マジかぁ~
それから2週間ほどたった今現在―――
森での生活は、まぁまぁうまくいていると言えるだろう。
あの後、【選別眼】を使い薬草や食事に適した野草を集めたり、近くに水場を探したが見つからず、草や若い葉で水を精製できないか【精製術】で試して、結果成功で水も確保する事ができた。
更に落ちている枝木を【精製術】で少し加工しマイギリ式の火起こし器のパーツを作り、ひもの代わりに植物のつるで代用しながらなんとか形にして、火を起こすことも出来るようになった。それのお陰で[職業:木工職人]とスキル【木工】を手に入れた。
[職業:木工職人]と【木工】は名の通り、木を色々な物に加工したり、品質よくする補正を上げたりする職業とスキルだ。ただ、ちゃんとした道具が無いので【精製術】だよりで劣化品になるのだが。
それでも、使えないわけじゃないので水を溜めとく桶や器を作り森での生活がさらに向上した。
・・・だが、一つ悲しい事が起こった。
おれの、・・・・俺の大切な・・・・・・ジュニアが居なくなってしまった。
あっ、いや語弊がある。
この身体は元の現実の俺の身体とは違うから元から無かったのだろう。
確かに前々から違和感を感じていたが、いきなり子供の身体に成った所為だと思ったし髪も触った感じ男の子の髪と同じぐらい短髪だったけど、トイレの際ハッキリと分かってしまった。
つまりは俺、女の子になちゃった。・・・・はぁ、マジか。
別に、現実で彼女がいたとか女性にモテたいとかはあまりなく、むしろそんな時間が在ったらゲームをしていた方がまし。なんて考えるほどのゲーム中毒者の俺だった訳だが、性別を変えたいと願った事は無いし、可愛い女性キャラと仲良くしたいと思ったこともある。
因みにBCWでの性別変換はできない。
なんでも犯罪防止とリアルすぎる感覚の所為で現実にも悪影響を与える可能性が僅かにある為に出来ない仕様となっている。まぁ、初回のキャラメイクで女性みたいな見た目の男性キャラを作成する事は、普通にできる。
そんな訳でゲーム内で合コンみたいな集まりが開催される事が在ったりして、俺も何度か行ったことがある。
結果か言えば俺に彼女は出来なかったが、そこで仲良くなった女性プレイヤーは割といたし困ったことが在ったらよく相談されていた。
・・・・友達どまりの相談役なだけだがな・・・ヂクジョウ。
奥手の草食男子はモテないのか!くそ、今現在の食料も草だからか!ニクだ!肉を食いまくって肉食男子――――肉食女子になってやる!
な訳でニク食いたい。
や、ほんと切実に今は野草が主な食糧なのだけど野草だけじゃタンパク質が足りないし、なんかの本で動物の血から塩分も補給できると読んだことがある。
さすがに血をそのまま飲む訳にはいかないけど、【精製術】を使えば塩も作れるかもしれない。
森の中じゃ塩なんてめったに取れないから塩分も不足している中で塩の確保は必須だ。
「なので狩りをしようと思います。」
□
などと簡単にに言ったはいいが実際に行うとなればかなり難しい。
まず俺のステータスが貧弱すぎる上に未だにボロ布一枚の恰好・・・一応、女の子になったのだから早めに服は何とかしなければ。・・っで、防御力が無いに等しいから直接の戦闘行為は避けたい。
かといって、遠くから獲物を倒す方法が無い。木を【精製術】で加工して弓と矢も作る事ができるけど、STRが低すぎて当たっても刺さらない可能性もあるし、まず当てれるかすら怪しい。
ゲーム時の俺のプレイスタイルは剣と盾の近接戦闘をメインにして、魔法でステータスを底上げする脳筋プレイが俺のスタイルで、一応スキルと職業集めの為に少し試した事があったけど結果は散々だった。
そんな苦い思い出がある弓は余り使用したくないし、やるにしてもうまい誰かの指導の下で練習してから実戦したい所だ。
「・・・という事で今回は罠を仕掛けて、狩っていきたいと思います。」
現在、俺は拠点にしている木の洞がある場所から風下の少し離れた茂みの中にいる。
ここは俺が前に薬草や野草を採取している時、偶然に獲物と遭遇した場所だ。遭遇って言っても、何かの音が聞こえた瞬間に俺は、茂みの中に隠れてやり過ごしただけなのだが。
まぁ、その後も何度かここに来て、獲物が来るか確かめたが、その獲物はほぼ毎日ここに来ていた。
なので、ここで獲物が来るのを待ってから獲物を別の罠を設置し場所まで誘導して、罠に嵌めて狩ろうと言うのが今回の作戦内容だ。
これなら程よく近接戦闘にならないし、弓などの遠距離攻撃を持たない俺でも獲物を狩る事ができるはずだ。
だが、肝心の罠の方は茂みが少なく見通しの良い森の開けた空き地みたいな場所に。
二日間掛けて俺がすっぽりと入るサイズの穴を掘り、そこに鋭く尖らせた木の棒を何本も設置してから枝や葉で蓋をした後に、軽く土を撒いただけの落とし穴だ。普通に考えると罠に獲物が掛かる事は無いのかも知れない。
しかし、そんな俺には秘策がある。その秘策とは――――
ガサッガサッ
近くの茂みが風ではない何か別の要因で音を鳴らす。―――獲物が来たようだ。
ガサガサと茂みから音を出しながら、そいつは姿を現す。それは、白い兎の姿なのに頭からは翡翠色の巨大な鋭利な角を持つBCWにもいたモンスター、《ホーンラビット》だ。ただBCWに居る《ホーンラビット》は現実の兎より一回りほど大きいだけなのだが。
目の前で近くの草を食べ始めたこのホーンラビットは、BCWで存在したヤツの倍の大きさ、大型犬よりも一回りデカいサイズのモンスターだ。
正直に言うとすぐにでも逃げ出して木の洞に隠れたいです。
目の前に存在するモンスターのその大きさにまだ対峙した訳でも無いのに俺の心は折れかける。
でも、ここで逃げると他に似た場面が来た時も逃げてしまうだろう。・・・・それは、駄目だ!
何故かこの幼い女の子の身体になり、知らない森と訳が解らない世界、何か流される様に来た俺だこれ以上何かに流されたり、逃げたりするのはまっぴらだ!!
「は~、ふぅ~。」
再び俺は心に強い闘志を燃やし、体の緊張を解すために静にその場で深呼吸する。
「やる、やるんだ!」
ホーンラビットに気が付かれない様に小さく自分を鼓舞するとウインドウ画面を出し、ホーンラビットの背後へと茂みの中を音を出さないように注意しながら移動する。
「よし、こちらに気付いていないな。」
無事に音を出さずに茂みの中を移動し、ホーンラビットの背後へと移動する事ができ、ホーンラビットはまだ俺の存在に気付いていないのか近くの草をモリモリ食べている。
その事を確認するとウインドウを操作して物を取り出す。
これは、ゲーム内にもあった“インベントリ”と言われる機能でアイテムを仕舞ったり、出したりする機能だ。しかし、初期の無課金だとスロットと呼ばれているアイテムが表示される枠が少なく、スロットが埋まればアイテムを“インベントリ”にしまう事ができない。
システムが現実に使えるようになった今、課金をして“インベントリ”のスロットを拡張する事はできない。・・・というか、誰に課金するんだ?神様か?
あと、このアイテムはどこに消えて何処から出るんだか謎だな・・。そんな疑問を抱くがすぐさま、頭を横に振り、ホーンラビット狩りの事に集中する。
先ほど俺がインベントリから取り出したのは、何の変哲もない小石と何かの液体が目一杯入った木の桶だ。
小石は、そこいらに落ちていたモノと罠の為に掘った土の中に入っていた物がインベントリのスロットに同じアイテム扱いでストックされ、99個まで一つのスロットに入るので残り98個も小石があるし、掘った土も一つのアイテムとして入ったのはびっくりしたがもし、作戦がうまくいかなかった時これらを使いうまく逃げだせるかもしれない。
いや、成功させなけば俺が前に進むのを諦めてしまうかもしれない。
後ろ向きな考えを捨て、この狩りを成功させることを心に誓い木の桶を見る。
大丈夫だ、これさえあれば何とかなるだろう。
―――秘策である木の桶の中身に狩りの成功を確信して俺は、手に持った小石をホーンラビットに向けて思いっきり振り投げる。