コンビ結成
「驚いたよ、まさか心さんが魔法少女だったなんてね」
本当に世間とは狭いものだ、こんな風に知り合い同士が繋がるとは。
「私も驚いちゃった、まさか由希ちゃんが魔法少女だなんて、いつからなの? 魔法少女になったのは」
「一昨日だよ、まだなったばっかりなんだ、色々教えてくれないかな、魔法少女の事、魔人の事」
心は少し考える素振りを見せたあと、ゆっくりと頷いた。
「由希ちゃんとはこれから同盟を組むからね、色々教えておいた方が私の得にもなる」
と言って心は魔法少女についての事を話し始めた。
要約すると、魔法少女は自分の想像した様々な魔法を使って、人を食らう魔人を滅ぼす存在だという、魔法少女は変身時にシールドと呼ばれるバリアを張っていて、これが耐久値を超えた攻撃を受けてしまうと割れて生身に攻撃が来ることになるという、更に魔法少女には魔法以外にそれぞれ固有の能力を持っているらしい、魔法で似たような事は出来るらしいが、固有能力は魔法よりもローコスト且つ強力なモノだとか、カグラの固有能力は透明化らしい、見せてもらうと本当に消えて見えなくなる、こちらを触ってきていることから攻撃も自在なのだろう、少し経つと姿が見えだしたので長時間は保たないようだ。
私にも固有能力があるらしいので、ペンダントに聞いてみることにする。
(お前の固有能力は猛毒だ、武器で相手を傷つければ毒が入り相手を殺す、固有能力はその個人の人格によって生まれる、お前の精神を能力にすればこうなった)
何とも納得のいかない言い方だったが、まあいいだろう。
魔法少女の事について一通り聞いてみたが、腑に落ちない事がある、魔法少女達に魔人を倒すように命じている割に一人にだけ願いを叶える権利を与えて、魔法少女同士で戦う制約も無く倒して魔力まで得られるという、まるで魔法少女同士で戦うのを良しとしているような、魔人を減らしたいのなら、魔法少女同士で戦っては本末転倒だし、願いを叶えるほどの力があるなら自分で減らしたり出来ると思う、何故こんなやり方をしているのか、不信感は抱くが、最も優秀な魔法少女になればそれで願いを叶えて貰えるなら、それくらいの事はどうでもいいだろう、正義の味方になれるなら、どうせ普通の生活を続けていても腐っていくだけだった、腐る位なら今の方がずっと素敵に思える。
「固有能力が分かったようね、由希ちゃんの能力はどんなものなの?」
言いたくは無かったが、言わなければ裏切りに値するだろう。
「固有能力は猛毒付与、傷つけた相手に毒を与えて死に至らしめる」
なんだか、心からの視線がジトっとしている。
「何も言わないでよ……私だってこれはちょっとって思ってる、すごく強力な能力ではあるんだろうけどね……」
望まない方向に話しが進みそうだったので。
「とにかく話し合いは終わったし、これからどうするか考えよう」
話を逸らそうとしていると、女の子の悲鳴が聞こえた、心が路地裏の方を指して
「あそこに追いかけられてる女の子が居るわ!」
見ると中学生位の女の子が壁際に追い詰められ男が女の子を襲おうとしていた、私はペンダントに触れながら、心は腕を前に出しその手首に巻かれてる数珠に触れながら。
「「変身!」」
二人で同時に変身し、走っていく、男は遂に正体を表して魔人の姿に変わろうとしていたので、私は魔法側の世界に女の子が連れていかれないように魔人を盾で殴りつける、魔人が吹っ飛んで壁に叩きつけられているあいだに、カグラが女の子を立ち上がらせ逃げるよう指示する、女の子はこくこくと頷いて走り去っていった、起き上がった男は魔人に変身する、見た目は外国に居そうな魚をそのまま人間の形にしたような姿をしている。
「うぎょぎょぎょ!」
不快な鳴き声をあげながら、三又の槍を出現させこちらへ駆けてくる、そして繰り出された槍の一撃を私は盾で防ぐが、かなりパワーが強く少し後ろへ押されてしまうが、何とか受け止めて下へ槍を抑え込む、その間に女の子を逃がし終えたカグラが槍の一撃を叩き込む、そして怯んだ隙に私も剣で斬り上げる。
魚の魔人は大きく吹き飛ばされ槍も取り落とす、カグラが槍を投擲する姿勢になり魔力を込め出した瞬間。
後ろに気配を感じて振り向くとアーリーが大剣を蹴り、こちらへ飛んでくる、不味い! カグラはアーリーに気づいていない!
「アーリーヘッドバット!」
ハッとなり振り向くカグラだったが、回避は間に合いそうにない、私もボルカニックブレイドをためる時間が無かった、咄嗟にカグラとアーリーの間に割り込んで盾と剣で防ごうとするが、必殺技のパワーに押しきられる。
「ぐっ……!」
壁に叩きつけられてその場に崩れ落ちる、なんとか立ち上がろうとするが身体は動かない、何とかカグラに当たらないようには出来たが、自分へのダメージは完全に防ぐ事は出来なかった、カグラがアーリーと戦い始めるのを見る事しか出来ず、そのまま私の意識は闇に落ちていった。




