第20話 神機の力
アタシはアンブの攻撃により、コアギアを破壊されて後ろへ吹き飛ばされている。アンブは尚も倒れているアタシに向かって追撃を行おうとしたが、突然動きを止めた。
先ほどからこちらの様子を伺っていた魔物達が一斉にアンブへ攻撃をしかけたのだ。
アンブは向かってきた魔物達を全て瞬殺していく。魔物は1匹1匹が先ほどのオニグマくらいの強さはあるが、それがあっさりと倒されていく。
アタシはその間に魔動力を制御しようとするが、コアギアが壊れてしまっているので力の制御を全く受け付けずに暴走する一方だった。
それでも何とか魔動力の一部を壊れた杖の中にまとめることが出来た。アタシはそれを炎に変換させて、超特大の火炎魔法を放った。
それはアンブに向けてではなく、周りの魔物に向けてだ。
アンブはアタシの攻撃に気が付くと、ピタリとその場で動きを止めた。
あたしの攻撃が、アンブの目の前の魔物を焼き尽くしていく。それにより周りの魔物達も動きを止めた。
「アンブ、相手はアタシだよ?」
笑顔でアタシはそう言った。アンブはこちらを見てニヤリとし、アタシに向かって突進してきた。
アタシは魔力障壁を何枚も展開する。しかし、当然の如くアンブはそれを簡単に破壊してしまう。
最後の障壁を破壊されたところで、アタシは全力の火炎魔法を放った。その瞬間完全に杖のギアがボロボロに崩れ落ちた。
アタシの最後の攻撃だった。
アンブはそれを片手で受け止めて攻撃を握り潰し、そのままアタシを殴り付けようとした。
拳がアタシに当たるその瞬間アンブの顔が歪み、必死の抵抗を見せたような気がした。
しかし勢いが弱まった拳でも、あたしには致命傷ほどの重傷を負わせる。
それでも、アタシは嬉しかった。アンブはまだ完全に支配されていないと分かったから。それだけでもアタシがまだ立ち上がる理由には十分すぎた。
立ち上がったアタシを見て、アンブはまた殴りかかってくる。それをしっかりと受け止める。
――優しく、そして大切に。
やがてアンブの目からは涙が流れ、首を横に振っている。それとは対照的に攻撃は止まない。私はそれでもしっかりと全ての攻撃を受け止める。
「ア……ンブ……負け……な……いで」
アタシの必死の声かけにアンブが頭を押さえ苦しそうに叫び声をあげている。
もうあまり声も出ない。でもアンブを守りたい気持ちだけがアタシを立ち上がらせる。やがてアンブからの攻撃が止んだ。
――アタシはあなたを守りたい。
「あなたに関係ありますの?」
――あるに決まっているじゃない。
「知り合って間もない者の為に命を捨てるのですか?」
――たとえ一緒に過ごした時間は短くても、たとえアンブがあたしの為に生きていなくてもその相手が命を懸けて守りたいものを、アタシは全力で守りたい。
「……。」
アンブの動きが止まったことをいいことに、まわりの魔物達が一斉に攻撃をしかけてきた。その全ての攻撃がアンブに向けられている。
咄嗟にアンブをしっかりと抱きしめて、絶対に守ると心に誓う。
「……我は神機。
全ての機械は機械にあらず。
それは人の心の具現なり。
示してみせよ。汝の心。」
アタシの頭の中でそう聞こえた気がした。すると、外に溢れて漏れ出していた魔動力が急に纏まり出してアタシの全身を優しく包み込んでいった。
アンブの攻撃により壊れていた杖のギアメタルが形を変えて二丁拳銃の姿へとなり、それに応じるように全身に新しいギアメタルが装備されていく。
背中には機械式の美しい翼が生え、両腰には拳銃をしまうホルスター、身体と腕や足には強靭な鎧が装備される。
アタシはアンブを抱きしめたまま機械式の翼で優しく包み込んだ。その美しい翼は魔物の攻撃を全て防いだ。
魔物の攻撃で爆発と煙が立ち込めるが、それを翼で一気に薙ぎ払う。そして、アタシはアンブから離れ、1人空へ羽ばたく。
「神機モードフル装備。」
アタシの全身にレーザー砲やミサイル砲が具現化する。更に二丁拳銃があたしの腕を覆い尽くすように大きなレーザー砲へと姿を変え、全身が完全兵器と化した。それはまさに高速で移動する起動要塞そのものの姿であった。
アタシの目を覆うように現れたモニターディスプレイに魔物達の位置が360度の全方位で表示されている。その全てをロックオンして、引き金を引いた。
「バーストブレイカー!」
全身の武装から全方位に向けてレーザーやミサイルなどが一斉に放射された。あちこちで大爆発が起き、そのエリアにいた魔物達は全て消滅してしまった。
アタシはフル装備を解除し、アンブを見る。アンブもこちらを眺め、少し微笑んでいるかのように見えた。アンブは黒い翼で飛び上がり同じ高さまで上がってきた。
そのままアタシに向けて、黒炎魔法を放つ。アタシは炎の魔動力を拳銃に込めて撃つ。放たれた拳銃の炎の弾丸と黒炎魔法が衝突し、凄まじい衝撃波が広がる。
アンブは転移魔法で瞬時にアタシの背後を取り、手刀で私を貫こうと迫る。アタシは機械式の腕を具現化しアンブの手刀を受け止めて、そのまま至近距離でミサイルを撃つ。大きな爆発が起こったが、アンブは転移で回避していた。
お互い会話はしていないが、拳を合わせることによって自然と思いを感じることが出来るようになっていた。
アンブのさっきまでの拳は、悲しくて辛くて怖くてどうしようもない思いが伝わってきていたけれど、今は凄く安心している。
相変わらず攻撃はアタシを殺そうとするものだけれど、それをしたところでアタシが死なないのもわかっている。心の壁を越えて、アンブが本音を伝えてくれる。
それは全てが全力の殺人攻撃だけれど、アタシはそれをしっかり受け止めながら拳で語りかける。少しの間その攻防が続けられたが、遂にアンブの力が底を尽いた。
「マ……ヌケ。」
アンブは全ての力を使い果たし、目を閉じてふらっと落下していく。あたしはアンブを空中で抱き抱え、そのまま一緒に地上へ降りた。
アンブの姿はもとの可愛い状態へ戻っており、その顔はとても安らかな表情をしていた。
その直後、とんでもなく強い魔物がこちらへ向かって来ているのがレーダーに映った。アタシはそこに向けて銃を構える。
「お、お待ち下さい!」
「……誰?」
5匹は私達を囲うように、平伏し敵意がないことを示す。
「我らはこの迷宮を管理しているもの。敵意はありません。」
私は銃を下ろした。
「そちらのお方から魔王様のお力を感じましたので参上致しました。」
「……魔王? もしかしてアンブが?」
「はい。あの力はまさしく魔王様のお力。我らはこの力をお持ちになられる方に生涯をかけて従う宿命にございます。」
「う~ん。まぁ敵じゃないことは分かったよ。後はアンブが起きてから話してみてくれる?多分、喋ってくれないと思うけど。」
「はっ。仰せのままに。」
5匹は一瞬で姿を消した。
アタシはアンブを抱えて空を飛び、拠点エリアのログハウスまで戻った。




