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第9話 クズの戯言

――な、なッ?!


「ふふふ。いけないところが丸見えですよ? まぁその反応で笑わせて頂いたので、許してあげましょう。」


 私はその言葉で我に返り、慌てて立ち上がる。そして、声のする方へ目線を走らせるとポケットの中のスマホからこの憎たらしい声はしているようだった。


――なぜ私のスマホからこいつの声が……。


「あっ、折角なのでお近づきの印にID交換しておきましたよ。嬉しいですか?」


――全然嬉しくねぇよ! てか、そもそも私喋ってないのに……。


《あぁ~あなたはどうせ喋らないでしょ? 心で思うだけで全能なる神である私には声が届きます。それより、順調に私が与えた力を使っているようで安心しましたよ。あっ、因みにまたあの美味しいクレープ屋さんから電話しているのですよぉ。本当にここのクレープは美味しいですね。羨ましいですか? 食べたいですか? 食べている音でも聞かせましょうか? ふふふふ。》


 プチンッ!


――やっぱお前は大嫌いだぁ!


《まぁまぁ、名残り惜しいでしょうが、そろそろお時間のようです。それでは、ごきげんよう。ふふふ。》


――ふざけんな! それだけ言う為に電話してきたの?! 二度とかけてくんな! ばかばかばかぁぁぁああ!


 クズ神との電話を終えた私は、また木の上でメリドの実を食べていた。クズ神がクレープ自慢をしてくれたおかげで、甘いものを食べたくてしょうがない状態だったのだ。むしゃむしゃと苛立つ気持ちをぶつけながら食べていたら、さすがにお腹がいっぱいになった。


 お腹が膨れたこともあって、眠くなってしまった。しかし、いつ魔物に襲われるかもわかんないから眠るわけにはいかない。


《私がスキル感知で見張っておきます。どうぞ、お休み下さい。》


――マジで?! そんな私だけ休んでいいの?


《構いません。危険を察知しましたらご連絡致しますので。》


 そんなスマコの好意に甘えて、少しだけ眠ることにした。余程疲れていたのか、私はすぐに眠りについた。



《アンブ、助けて……。》


――ヘタレ?!


 私は目を覚ました。ヘタレの声が聞こえた気がした。


 どれくらい眠っていたのだろう。ここでは時間も日付の流れも全く分からない。


《主は地球の時間で表すならば、約15時間程眠っておられました。》


――マジで?! 3時間くらい眠るつもりだったのに、そんなに眠っていたんだ。


《力を開放したことで体に疲労が溜まっていたと思われます。おかげで、体力は回復しました。》


――そっか。それなら早くヘタレを探しに出かけよう。


 さっきの夢のせいなのか、胸騒ぎがしていた。ヘタレの身に何か起きてないといいけど。


 私はこのエリアを拠点としてヘタレを探すことにした。ここは食べものも飲み物もあって、魔物がいない安全地帯だったので、ここを拠点に捜索範囲を広げていく方がいいと判断したのだ。


 私はメリドの実を数個、異空間へ放り込んでから出発した。


 このエリアは私が上ってきた通路しか道はなかったので、またその通路を降りていく。鹿と闘ったあの広いエリアまで戻った私は、いつも通り足音を立てることなく、気配を消したままの状態で行ったことがない方向へ足を進める。


 少し行くと、道が狭くなってきてその先のあちこちで枝分かれし始めた。


――全くなんなのこの迷宮。本当にメチャメチャな広さなんだけど。


 一応、場所はスマコが覚えてくれているので私は魔物に気を付けながら先に進む。無数に枝分かれしている道を危険が少なそうな場所を選んで進んでいると、少し広い場所に出た。


 そこは今までの岩道とは違い、地面がふかふかの砂場みたいになっていた。近くには何もいなさそうだったから、静かにそのエリアへ入ってみた。するとアイレンズが砂の中に何か生物がいることを表示する。


――スマコ、あれは何?


《サンドシャークです。砂の中を泳ぐサメであり、戦闘力は非常に高めです。今の主でも見付かると勝ち目がありません。しかし、音に敏感な性質を持っている為、足音がしない主が見つかることはないでしょう。》


――なるほど。スマコが大丈夫っていうなら進んでみよう。


 音に気を付けながら奥に進んでみると、砂場の終わり目で1m程高くなっている段差があり、その奥には草むらが広がっていた。


 そこで奇妙な光景を目の当たりにする。私が知っているものとは明らかに違う姿のカボチャと、体が細めの小さいゴリラみたいなヤツが戦っていた。


――どういう状況よこれは。


 見た目はカボチャなんだけど、浮いているし、とんでもない大きさだし

目と口と牙みたいなの付いてる。あれで体があれば、そのままハロウィンに参上出来る容姿だ。


細いゴリラはその言葉のまんま。スリムなゴリラが棍棒みたいなもの振り回してる。なんかゲームとかアニメで見たことあんのよ。


――なんだっけ?


《ゴブリンです。》


――そうそうそれ!


 因みにアイレンズには名前以外「???」という表示が並んでいる。


 細ゴリよりも私は断然カボチャマンを応援する。だってなんか存在ウケるし。でも普通に見た目のインパクトは半端ないけどね。あんなもん街中出てきたらみんな大騒ぎで逃げ出すだろうし。


 でも戦いは細ゴリが微妙にカボチャマンを押している感じかなぁ。細ゴリは体が小さい分早く動いて棍棒で滅多打ちしているけど、カボチャマンが硬くてダメージがあまり通っていない。対してカボチャマンは鋭い牙で噛みつきにかかるけど、遅くて全く当たる気がしない。


 そんな攻防をみていたら、カボチャマンの体がポロポロと少しずつ崩れ出した。

しかも細ゴリは応援を呼んだのか、6匹に増えている!


――卑怯だ! 頑張れカボチャマン!


 カボチャマンは防戦一方だったが、急に体を回転させ始めた。その回転によって竜巻が発生した。その竜巻に細ゴリたちは巻き上げられるが、何故かカボチャマンも止まらずに勢いのまま巻き上がっている。


――いやいやいや、アホなの?


 結局みんなまとめて砂場側へ落ちてきた。


――え?! うそぉお!


 カボチャマンたちが砂場に落ちたその瞬間、とんでもない大きさのサメの化け物「サンドシャーク」が現れた。胴体はクジラみたいにバカでかいし、鋭い牙が無数にあるし、長い爪を付けた手足が6本生えている。


――いや、もういろいろとサメじゃねぇ……。


 そいつはカボチャマンたちを一口で飲み込み、バキボキと嫌な音をたててかみ砕いてしまった。全てをのみ込んだサメはそのまま砂の中へ戻り、そこには何も残らなかった。


――あれはヤバい。


 あのカボチャマンの硬い胴体を簡単にかみ砕く牙と顎もそうだが、獲物が地面に着いてからの捕食スピードが速すぎる。私のすぐに物陰に隠れていたので、見つかることは無かった。見付かったらまず命はないだろう。

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