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飲んでも飲まれるな!

 おはようございます。あのよくわからん遭遇から一夜明け、ただ今拠点の木の洞にいます。


 あの後、あのくそ野郎(アルカイド)は俺のインベントリの中にある酒類を全部飲み干し、その後泥酔してその場で寝やがったのでその場に放置して帰りました。

 え?口が悪い?・・・それは、野郎(アルカイド)が酔ってちょっとやらかしましてね!少し頭に来ているんですよ!(笑い)


 「・・・・で、何でテメェが俺の拠点前にいんだよ!」

 「むぅ?」


 木の洞から出てみると昨日は無かったはずの白山が目の前に存在していて、すこし驚いたがすぐにアルカイドが体を丸めて寝ているだけだと解り、驚愕は怒りへとシフトした。


 「むぅ?じゃねよ!寝ぼけてねぇで答えやがれ!」

 「グァアア、なんだ朝から騒々しいぞ。」

 「オメェがのんきに寝ているからだろがぁ!」

 「ん?貴様、喋り方が前と違うでは無いか?我として前のより今の方が話やすくてよいのだが。それと貴様は何でそんなに怒っているのだ?」

 「は?お前、昨日のこと忘れた訳じゃないよな。」

 「ぬ、昨日だと?・・・・あっ!」


 アルカイド目を閉じ唸り、昨日の事を思い出そうと唸り、頭の中でその場面が浮かんだのか声を出す。

 ―――どうやら思い出したようだ。昨日俺に対して行った・・・改名の事を。


 ■


 それは昨日、酒をうまいうまいっと言ってがぱがぱ水でも飲んでいる様に飲み、大分酒が体に回ったのか白い鱗に覆われたトカゲに似て、それよりも凶暴そうな顔を赤く染め始め、若干呂律が怪しくなってきた時の事だ。


 「うむ、どれもうまいなぁ!」

 「はぁ、それはありがとうございます。」

 

 もうすでに何樽もの酒を飲み干しその度に同じ様な事を言い続けていれば、たとえそれが褒め言葉でも飽きが来る。

 最初の予定では何樽か酒を置いて、この場を退散するはずだったのだがアルカイドの飲むスピードが速過ぎて出した端から無くなっていくので、どうしてもこの場から中々離れられずにいた。


 その所為でアルカイドの小言と誉め言葉のループ(ほぼ同じ内容)を延々と聞かれ続けて、内心は辟易していたし、アルカイドの漏らす小言の内容が仕様も無い事ばかりで。

 なんで俺はこいつを怖がっていたのか分からなくなるぐらいあきれる話をするものだから俺は正直、精神的に辛いものがあった。

 だが、それももうじき終わるだろう。何故ならインベントリ存在する酒類が今出したので尽きたからだ。


 「じゃあこれが最後のお酒ですからね。」


 そう言ってアルカイドの前に最後の酒の入った樽を置く。


 「もう、終わりなのか!ヒック、我はもう少し飲みたいのだが・・・」

 「いや、既に大量に飲んだでしょう!顔も赤くなって・・・大分酔いが回ってるんじゃないですか?」

 

 まだ飲みたいと駄々をこねるアルカイドに大量に空になった樽を指を刺しながら指摘すると 

 「グァハッハハ!これぽっちで我がどうとみょならぬゅわ」


 などと高笑いしながら怪しい呂律で豪語するがしているが完全に出来上がっている。

 そんな酔っ払いドラゴンを白い目で俺は見るが、そんな事お構いなしで残りの樽を爪の間で挟み持ち上げ、口まで運び一気に飲み干し空になった樽を他の空樽の上に落とす。


 「あ~うまい、ヒック、オイ!ニンゲン貴様、名は何だぁ!」

 「え?俺ですか?」

 「他に誰がいると言うにょだ。」


 唐突に名前を聞かれ、そういえば名前を言っていなかったな。と自分がアルカイドに名前を教えていなかった事に気が付き、自分の名前を言う。

 

 「え~、俺は元が水鏡 明也(すいきょう あきや)で、今の身体がラピリルカて事になっている。まぁ、どっちでも好きに呼んでくれ!」

 「なに!、ミスカガリルヤ?」


 ―――いや、混ざってから!魔法金属みたいな名前になってるから!俺が訂正しようと口を開く前に。

 「長い、長いぞ貴様!・・・よし!そうだ我が呼びやすい様に改名しやる。」

 

 ―――はぁ?何言ってだコイツ?その言っている意味を理解する前にアルカイドは行動を起こす。


 「えーよし!スピカ!お前は今日からスピカだ!」

 「何を言っ?!」


 まるでアルカイドの言葉に呼応するように俺の身体が淡く光る。

 数秒もしない内、その現象は無くなったが嫌な予感が走り、素早くウインドウを開き、自身のステータスを確認すると。


 [名前:スピカ(qh@*)]

 [種族:人間(Lv5)]

 [職業(ジョブ):精錬術士(10/70):薬師(25/30):狩人(3/30)]

 《セット外職業:精製術士(30/30) :木工職人(20/30)》

 [状態:普通]


 MP:550/550


 STR:20   VIT:20   DEX:80  AGI:90

 INT:100  MND:110  LUC:27


 [スキル] 【精製術(10/10)】 【調合(10/10)】 【精錬術(9/20)】 【採取(10/10)】 【木工(7/10)】 【解体(1/10)】 【気配察知(4/10)】 【隠密(2/10)】 【判定眼(5/5)】 【選別眼(10/10)】 【鑑定眼(2/10)】 【酩酊耐性(3/10)】 【恐怖耐性(1/10)】


 ―――どうだ、初めより大分良くなっただろ。あれ?【恐怖耐性】が獲得してるラッキー・・・じゃなくて、名前がぁ!ラピリルカからスピカに変わっている!!


 口をあんぐりと開き、驚愕していると。


 「では、スピカよ。また、うまい酒を飲ませてくれ。我はなぜか、眠いから寝る。」


 そう言って体をその場で丸めて「グッオオ、グッオオ」っと恐ろしげないびきを出しながら寝始めた。

 

 そのうるさい、いびきでハッと我に返りにどうしてこうなったか聞こうとしたが既にアルカイドは夢の中で、俺が喚こうが蹴ろうが一切返事は無かったため、俺はアルカイドを放置して拠点に帰ってふて寝したのだった。


 □


  「で?説明してくれんだろ?アルカイドよぉ。どうして俺の名前が変わってんだぁあん!」


 チンピラ風にアルカイドに絡むが元の世界の知識など知らないので、何してんだコイツみたいな目線を飛ばしてきながらも、俺の問いに答えてくれる。


 「あぁ、そうだ。確かに我がやった事だな。うむ、その時は気分が妙に上がっていてぱっと思い突きでお前にやってしまったな。」

 ―――思い付きかよ!

 「おいおい。酒の酔った勢いで適当に名前を変えられていたらたまったもんじゃねよ!」

 「うん?我は酔っていたのか?」

 「はぁ?顔真っ赤にして気分が上がっていたなら、そりゃあ酒に酔ったんだろうよ。」


 何を当たり前な事を言っているんだ。っと不思議に思ったが、このドラゴンは酒の小言で自身の領域からは出て行かない、引きこもりのドラゴンっと判ったのを思い出す。

 しかも人間との交流は皆無で稀に来る人間は、アルカイドに戦いを挑むバカばかりで、アルカイドもアルカイドで嬉々としてバカ共と戦い、勝利するだけでまともに会話したのは俺だけだと言う。


 ――それならば、もしかするとこのアルカイドはあれが人生・・・ドラ生初の飲酒の初酔いでそれを理解しないまま俺の名前を変えてしまったって事なのか?

 ・・もしそうなら、初めてのヤツに大量の酒を出した俺も同罪じゃね。・・・いやいや、まて俺はただ酒を出しただけ止もした。忠告を聞かずに飲んだのはヤツだ!・・・しかし、初めてのヤツに行ったところで理解できるか怪しい・・・いや、でも。

 俺が心の中で葛藤していると。


 「そうか。我は酔ってしまって、お前に迷惑を掛けてしまったのだな。・・・そのすまなかった。」

 シュンっと落ち込んだ表情で目からも覇気がない感じがする状態のアルカイド、申し訳なさそうに頭を下げる。

 ―――そんな姿見せられたら、俺が悪役みたいじゃねぇか!!・・・・くっ、ここは穏便に。


 「そ、そのだな。人間、いやドラゴンだって誰しも間違いや事故があるんだし、そう!今回のは事故みたいなもんだよ。ハハハ!俺も少し言い過ぎたな、だからそんな気にすんなよ!」

 「お前、本当にいいやつだな!!・・・スピカ!お前と我は盟友だ!いいだろ?」 

 ―――ウッ、そんな純粋な瞳でこちらを見るな。

 

 「ああ、いいぞ。俺とお前は盟友だ!・・・でそんな盟友のお前はウチの拠点に何の用だ?」

 

 アルカイドの純粋な眼差しに耐えきれないので、話を変える為にここに来た用件を聞く。

 

 「うん?用?・・・あぁ、実は昨日の味が忘れられずにな!ぜひ、今日も・・・」

 「懲りねぇなぁ!テメェも!!」


 やっぱ、このドラゴンはバカだった。

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