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竹輪伝

作者: 路地裏


むかしむかし、あるところにチクワルプルギスという一人のちくわがおったそうな。


そのチクワルプルギスと言うちくわは、仕事もせず、

ママちくわとチチちくわのスネをかじって生きていた。


なのにも関わらず自己主張は激しく、飯もしっかり食う。

チクワルプルギスはそんな中身の無い男だった。


ちくわだから中身がないのでは無い、ママちくわは朝から晩まで働き、その合間に家事をこなす。

チチちくわも一生懸命仕事に打ち込み、野良猫の里親を探す団体に寄付していた。


チクワルプルギスがちくわとして中身が無いのだ。

ご近所の主婦の、格好の噂の的だった。




ある日、ついに堪忍袋の緒を切らしたチチちくわは、


「もう限界だ!!働かないのなら出ていけ!!

二度と戻ってくるんじゃない!!」


そう言ってついにチクワルプルギスを家から追い出してしまった。


路頭に迷ったチクワルプルギスは夜の街をフラフラとさまよう。

下を向いて、ろくに前も見ずただフラフラと。


「痛ってーなこら!!!どこ見て歩いてやがる!!」


夜なのにサングラスをかけたヤンキーちくわにぶつかり、

普通にぶん殴られてネオン煌めく夜の街を惨めに眺めていた。



(ちくしょう、ちくしょう……!!)


チクワルプルギスは悔しかった。何も出来ない自分が。


(いつか、いつか必ず俺を馬鹿にした奴らを見返してやる!)


チクワルプルギスは変わろうと誓った。

あまりの惨めさに。自分への憤りに。自分を見下す連中に。



変わると決めてからの行動は早かった。

チクワルプルギスは都会を離れ、山に篭もり、修行を始めた。






~2年後~



山から降りてくるころにはチクワルプルギスの顔つきは、

もはや腐っていた頃とは別人だった。


その胸に刻まれた大きな✖️印の傷が、チクワルプルギスの修行がいかに激しかったかを物語る。



チクワルプルギスはついに進化してこの町に帰ってきたのだ。

帰ってきたチクワルプルギスは人の多い駅の前にいた。


(今、あの辛かった修行の成果を見せて皆を見返してやる。)


チクワルプルギスは歌った。




道行く人々はチクワルプルギスの美声に足を止め、拍手を送る。

その中になんか上手い事音楽関係者もいた。


「you、デビューしちゃいなよ。」


チクワルプルギスの芸能界入りが決まる運命の日だった。


チクワルプルギスは厳しい修行の成果を遺憾無く発揮し、

トントン拍子に売れていく。


そしてついに、ママちくわとチチちくわの目に止まった。


二人のちくわは感動した。

ダメな息子だと思って勘当した自分の息子がこんなに立派になって帰ってきたと。


ママちくわとチチちくわはチクワルプルギスに会いに行った。


「ママ、チクワルプルギスはやれば出来る子だとずっと思ってたわ!」


「あの時はすまなかったな…俺も心を鬼にした……

立派になったな!息子よ!帰ってくるといい!」




「え?普通に嫌だけど?」








そう!チクワルプルギスはこれを!これを待っていた!!

このセリフを言う為だけに辛い修行に耐え、芸能界の荒波も必死に乗りこなしてきたのだ!!


チクワルプルギスは成し遂げた。己の…目的を……



これはそういう物語。

どんなに奴でも、どんな目的でも、一生懸命やれば

いつか報われるかもしれないねという中身の無い物語だ。




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