それは違うと断言したい・・・
あ~うん、当たりの職業なんだろうけど・・・なんだろう、このモヤっと感。
詳細の説明文がなんかクビになったサラリーマンか仕事してないフリーターの事を言っているような・・・そしてスキルが求人情報誌かハロワに思えてくる。
・・・別の俺がに会社をクビになった訳じゃない。・・・・そう!この身体が多分長い事、森の中をさまよい続けていたから成った職業だ!きっとそうだ!それしかありえないだろ!
ただ、もし仮に俺の魂的な何かだけ事らに来て、あちらの現実の俺の身体は元気な状態で残っているとして長期間このままなら、無断欠勤で確実に会社クビだろけどな。
「・・・たらればは、考えても意味無いか。」
頭を切り替えよう。
さて、変な事を色々考えてしまったが、とりあず[職業:迷い人]の専用スキル【示す道】は今現状においてかなり役に立つスキルだ。
ここでBCWと同じ様にスキルやステータス能力値が反映するならば、この幼い子供の身体でもやっていける!そう確信俺はスキルを起動する。
「スキル【示す道】」
俺の言葉に応えるように先ほどまで開いていたステータス画面のウインドウとは別のウインドウが開く。
そこにはずらりと俺が知っているBCWの下級職や未知の下級職だと思えるものがびっしりと並べられてウインドウ横のスクロールバーはかなり短くなり、選択できる下級職の多さを示している。
「おいおい、俺が知っている下級職が半分ぐらいしか無いって、どんだけだよ運営め!少しは情報流せよ!」
ずらりと並び職業欄を指で弾き、下にスクロールさせながらぼやく。
ゲーム開始から十数年と時間が経ったがBCWの公式ホームページの交流掲示板に有志による書きこみのみで運営からはそういった攻略情報は一切流れて来ない。
軽い課金アイテムとたまに起こるイベント告知しか運営側の動きがみられず、”遊び方はあなた次第!“とパッケージに書かれている通り、プレイヤーの自由に任せて運営はゲームには干渉してこない為、影が薄すぎて発売会社の名前も覚えていない人が多くいる。因みに俺も覚えいない。
「しかし、未発見の下級職がまだこんなにあったとは。・・・色々試したくなるけど。」
見た事の無い職業の数々にプレイヤー魂が擽られ、その詳細を観ようとその職業を指で押してみるが。
「くぅ、やっぱりだめかぁ。」
詳細は開かずに《この職業を選択しますか? YES/NO》と選択する画面が現れた。
どうやら、このスキルでは職業の名前が分かるだけで他の情報は無いみたいだ。
「はぁ、なら知らない職業は選べないな。」
俺は後ろ髪を引かれる思いで目の前に選択画面のNOを押し、再び職業一覧の画面に戻る。
「う~むぅ、どうしたもんかなぁ」
唸る様に悩みを漏らす。
現状の俺は、子供の身体でステータスのパラは初期値と殆ど同じだ。
おまけに空腹状態で知らない森の中にさまよている状態でスキルも覚えていない中で一つ職業を選ぶのはなかなか難しものだ。
「一つ間違えれば死んでしまうかもしれない、生死の係った大事な選択だ。」
頭の中に記憶している職業を必死に思い出しながら、あ~でもない、こ~でもない、と悩む。
「・・・魔法職はMPが初期の倍あるけど、下級職だと杖か魔法用の指輪がなきゃ発動しない。
薬師は道具が無いと・・・あっ、そうだ!!」
突如、降って沸いた様にひらめきが起こり、職業欄の画面を指で素早くスクロールさせて目的の職業を探す。
「ッ!?・・あったこれだ。」
目的の職業を発見しそのままの勢いで、その職業を指で押すと再び《この職業を選択しますか? YES/NO》の画面が現れ、俺はまだ知らない職業に未練を残しながらも勢いよくYESを押す。
すると、ウインドウが軽く輝き、再びステータス画面に切り替わると先ほどまであった[職業:迷い人]とスキル【示す道】は無くなり、かわりに新しく[職業:精製術士]とスキルが2つ、【精製術】と【判定眼】が増える。
この精製術士を選んだ理由は、なんにも道具が無いからである。
戦闘職なら専用の武器を、生産職なら専用の道具を普通は必要とする。だが、現在の俺は何も持っていないし森の中なので買う事も出来ない上に金もない!
ないない尽くしの俺が悩み考えた結果が、自分で作ればいいじゃないか!とシンプルな考えにたどり着いた。
道具が無いと作れないんじゃないのか?と思う所だがこの精製術士で取得できる【精製術】は他の生産系スキルとは少し違い、MPと素材を消費して物を作る事が可能なスキルなのだ。
なんて便利なスキルと思っただろ、実はこの職業はBCWで多くのプレイヤーから不人気職として有名な職業として扱われている。
有志の掲示板にもすでに書かれていて評価も十段階の1という悲しみ。
その原因は、作成できるものが(劣化)、職業とスキルレベルを最大まで上げても(低)の品質しか出来ない。他の下級生産職でも(低)からスタートの(並)まで上がるのだから生産職としての能力が低すぎるのと。
この職業を取得する為に魔法職と生産職を覚える必要があるので、必然的に劣化職など要らないと言われ低い評価を受ける事となってしまった。
だが今回は、迷い人のスキルのお陰で取得条件を無視して職に就く事が出来て、MPと素材のみで物が作成できるから何も持っていない俺にはちょうど良い。品質なんて気にしている余裕は今は無い!!
「職業も取得したし試してみるか、【判定眼】」
スキルを発動すると視界に映る木々がぼんやりと青く発光しているように見える。
この【判定眼】はMPを20消費して毒物判定ができるスキルで青く発光していれば無害、赤く発光しえいれば毒物と分かるスキルだが、効果時間が1分(スキルレベル最大で5分)と短くMPの消費率の悪さや、【偽装】などの誤魔化しや阻害系のスキルがあると判定する事は出来ない為にゲーム内でのスキル評価も低い。
「こうして現実だとかなり役に立つんだけどな。」
そう言いながら近くの地面で青く発光する草を適当に引っこ抜き始める。
【判定眼】の効果が切れるまで周りの青く発光する草を集め、それが小さな山になる頃にその効果は切れた。
「よし、次だな」
おもむろに、目の前にできた小さな草の山を適当に右手で一掴みし
「【精製術】」
右手に掴んだ草がぽっと軽く発光すると、丸い一口サイズの緑色の玉が一つ出来上がる。
これは、《草だんご》というアイテムで決して和菓子の“草団子”とは別物で見た目や形は似ているが。
手に持つ草だんごを口に放り投げるように口に入れ、だんごを噛み締めると口の中一杯に青臭い草の味が広がり吐きそうになるが何とか咀嚼し飲み込む。
「ウッェエ~」
マッズ!・・・この激マズなアイテム《草だんご》の正体はただの雑草をMP5を消費して【精製術】で練り上げ丸めた代物だ。
普通なら雑草なので毒物が混じっている可能性があるが【判定眼】のおかげでその心配少なく、ただ激マズだけの食料の出来上がりだ。・・・最悪だな。
まあ、でもこれで一先ずの空腹をしのぐ事ができるのだ、マズい味くらい・・・早くなんとかしなきゃな。
その後、俺は残るMPを使い雑草の山をどんどん“草だんご”に作り変えると残りMPが30に成った頃、ぐらりと視界が歪むのと体に倦怠感を感じる。
もしかするとゲ-ムの時とは違い、MPを多く消費すると自身の身体に影響を及ぼすのだろうか?
出来上がった草だんごを2、3個、口に放り込みマズさにおえずきながらもなんとか根性で飲み込み、ちょうどよく近くにあった体が周りから隠せそうな小さな木の洞に残りの草だんごを持ち倦怠感のある体を引きずりながら身体を滑り込ませた。
「ここなら、とりあえず寝れそうだな。・・・ふぁあ、ねむ・・もう今日は寝るか。」
小さな子供の身体のお陰でギリギリだが問題なく木の洞に入る事ができ、少しの安心感と疲労から一気に眠気が襲い。
そのまま異世界?初日は木の洞の中で丸まって落ちるように寝てしまった。