良薬、口を壊し?
おはよう!今日は空が青くいい天気だな!!・・・・心から最悪の気分だがな。
寒さで危うく凍死するかと思ったし、木の洞も体ギリギリのサイズだから体のあっちこっちが痛い!ってか起きた拍子に思いっきり頭ぶつけたしな!!
まぁ、冷静に考えてみればボロ布一枚で木の洞で寝るとか自殺行為だったな。あと、ここが完全に現実だと理解した。
BCWは安全のために最大稼働時間が連続稼働8時間に設定されて、それを過ぎると外部のヘットギアが強制停止してしまい、6時間のインターバルを置かないと再起動しなくなる。
昨日仕事から帰宅して飯を済ませた後だから大体9時ころ始めて、現在は正確には分からないが多分7時過ぎだろうか?とりあえず確実に連続稼働時間を優に過ぎている。
なのにも拘らず、いまだこの身体でさっきぶつけた頭の痛みはしっかりとある。よって原因は分からないが俺は異世界転生したのだろうと確定した訳だ。
「はぁ~」
このことを考えると自然とため息が出てしまう。・・・いかんな、いかん朝なのだからしゃっきりしなければ。
そして昨日作っていた例の激マズ“草だんご”を1個、取り出しすとそのまま口に放り込む。
「うっ、ぎぃゃああ、に、にがぁ~」
どうやら当たりを引いたらしく噛んだ瞬間、口にの中が強烈な苦みと青臭さが広がり、さっきの陰鬱な気持ちなど吹き飛ばす程に強烈な一撃が口に入った。
「ぐぅうう、」
ごくん
それを何とか飲み込むと体の内側が軽く温かくなり、頭部の樹に打ち付けた個所や身体の所々の痛みが無くなる。
いまだに強烈な苦みが口の中一杯に広がっているがそれを無視して俺は、ウインドウを開き自身のステータスを確認する。
[名前:ラピリルカ(qh@*)]
[種族:人間(Lv1)]
[職業:精製術士(2/30):薬師(0/30)]
[状態:普通]
MP:100/100
STR:5 VIT:5 DEX:10 AGI:10
INT:20 MND:20 LUC:8
[スキル] 【精製術(2/10)】 【判定眼(1/5)】 【調合(1/10)】
【採取(1/10)】 【選別眼(0/10)】
「うっし!予想道理に薬師キタァ!!」
俺はステータスの表記を見て、自身の思惑がことのほかうまくいった事に、ガッツポーズをその場で決め、喜びをかみしめる。
BCWで職業を取得する為には様々な方法があるが初期プレイヤーは大体の者がNPCに弟子入りもしくは指導を受ける事によってスキルを獲得し、自身の職業を解放していく。
つまり、スキルさえあれば条件を満たす職業を解放する事ができ、その職業を取得したことにより新たなスキルに目覚めていく事で自信を強化していくのがBCWの醍醐味であり、面白いさだ。
[職業:薬師]の解放条件は既に有志の掲示板に出回っていて【採取】と【調合】の2つのスキルを取得する事で解放する。
さらにそのスキルの取得する方法も出回っていて【採取】はその名の通り、自生している何かをとればいいだけで簡単に手に入るが、【調合】は自身で作った薬を自身で服用する事で手に入るのだけどNPCが薬を作るための道具を[職業:薬師]にしか売ってくれないのだ。
なのでこの[職業:薬師]を解放したいならNPCに弟子入りするしかほぼ道は無い。
だが今回の場合は、既に俺が[職業:精製術士]を解放してスキルの【精製術】を持っているので、昨日の草を“採取”したことで【採取】のスキルと先ほど俺が食べた草だんごと同じ見た目をした《回復丸薬(劣)》を食べて【調合】のスキルを手に入れた事で[職業:薬師]が解放された。
あの激マズい草だんごを量産していたのはこのためだ。
どれの草が薬草か解らない為に、取りあえず作っていればいずれ当たるだろう。といった楽観的な数撃ち当たる戦法だが見事に《回復丸薬》を作成できた訳だ。
因みに、別に道具をNPCから買わずに他の[職業:薬師]を解放済みのプレイヤーから貰うか買うかすれば弟子にならずに済むのだが、他のプレイヤーはそれを絶対にしてくれない。
どうしてか?それは、NPCの弟子になり【調合】で出来た薬がドロドロとしたスライム状の液体で、師匠であるバァさんがビーカーサイズのコップにスライム状の薬をなみなみ注ぎ、プレイヤーの口に無理やり注ぎ込むというイベントが必ず起きる。
ひどい目にあったプレイヤー達は後続の奴らにもその苦しみを味わって貰う為に絶対に解放目的のプレイヤーには売ってはならない暗黙のルールが出来上がっているのだ。
閑話休題
□
とりあえずこれだまた一つ職業が増え、森での生活が少し良くなるはずだ。
そう、俺はしばらくこの森に留まることに決めた。
今、自身がどんな世界に居て、どこの森に居るかわからなすぎる。何故かBCWのシステムが使えてスキルが発動する世界だ。
もしかするとBCWでいたモンスターみたいな生き物がいるかもしれないなら、丸腰で動き回るのは危険だろう。
なら、この身を隠すのに適した木の洞を拠点にして道具を作成しスキルや職業を増やし、強化して自身の身の安全を守れるぐらいになってから色々と行動を起こそうと考えた訳だ。
「よし、じゃあまた草だんごを作るか。」
いまだ[職業:薬師]のレベルが0なので薬師の能力や【選別眼】が使えず、スキルのレベルも上げられない。
【選別眼】は【判定眼】みたいに視界に作用するスキルで物を判別してくれる便利なスキルだ。MPの消費も10と少なく効果時間も5分からスキル最大まで上げれば10分も続いてくれる【判定眼】の上位互換見たなスキルだ。・・・なのに【判定眼】の方が後に取れるケースが多いのは謎だ。
そうこうしているうちに、6個ほど草だんごを作り終えると開いたままのウインドウのステータス画面に変化が現れ、[職業:薬師]の(0/10)が(1/10)に変わり、【選別眼】も(1/10)に変わって使えるようになった。
「割と順調に上がるな。LUCが高いからか?・・・いや、ないな」
あまりに順調に物事が進むので疑問に思いLUCが高い所為かと考えるが、首を横に振りその考えを否定する。
この世界に突然飛ばされたり、森の中の何もなしスタートとか、LUCが高いなら在り得ないだろう。・・・所詮、LUCはお飾りだな。
「自身が幸運なのか不運なんのか解らないが順調なのは良い事なので喜んで措くとしよう。」
心に整理をつけながら先ほど出来たばかりの草だんごを一つ口にする。
「・・・マズい筈なのに味がしない。」
俺の舌はどうやら先ほどの回復丸薬の強烈な苦みの所為でマヒしてしまったらしい。
「・・・・おい、回復アイテムじゃねのかよ! 」
ゲームの時は、既に[職業:薬師]を取得済みでポーションとか便利な物も買っていた為、回復丸薬のお世話になったことは無かった。
一応、掲示板には食べた勇者がヤバすぎるゲーム内で二度と食いたくないランキングベスト3に入る代物だったと書き残していたがここまでとは。
良薬は口に苦しというが回復量が低く、猛烈に苦いだけの薬は果たして薬なのだろうか?
「・・・でも、今俺の食料が草だんごしかないから味覚が無いのは助かるな。」
味覚が無いうちにお腹を膨らませようとパクパク食べて残る最後の草だんごも口に入れ――――てから気が付く、さきなぜ[職業:薬師]のレベルが上がったのか。
「うっぎゃぁぁあ」
無情にも俺の悲鳴が一つ森の中を響き渡ったのだった。