第15話 ハーレムの先に
マヌケの水魔法と炎魔法でお湯を張っていたお風呂場に来た私達は、脱衣場所で服を脱いでお湯に入った。因みに私の変化服は一瞬で脱衣が可能なので2人とも驚いていた。
変化服は脱ぐと掌サイズの四角いキューブになる。そのキューブ状態になると自動で洗濯乾燥を始めるが、それも1分程で完了してしまう優れもの。お母さんの発明はこういった気の利いたところまで考えられてるから好きだ。
そしてヘアピンとマフラーを取り外した。ヘタレにもらったこのマフラーは普通のマフラーだからね。変化服を脱ぐと、裸にマフラーという変な格好になってしまうのだ。それでもこのマフラーは私にとって大事なものだからね。
「気持ちいい! 私こんなに広いお風呂に入ったの生まれて初めてだよぉ。村ではドラム缶の中に水を張って、炎魔法で温めて入っていたからねぇ。」
――それは五右衛門風呂とかいう……。そんな古い文化があったのか。
「本当に気持ちいい! 私は初めてのはずなのに、凄く懐かしい感じがするよぉ。」
「……。」
最初は大きなお鍋だとか散々バカにしていたくせに……。まぁ2人とも満足しているようで良かった。
――ふふふ、でもやっぱり日本人はお風呂に限るよねぇ。久しぶりに生き返るよぉ~。
――しかしなんだ……。ヘタレとマヌケのスタイルの良さが半端ではない。その間に挟まれる私は惨めでしょうがないんだけど……。
次々に2人のスタイルがアイレンズから数値化されていく。
――同い年なのになんだこの膨らみの差は!
2人とも一般的に見ても大きめだ、対して私は一般的には「少しだけ」小さめだ。
――少しだよ?! 一応あるよ?! 本当だよ?!
だからなのか、かなり差があるように思う。
「ヘタレのスタイル凄くいいよねぇ。顔も可愛いし羨ましいなぁ。」
「マヌケの方こそ、大きくて魅力的で柔らかそうで羨ましいよぉ。」
――なんだこいつら。私に喧嘩売っているのか? むかつくので水面を口でブクブクしてみる。
でもヘタレがだいぶいつもの調子に戻ってきていたので、内心凄く嬉しかった。
「でもやっぱり……」
「うん。やっぱそうだよね……」
2人はお互いに頷き合い、私を見る。
――ふぇっ?! な、何?!
「アンブちゃんが一番だよねぇ」
ヘタレがそういうとマヌケも頷いた。
――だから何が?!
すると、2人が私の両端にぴったりとくっつき、私の小さきものに手を当てる。
――ひゃッ?! ちょ、ちょ、ちょっとタンマ! マジでタンマ! なんか……ちょっとヤバいから!
「あとはここだけだね!」
「ふふふ! だね!」
――ひぃぃぃッ?! も、揉むなぁぁあ! や、やめてぇ~~。
私は無表情のままで、バタバタと必死の抵抗をみせる。そんな様子にケラケラと笑う2人。
そんな楽しそうな声に顔を赤くしながら、ちゃっかりと聞く耳を立てている思春期真っただ中の男2人。
私はアイレンズで監視していたのですぐにわかる。心臓の鼓動も早くなり、体温も少し上がっている。全く男子は……。
まぁ、もし覗こうなどした場合、3人で処刑する予定だったのだ。
お風呂を上がると、洗濯済みのキューブを起動して寝間着姿へと一瞬で変身した。その後はゆっくりログハウスの中で眠ることにした。ここは昼も夜も関係なく明るいがログハウスの木で出来た窓を閉じるとある程度暗くなる。しかも、かなり丈夫に作ったので万が一何かあっても大丈夫だと思う。
私はスマコに感知を任せ、少し眠ることにした。
――しかし、この2人くっ付き過ぎなんだけど?!
私は無表情で眠たそうな2人を見る。
「アンブちゃん、どうしたの? 寒いの?」
「え?! 寒いの? ならもっとくっ付くね」
「あ、ずるい! なら私もぉ。」
――いやいやいや、眠れねぇ。2人とも顔が近いし!
絶世の美女2人が両腕にしがみ付いている。私が女でなかったらハーレム状態なんだろうね。
でも確かに温かくて柔らかくて気持ちがいい。人のぬくもりってこんなに安心できるんだね。
そんなことを考えていたら、気付いたらもう2人とも可愛くスヤスヤと寝息を立てている。
私は暖かく穏やかな気持ちで、眠りについた。
*****
目が覚めた。
両方の頬っぺたになんか柔らかい感触が……。
――えぇぇ?! なんで2人の唇が私の頬に……。
しかも2人の服がはだけた状態で眠っている。
――何があった?!
《覚えていらっしゃらないのですか?》
――えっ……全く?
「ア、アンブ……そこは……」
「そ、それは、ダメ……凄い……」
――スマコ、なんかあった?
《私の口からは……言えません。》
どうやら何かがあったようだ。
――あの……嫌がってなかった?
《最初はビックリしておられましたが、むしろ喜んでおられたように思います。正直この私でも、主があそこまで寝相が悪いとは今まで知りませんでした。》
私はもう考えることをやめた。私は起き上がり、アイレンズを起動して感知を全開にする。何も危険はないようだ。ログハウスの前では男の子2人が、焚火をしていた。どうやら交替で見張りをやってくれていたようだ。
私がスマコに感知を任せているので、その必要は無いのだがあの2人なりに私達を守ろうとしてくれているのだろう。その思いは認めるべきだ。
さて、起きたらやっぱりお腹が減った。
私まだ寝ている2人をそのままにメリドの実を取りに来た。しかし、男の子2人は全く私の存在に気付かないんだなぁ。なんか少し寂しい。ムカつくので後ろから脅かしてやろうかと思ったが、それはやめておいた。
メリドの実を数10個程異空間へ放り込んで、私は家に戻る。
すると上の2人も起きてきた。
私の顔を見るなり、2人して顔を真っ赤にしていたが私が首を傾げていたので、私は覚えていないと悟ったのか安心していたようだ。
まぁ、何をしたかは本当に覚えてないんだけどね。
さて、皆でメリドの実を食べた後は、少し違うエリアに向かってみることにした。ここに来て、皆は強くなってきているしヘタレがこの迷宮にいたのなら、何らかの手掛かりがあるかもしれないと思ったからだ。出来ればヘタレの記憶をもとに戻してあげたい。
今までの私との思い出を忘れてしまうなんて、やっぱり悲しいもん。
もちろん今の時間も大事だけど、積み上げてきた友情というのは本当に大事なものだと私は思う。