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第16話 強く生きよう

 私たちは、それから何日か(正確には何度か寝て起きてを繰り返しながら)そのあたりのエリアに出向いてはその辺りを探索したり、魔物を討伐したりしながらそれぞれが強くなるための修行をしていた。


 私はそのついでに、ヘタレの記憶に関する情報を探していたが、この辺りでは何も見つからなかった。


「この大きな魔物化したニワトリさんにも、苦戦することが無くなってきたねぇ。」


「そうだな! 最初は3人でやっと倒せるくらいだったのにな!」


「それが今じゃ、1人でも余裕で倒せるくらいにはなれたもんねぇ。スマコに感謝だね~。」


 確かにこの3人はかなり力を付けてきている。その辺の弱い魔物にはもう負けないだろう。これもほとんどスマコが皆にアドバイスしてくれたおかげだ。


――私ぃ~? なんもしてないけどぉ~? なんか文句ある?


 マヌケの予想では、この辺りはまだ上層に近い中層だろうということだ。下層にはこの辺りとは違ってもっと強い魔物がウジャウジャいるらしい。


 私は暇を持て余して……じゃなくて、忙しい修行の合間を見つけては下層方面へ向かうと思われる急な下り坂になっている通路を見つけていた。そして今まさに皆でその通路を進み、下層方面へ向けて歩き出していた。


 私はアイレンズを起動して感知で立体映像のマッピングをしていく。だいぶスキル感知も使いこなせてきているみたいだ。


 すると、もう少し先へ行ったところに魔物の生体反応があった。敵はそこまで強くなさそうだけど、鹿やニワトリよりは全然強い。ここは無難に皆で協力しながら倒した方が良さそうだ。


「……敵。」


 緊張しながら細心の注意を払いつつ歩いていた皆は私が急に声を出したせいでビックリして飛び上がってしまった。


「お前こんな時だけ喋んなよぉ~マジでビックリするだろうが!」


――怒られた……。もう一生喋らん。


《主……全くあなたはって人は……。》


《皆さん、このすぐ先に通路の出口がありますが、そこに複数の敵がいます。ここは協力して倒しましょう。ヘタレさんは危険なので異空間へ。》


「は、はい。皆、無理しちゃだめだよ?」


「おう! 任せとけ! これでも俺ら強くなってんだぜ!」


「そうだよヘタレ。安全になったらまた後で会おうね!」


「うん。気を付けて。」


 そう言うヘタレを異空間へ入れてあげた。


――さて、やりますか。見た目はオオカミが人型になった感じかな?


 通路近くで何かを食べているような様子の2匹。幸い食べるのに夢中でこちらに気付いていないようだ。更に他の魔物は今のところいない。


――倒すなら今だね。スマコ、この魔物は?


《名前、コボルト。鋭い嗅覚と俊敏な動きにより獲物を一撃で殺します。また騙し討ちが得意なようです。》


 スマコが解析する。


――ん? 嗅覚が強くて騙し討ち? やばい!


 そう思った時にはもう犬が近くまで接近しており、鋭い爪で先導していたカスの首筋を狙っていた。


 私達は騙されていた。とっくに私達の存在に気付いていた犬は、何かに夢中になっているフリをして私達をおびき出し、油断して近づいたところを殺す予定だったのだ。


 私は瞬時に神成カミナリモードを纏い、カスの頭を押さえて爪を躱し、蹴雷拳シュウライケンで犬を吹き飛ばした。しかし咄嗟の事で体制が悪く、腰の入った蹴りが出せていないので致命傷にはなっていない。


 もう一匹が間髪入れずに私に攻撃してきたが、ギアを発動したオスがそれをガードして弾く。その隙にマヌケもギアを発動して火炎魔法フレイムバレットで攻撃した。それに怯んだところを、ギアを発動したカスが急加速してそのまま剣を振り下ろす。


 カスの剣は見事に犬の首を斬り落とした。


 同時に私が蹴り飛ばしていた犬が、今度はヘタレに向かって後ろから牙を振るうが、それをオスがきっちりガードする。犬の勢いを増した攻撃だったが、ギアのフル開放により背中の鎧から出た突起物が地面に刺さってそれが支えとなり、しっかりと攻撃を防御した。今のオスの防御はセツとの修行の成果だった。


 マヌケは杖のギルを構え、水魔法ウォーターカッターを発動する。その攻撃で犬の左腕が飛んだ。


 私は瞬時に怯んだ犬の懐に入り込み、とどめの龍雷拳リュウライケンで始末した。


 パラパラと2匹のイヌが消えて無くなった。


 ホッと一安心。始めは危なかったけど、4人で戦うと戦闘が非常に安定する。


「いきなりだったから心臓飛び出るかと思ったよぉ。」


「あ、ありがとな。また助けられちまった。」


 何故か顔を赤らめながら私にお礼を言うカス。


――何故赤くなる? そしてなぜマヌケがカスを睨む?


「やっぱり皆レベル上がっているみたいだね。少し前のアタシ達ならあんな強敵どうしようも無かったのにねぇ。」


「確かにね。僕達はアンブに会っていなかったこんな場所まで来ることも出来なかっただろうしねぇ。」


 そんなこと言わないでほしい。私は何もしてないけど……照れてしまうよぉ。


 しかし気を抜くにはまだ早い。ここにはまだ多くの魔物の気配がする。ここを通過するには戦いは避けて通れそうにないので、少しずつ数を減らしながら進んでいく方がいいかもしれない。この少し先には火ザル程度の魔物が30匹程いるのが感知でわかる。


 スマコが4人にも状況を伝える。すると3人は私の肩に手を置き、ここは任せてほしいと言ってきた。何か作戦があるのだろうか。私は後方にいて、必要に応じて援護してほしいそうだ。

 

 真剣な表情で3人がそういうので、私は3人を信じてみることにした。


――スマコ、あの敵は?


《名前、インプ。子悪魔妖精の魔物であり、小規模な暗黒魔法を使えます。性格はずる賢く、敵を罠にかけるのが好きなようです。》


 スマコが解析を行い、それを同時に3人にも伝える。


 カスはギアのジェットで一気に距離を詰め、その勢いのまま5匹集まっていたところを纏めて一撃で瞬殺する。

 それに気付いた他の小悪魔が一斉に暗黒魔法の魔力弾を発射する。しかし、それを後ろへジェット加速して回避する。

 その後を小悪魔が追って来るが、それに合わせて放たれたマヌケの火炎魔法フレイムバレットが小悪魔を消滅させていく。

 別の小悪魔は、オスに向けて黒い魔力弾を一斉に放つが、それをしっかりガードした後に、そのまま小悪魔に向かって走り出し、盾を斧に変形させて斬り伏せた。


 気付けば小悪魔たちは少しずつ数を削られていき、残り数匹になっていた。尚その数匹も3人の連携により自然と一箇所に集められていた。

 そこに最大火力の火炎魔法エクスプロードをマヌケが放つ。それにより残りの小悪魔は全て爆発の中で焼きつくされてしまった。


――みんな凄いよ!


 レベルアップしたからなのか、なんだか動きも早いし攻撃も強くなっている。3人は私の元に来て、ハイタッチをしていく。私は笑顔でハイタッチしている3人を見ながら本当に頼もしく思えた。


 しかし、安心したのも束の間、突然もの凄く強い魔物がこちらに向かって来ていることアイレンズが感知した。


 これはおそらくあのサメよりも強い!


 私は逃げようと考えるがもう間に合いそうにない。

 

 ゴオォンという音と共にそれは姿を現した。

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