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第10話 何を見せられてるの?

 おそらくこの砂場はサメの住処で、砂の上に落ちてきたものを食べているのだろう。あんなものを見た後では緊張で鼓動が激しく高鳴る。


 大丈夫と思っていても震えが止まらない。いけない、心の乱れは隠密行動を崩してしまう。


――落ち着け私。

 

 ゆっくり小さく短めに息を出し入れする。忍者が緊張を和らげる方法だ。少し落ち着いたところで、また歩き出す。


 本当なら元来た道に戻りたいところけど、砂場の距離が長すぎて危険だ。

ガボチャマンたちがいた段差までは直進で20mほど。


 少し遠回りだけど、少しでも安全に進む為に壁際に沿ってゆっくり進んでいく。

焦らずゆっくり慎重に、でも少しでも早く。残り半分くらいまで来た時に、なんとガボチャマンの大群が現れた!


――うそぉ……。このタイミングで現れるなんて最低! お前なんかもう嫌いだ!


 ガボチャマンたちは一斉に砂場に飛び込み出した。カボチャマンが砂場に落ちると同時にサメがカボチャに群がり一瞬で捕食されていく。それはまるでサメのエサやり状態であり、なんともシュールな光景だった。


――こんなにいたのかあのサメ。引くわ~。


――テレビで見た魚の養殖でのエサやりってこんな感じだったなぁ。


 私はそんなことを思いながら、ガボチャマンの入れ食いを横目に気配を消したまま神成カミナリモードの出力を上げて一気に段差までジャンプし、近くの岩陰まで素早く移動して周りを見渡した。


 天井と壁は変わらないが、地面は土になっている。ガボチャマンの栽培畑なのか、その辺り一面にガボチャマンになっていないガボチャが生えていた。


――スマコ、これは?


《カボチャです。》


 アイレンズにはカボチャって名前とその成分表が表示される。一見地球のカボチャとなんら変わりはないようだ。


――成長したらあのカボチャマンになるの?


《あれは魔物化したカボチャです。成長し、ある一定の時間を過ぎると魔物化するようにプログラミングされているようです。》


――マジかぁ。ていうことは、今の時点でこれ引っこむけば魔物化しないっていうこと?


《その通りです。》


――このガボチャは食べられるよね?


《殻を割らない限り食べられませんが、中身は地球のカボチャと同じです。》


――殻って……。皮じゃないの?


そんなことを思いながら1つ引っこ抜いてみた。


「ぎゃッ」


――うん、カボチャから何か聞こえたような気がしたけど気にしないでおこう。


 見た目は普通のガボチャだった。但し、尋常じゃ無いくらい固い。ホント鋼鉄なんじゃないかって思うくらい。コンコンと叩いてみたら、いい音がする。でも貴重な食料なので、なんとかしたい。


――どうやったら割れる?


《このカボチャの殻は特殊で、外的の衝撃に対してはもの凄い耐性をもっていますが、内部からの衝撃には弱いようです。よって桜雷拳オウライケンで内部から衝撃を与えると殻の破壊が可能です。》


――なるほど。それなら後でやろう。


 そう思って異空間へカボチャをどんどん投げ入れた。引っこ抜く度に、何か悲鳴みたいなものが聞こえていたが気にしないでおくことにした。


 ガボチャ収穫に夢中になっていた私は、周囲への注意を怠っていた。敵を気配に気づいた時にはもう背中に痛みが走っていた。


――うッ?! ちょっと痛い……。


 痛みでハッと我に返る。変化服と神成カミナリモードのおかげで重症にならなかったのが幸いだ。


 私を攻撃したそれは細ゴリが持っていた棍棒だった。アイレンズで見てみると、遠くから複数で囲まれていたらしい。数はおよそ20匹くらい。


――先に手を出したのはそっちだからね?


 私は大きく深呼吸をした。


 一斉に棍棒が飛んで来る。アイレンズで飛んでくる位置とタイミングを見計らい、最小限の忍者の動きで避ける。棍棒はブーメランのように細ゴリたちの元へ返っていく。


 私は瞬時に神成カミナリモードを10%へ引き上げた。


 そして、飛んでいる棍棒より先に細ゴリの元へ行き、龍雷拳リュウライケンで始末する。そして飛んできた棍棒を手でキャッチし、近くにいる細ゴリへ投げて命中させる。更にまた違うところから棍棒が6本飛んできた。


 その内最初の2本を手でキャッチし、残り4本の回転方向に私の打撃で回転と勢いを大幅に増加させ、棍棒を投げた相手へ倍の速度で返した。その勢いで4匹は弾き飛んだ。


 素早く近くの敵の懐に一気に入り込み、棍棒で斬り付ける。といっても斬れないから打撃でブッ飛ばす。


 飛ばす方向も細ゴリがいる方へわざと飛ばす。私が飛ばした細ゴリが攻撃をしようとしていた細ゴリに命中して、ダウンさせていく。


 流れるようにすぐさま違う敵に向かって攻撃を仕掛ける。


 何故私がこのような攻撃が出来ているかというと、スマコがスキル感知と連動し、状況を解析しながら私に最適な動きをアドバイスしてくれていたからだ。


 これにより、私は流れるような素早い暗殺術を繰り出している。


 忍者もスパイも様々な武器を使用するので、剣や銃などの武器は一通り訓練を受けていた。基本忍者は剣でスパイは銃なのだ。その忍者の剣術は2刀流を基本とした忍殺剣と呼ばれる剣術を使う。今は棍棒2本でそれを代用する。


 敵は残り7匹となっていた。


 7匹は勝てないと思ってか、一斉に襲い掛かってきた。これも、ガボチャマンとの攻防を見ていたので、想定済み。


 私は棍棒を構え、そのまま体を回転させて竜巻を発生させる。残り7匹がその竜巻に巻き込まれ、内側へ集まる風の渦の力により中心で圧し潰されてパリンと消えてしまった。


 スマコのおかげというのがほとんどだけど、神成カミナリモードもスキル感知もそれなりに使い慣れてきたようだ。


 危機が去ったことで安心したのか、細ゴリにやられた背中が少し痛みだしたが、ヘタレのことが心配なので我慢して移動することにした。


 実は先ほどからカボチャ畑の向こう側に細い通路があることを確認していた。


 通路に生物反応はなかったので、通路に入ってみたらすぐに行き止まりだった。

その代わりに天井に大きな穴が開いている。この穴の先に光が見え、空間があることが分かった。


――またこのパターンか……。


 仕方がないので、同じ要領で壁を蹴り上がっていく。次のエリアへ到着するとそこは拠点エリアと同じように木々が生い茂っている場所だった。


 アイレンズでマッピングを行うと、遠くの方で戦いが起こっているのが分かった。その中で明らかに魔物とは違う生物反応を4つ感じた。


――これは……人?!


 それを囲むようにかなりの数の魔物がいるようだ。


――もしかして魔物に襲われてるの?!


 あの中にヘタレがいるかもしれない。違っていたとしても、人なら何か知っているかもしれない。


――どちらにしても助けなきゃ!


 今にもやられてしまいそうな4人。急ごう……。


 私は近くの魔物達を避けながら、周りの木々を忍者のように飛び回り戦いが起こっている場所へ急いだ。

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