く。ズームして見てみると、残りの魔物全てが一撃で撃ち抜かれていた。


――うそ~?! こっから狙い撃ったの?! 後ろなんて見向きもしてないのに撃ってたよ?!


《マヌケ様は敵の位置をセンサーで把握してるんだよ。そこから敵の動きとか、風向きや障害物の位置なんかを瞬時に計算して、最適な射撃位置を割り出してる。主のスキル感知と同じような感じだな。》


――流石は起動兵器……。恐るべし。


「さて、行こうか!」


 私はまた神成カミオリモードを解除し、マヌケの腕にしがみ付いた。

だって嫌いなんだもん、あの黒い翼。

 それにマヌケもしがみ付かれていた方が、なんだか嬉しそうだし。


 マヌケはそのまま海の上をもの凄いスピードで飛んでいく。時折、水面近くを飛んでくれたので、指を水面に当てて遊んでみる。磯の香りがしていたので、アイレンズで見てみると地球と同じ海と言う名前と成分が表示されたので、少し舐めてみた。するとやっぱり地球の海と同じでしょっぱい味がした。


 しばらく飛んでいると遠くの方に大陸が見え始め、更に進むと陸地の全貌が明らかになっていった。


「あそこがアタシの育った港町だよ!」


 とマヌケが指さした町を見る。町を囲むように防波堤が張り巡らされ、その奥には無数の漁船……? ではなく、小さな軍艦のような姿の船が並んでいた。


 そして、防波堤の内側は海の透明度が高く、まるで観光地のようなとても奇麗な海だった。船着き場の奥には市場のように出店が並んでおり、人が行き来しているのが見える。更にその奥は高台となっていて、可愛い三角屋根の家が斜面に並んでいた。


 静かな田舎の港町って感じで、個人的な好きな町だった。


 それよりも気になるのがあの軍艦。船上に砲台が無数に付いてるんだけど、完全に風景とマッチしていない。


 私はマヌケの袖をクイクイっと引っ張り、軍艦を指さす。


「ん? あれは漁船だよ? あの船でお魚を取りに行くの。」


――えぇ~。あれは漁船らしい。


 てっきり戦争でもやる為のものかと心配したが、違っていて安心した。しかし、なんであんな物騒なものが付いているんだろう。


「砲台……。」


「あの砲台? あれは、漁をしている時に時々魔物が出ることがあるから、その時に身を守るためのものだよ!」


 なるほど、確かにここは地球ではなかった。普通に魔物というものが存在し、常に危険と隣り合わせなのだ。


 更にあの船のエンジンや家の明かりなど全て魔動力によって動いているらしい。

本当にこの星は魔動力によって成り立っているようだ。地球でいうところの電気みたいなもんだね。


 私達は船着き場付近に降りた。そこから歩いていると、船から魚を下ろしている人や仕分け作業を行っている人達がいた。その中の何人かがマヌケに気付いて慌てて駆け寄って来た。私はすぐにマヌケの後ろに隠れる。


「599号なのかい?! こりゃあ久しぶりだぁ。元気にしていたかい? 迷宮はどうしたんだい?」


「465号さん。お久しぶりです。えへへへ。元気ですよ。今まで迷宮へ入ってたんですけど、ちょっと別のことでいろいろありまして……。今はそっちを解決しないといけないんです。」


「そうなのかい。君にはつらい思いばかりをさせてしまっているねぇ。ゆっくりしていくといい。」


「気にしないで下さいよ! ありがとうございます。」


「おや? 599号ちゃん?! 無事で良かったよぉ。後ろ子は友達かい? 見慣れない服を着ているねぇ。」


「732号さん、ありがとうございます。この子はアタシの大事な友達なんですよぉ。」


「そうなのかい。あんたに友達が出来るなんてあたしゃ涙が出そうだよ。ここにはあんた以外に若い子はいなかったからねぇ。」


「えへへ。私も凄く嬉しいんですぅ。ちょっと無口で人見知りが激しいんですが、そこもまた可愛くて。」


「そうなんだね。これからも599号ちゃんと仲良くしてあげてね?」


 私は突然話しかけれらことでビクッとなりながらも、コクンと首を縦に振る。


「よろしくね。あんたより小さい子みたいだからしっかり面倒みてあげるんだよ?」


「あははは~。実は見た目ほど小さくはないんですがぁ。まぁとりあえず私達、家に帰りますね。それでは、また。」


「あぁ、またね。」


 慣れているとはいえ、やっぱり子供に見られるのはなんか腹が立つよ。それもこれもこのマヌケの大人な顔とナイスな体が……。心の中で愚痴ってもしょうがないので、とりあえずマヌケの横腹のお肉をギュッとつまんでやった。


「いたたたた。アンブ痛いよぉ。」


 と涙目で訴えてくるが、無視。

 私達はそれからマヌケの家がある高台まで歩いて移動した。


 マヌケの家は周りの家とは離れており、そこは木々が生い茂っているのもあって

とても目立たない位置に建っていた。


 そしてその家は他の家よりもかなり小さく、古かった。


「こんなところでごめんね。私は勇者候補だったから家にいることがほとんどなくて、ここは馬小屋を少し改造しただけの家なの。だからあんまり帰ってきた感じがしなくてね。」


 そうなんだね。勇者候補なんて呼ばれて、小さい時から一人っきりで頑張ってきたマヌケはとても寂しかったに違いない。仮に私がその立場だったら、絶対に挫けていたと思う。


「……実は、アンブとヘタレとあのログハウスで過ごした日々がアタシにとっては凄く楽しい日々だったの。だから、アンブが作ってくれたあのログハウスがアタシにとっては自分の家って感じがしていてね。正直に言うと、あの家に帰りたいなぁなんて思ってる。」


 そう言ってもらえるのは私も凄く嬉しい。簡単に作っちゃったけど、唯一安心できる場所だったし、それに私にとっても、あの場所での生活は凄く楽しかった。


《あの家、ここに持ってくりゃ~いいじゃんよ。》


「えぇ?! そんなこと出来るの?!」


《当然。》


 当たり前とばかりに平然とそう告げるスマコの言葉にマヌケが喜んでる。

 話を聞こうじゃないか悪相棒よ。

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