第24話 闇分身の術!
マヌケにしがみ付いて迷宮の入り口付近まで来た私達。
――ふぉぇえ……たっけぇぇ~。
その入り口は頭上何キロあるか分からない程高い位置に出口があった。そこから結構強めの風が入って来ている。
「凄く久しぶりに地上に出るかもぉ。ちょっとワクワクするねぇ。」
私も地上に出るのは凄くワクワクしていた。この世界に来てからというもの、この迷宮内で魔物と戯れながら生活をしてきた。
しかし、初めてこの世界の人間の暮らしを見ることが出来るのだ。地球と生活がどのように違うのか。地球と比べてどのくらい発展しているのか。
そして何より、美味しいものがあるのか…まぁ、ほとんどがこれに興味を示しているけど。
マヌケはその入り口目掛けて空を上昇していく。それに伴って向かい風がどんどん強くなっていく。
「アンブ、風圧で顔が大変なことになっているけど大丈夫?」
「……うん。」
と可愛い顔が台無しなマヌケさんが私の心配をしてくる。私は内心メチャメチャ面白くて笑っているんだけど、きっと私の残念な顔も、もっと残念な感じになっているはずだ。そう思うと人の事をバカに出来ないなと反省した。
そんな酷い顔のまま私達は迷宮の入り口へと辿り着いた。入り口を抜けたその先はもう風は吹いておらず、眩い光に一瞬目が眩んだが次第に目が慣れてきて、その風景を目の当たりにした。
青い空と白い雲、そして眩い光を放っている太陽がそこにはあった。私達が通ってきた迷宮の入り口は、大きな岩山の頂上にある穴だった。その岩山の麓には、緑の木々や植物類が生えており、その周りを海が囲っていた。ここは地球で言う、小さな無人島みたいな場所のようだ。海は遠くの地平線まで続いている。
この風景は、ここが地球とは違う星であることを忘れてしまうくらいにとても良く似ていて、少しだけ懐かしくも感じた。
しかし、マヌケはよくあの風が凄い入り口を降りて来られたよね~。なんてそんなことを考えていたら、
「いや~懐かしいな~。初めて来たときはあの風圧で全然上手く飛べなくてそのまま吸い込まれちゃって落ちたんだよね~。あぁ、これ死ぬな~なんて思ってたら、たまたま下に魔物さんがいたの! その魔物さんがクッションになってくれてアタシは助かったんだけど、そのまま気を失ってたんだよ~。目が覚めた時は魔物の山積み死体の上だったから、また気絶するかと思ったけどねぇ~。あはは~。」
――いやいやいや、笑えねぇ~。それ魔物いなかったら間違いなく死んでるやつだからそれ!
ちょっとその魔物さんたちが気の毒にも感じるけど、まぁ結果的にマヌケを守ってくれたことは、感謝しなきゃね。
「さてさて、アタシの住んでた町はここからまだ少し通いんだけど、外に出てる魔物の数が多い感じがするんだよね。放っておいてもある程度は町の防衛システムで駆除されるんだけど、アタシの町の防衛システムはそこまで発達していないから、なるべく危険を減らしておきたいの。ダメかなぁ?」
なるほど、確かに感知で見てみるとそれなりに魔物の数が多い気がする。単純にあの入り口から出てきているだけではないようだ。海の中にも魚とは違うものもいるようだし。ここで魔物の数を減らしておけば、町の危険が減るってことか……。
――よし、マヌケの為にやろうか!
《お? やる気になったか? マヌケ様、主が珍しくやる気だぜ?》
「ありがとう! 助かるよ!」
――折角なので、いろいろと試してみようっと。
私はいつも通り忍者の構えから神成モードを発動し、そのまま魔王の力で暗黒魔法を発動した。すると、目の前に漆黒の霧がモヤモヤと出現する。
それをスマコにも手伝ってもらいながら私の分身体へと変化させていく。やがて、黒い霧状の闇の影からどんどん私の身体の形が作られていき、それは完全な私の姿へと変わった。
――顔怖いよ! あっ、いつも通りか……。えっと~闇から作った分身だから、闇分身!
「暗遁、闇分身の術」。
「わぁ~すご~ぃ! アンブが2人になったぁ!」
《暗遁、闇分身の術かぁ。最初にしてはまぁまぁの出来だな。》
なんか凄い不思議な感覚がする。目の前には自分と同じ不愛想な顔をした姿、私がこう動けと思うだけでその通りに動いてくれる。
《主、前にも言ったけど今は同時に4体までしか作れないからな? それに、主の力の半分くらいしか力は出せない上に、10分経つと消えるからな? まぁ、それでもこの辺りの雑魚なら何も問題ないけどな。》
私は一気に残り3体を作成してみた。
――うん、さすがにキモいわ。
自分が4人もいると流石に気味が悪いし、4つの情報を頭で処理するのに凄く酔いそうになる。車酔いしたように視界がグルグル回って吐き気がしてくる。
――スマコ、ヘルプ……。
私はスマコに情報処理を手伝ってもらいながら、4つの身体をなんとかそれぞれに動かし始めた。4つの私はバラバラに別れ、地上にいる魔物に向かって攻撃を始める。
――私は闇分身1号。
私は本体の指示の元、火ザルや細ゴリなどの雑魚に向かって突撃中である。とても不思議な感覚だ。もちろん本体が全てであり、その考え方も動きも本体が考えているけど、別の自分として存在しているみたいな感じだ。
まだ本体は私の操作に慣れていないので、動きがとても乱雑だ。それでも、お得意の忍殺、龍雷拳や蹴雷拳で火ザルや細ゴリ共を片づけて行く。
――私は闇分身2号。
こちらにはあの魔物化した鹿が草をムシャムシャ食べていた。お食事のところ申し訳ないけど、消えてもらおう。
私が近づくとやはり鼻が良いようで、すぐに気が付かれた。しかし、瞬時に懐に入り込み、桜雷拳を放つ。
しばらくして鹿の体内内部で破壊が始まり、やがて破裂したようにパリンと消えて無くなった。
――私は闇分身3号。
私は火ザル4体と対峙中だ。本体の操作がまだ下手なので、1号や2号と時々動きがダブってしまう時がある。何も無いところに龍雷拳打つんじゃないよ全く……。
それでも私は1匹ずつ確実に火ザルを始末していった。
――私は闇分身4号。
私は一体何と戦わされているのだろうか。さっきから目の前の木や岩に向かって龍雷拳や桜雷拳を放っている私。本体、操作下手過ぎだろ。途中からほとんどスマコが操作してるじゃんよ。全く……。
――私は本体。
ヤバい、これ酔う。気持ち悪い。吐く。以上。
そんな自分で悪戦苦闘しながらも幸い魔物の強さもたいしたことなかったので、数を順調に減らしていった。




