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第12話 お近づきの印に

 拠点に戻った私は、異空間に入っていた4人を出す。


「きゃッ! えぇ?! ここはどこ?」


「うぉッ! あ、カボチャ持ってきちまった!」


「おぉ! やっぱりまた助けてくれたんだね!」


「あ、あの……ありがとう。」


 最後の方に放り込んだ盾を持った子はある程度状況を理解してくれたみたいだ。私は流石に力を使いすぎたみたいで、バタンとその場に倒れてしまった。


「え?! どうしたの?! 大丈夫?!」


 ヘタレと魔女っ娘に心配されながら私の意識は無くなった。



*****


 何やらいい匂いがする。


 目の前には美味しそうなクレープが並んでいる。私はそれを一目散に食べ始めた。しかしいくら食べてもお腹がいっぱいにならない。


「ふ、ふぇ~ん! 手が……手がぁあ!」


 遠くで悲鳴が聞こえる。


*****


 ここで私は目を覚ました。

 目の前には涙目で顔を赤くしている魔女っ娘。

 私の口の中には魔女っ娘の手。


 ……とりあえずハムハムしてみた。


「もうやめてぇ~! 許してぇ~! 頬っぺた触ったの謝るからぁ~!」


 と泣きながら魔女っ娘が叫ぶので、開放してあげた。てか頬っぺた触ってたの?


「あんまり寝顔が可愛かったから、その……つい。もう大丈夫? どこか具合悪いところない?」


 私は首を縦に振った。


「良かったぁ。いきなり倒れたから心配しちゃったよぉ。」


「あ、あの……助けてくれて本当にありがとう。」


 ヘタレが申し訳なさそうにお礼を言うので、私はコクンと首を縦に振った。


《主が気を失っている間、この2人が看病をしてくれていました。》


――そっかぁ……私あの後倒れたんだ。


 魔女っ娘も私を心配してくれているし、この子も優しくていい子なんだね。


《時より、何やら顔を赤くしながら頬を触ったりしておりましたが……。》


――ふぇぇ?! 頬っぺたを触る趣味でもあるのか……。まぁ、いいや。身体を触るのは以前のヘタレも同じだったし。


 それよりも、先ほどから私の嗅覚が美味しそうな匂いにビンビン反応している。


「ご飯……。」


 自然と言葉が出てしまった。


「あはは、お腹すいてたんだね。ついさっき作ったばかりなんだよ! とりあえずご飯食べよっか。」


 そういう魔女っ娘とヘタレと3人で移動する。湖のすぐ横の木の根元近くまで行くと、男の子2人が焚火をしていた。


「おっ、目が覚めたんだな。飯食えるか?」


 と剣を持っていた男の子が私に問いかけるが、その言葉にビクッとしてヘタレの後ろに隠れてしまう。


「お、俺なんかまずい事言ったか?」


「あはは。君の顔が怖いんじゃないかい? とりあえずここに座りなよ。」


 盾を持っていた男の子が優しくそういうと、ヘタレが座ったので私も座る。


「な、なんで俺だけ……。」


 剣の子だけというよりも、ここには初対面の人が3人もいる。私にはこの状況が拷問でしかないし、地球上では絶対にありえなかった。知らない人には絶対に近づかないし、全力の警戒態勢になってしまう。


――でもご飯をもらえるみたいだからお礼の1つでも言わなきゃダメよね……。なんて言ったらいいんだ? ありがとう? こんにちは? そもそも初めまして?


――あぁ~もう! まずは感謝を伝えたらいいんだよ! うん、それでいいんだ!


――よし、深く深く……深呼吸していざっ!


「……ご飯。」


――ちっがぁ~う! なんでそれを先に言っちゃうのよ私。 これじゃあ、ただ食い意地張ってるだけみたいじゃん。……恥ずかしい。


「あはは。ご飯食べようか!」


 笑顔で魔女っ娘が食べ物を渡してくれた。私は美味しそうなその匂いに幸せを感じる。用意してくれていた寄せ鍋のようなものは、日本では味わったことのないような味だったけど、とても美味しかった。

 更に焼いているお肉をハムっと頬張ると、外はカリカリ中はホクホクで塩コショウの味付けがとても満足感を与える。久々のご飯にこの食事は幸せすぎる。


 美味しいものを食べると人間疲労も無くなるものだ。全力でハムハムしていた私を皆が見て、皆が笑っていた。ヘタレにも少し笑顔が戻っていた。


「そんなにがっつかなくてもまだいっぱいあるからね。」


――やっぱり人間ってなんかいいな。


 お腹いっぱいになり、体力もだいぶ回復していた。私が喋れない性格と分かって気を使ってくれたのか、いろいろと話しをしてくれた。


 まず、ここは魔物が住む地下の迷宮らしい。地上には人間が住んでおり、国が5つに分けれている。


 3人は「勇者候補」としてこの迷宮を旅しているらしいんだけれど、勇者候補は人間の脅威である魔物を殲滅することが仕事らしい。

 これは誰でもなれるものではなくて、生まれつき体内で魔動力を発生させることが出来る、神様からの加護をもらって生まれた人間のみがなれるそうだ。それを持って生まれた人間は、本人の意思とは関係なくこの星の成人の16歳になったら強制的に「勇者候補」としてこの迷宮へ入るのが使命らしい。

 この3人も同様の理由でつい先日迷宮入りを果たしたばかりの新米らしいけど、自分が勇者候補として皆の為に闘う事に誇りを持っていた。


――という事は他にも人間がこの迷宮内にいるってこと?


 それらしい反応や痕跡は今まで無かったので、私とヘタレ以外に人間すらいないと思っていたくらいだ。歳も16歳ということはやはり私達はタメらしい。


 私は皆に名前を聞かれたので、「アンブ」と言っておいた。


「アンブ……?」


 ヘタレが私の名前に反応し、何か考えているようだった。


「変わった名前だね。」


 と魔女っ娘に言われたので、アンタらだけには言われたくないわ! と心の中で突っ込みを入れておいた。


 3人を番号なんかで呼びたくない私は、勝手にあだ名を付けた。だって番号で呼ぶなんてなんか囚人みたいじゃん?


 魔女っ子は、少し天然で抜けているけど、ヘタレにも負けない美女であり、おっとりとした癒し系の女の子だ。この子のあだ名は、<マヌケ>。

 間抜けじゃないよ! ヘタレにも負「マ」けない美女なのに、少し抜け「ヌケ」てるところがあるから「マヌケ」ね。


 ――そこ、無理やりじゃんとか言わないの!


 腰に剣を差した少しイケメン風な男の子は、口調が結構オラオラ系で何でも思ったことを口にするタイプ。顔に少しソバカスがあるのがチャームポイントなので、あだ名は「カス」。


 全身の鎧と縦を所持した男の子の見た目は、いかにも男性ホルモン濃い目で厳つい感じなんだけど、口調と性格はとっても優しい男の子なので、あだ名は「オス」。


 それぞれをそう呼ぶことにした。マヌケは「アンブみたいな名前……」とニヤニヤしていたり、カスとオスの2人は「俺らちょっと似てんな」とがっちり手を組んでいたりとそれぞれでお気に召しているようだ。

 因みにカスとオスを同時に呼ぶ時はカオスと呼ぶ。


『あ、あの……私は?』


 とヘタレが求めてきたので、あなたは「ヘタレ」だよって教えてあげた。

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