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マジカルロワイヤル  作者: パピヨン
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魔法少女アーリー

 朝はいつも同じ時間に起きる、目覚ましを消し、部屋を出て我が家の階段を降りていくと、パンが焼けるいい匂いがリビングの方から漂ってきた、赤羽家は朝はパン派である、お母さんが私が起きる時間を見越して朝ごはんを作ってくれている。


「おはよう由希、もうすぐで朝ごはん出来るから座って待ってて」


 おはようお母さんと返しながら、いつもの席に座る、しばらくするとお母さんがバターとハチミツで味付けされたトーストを出してくれたので、ゆっくりと味わいながら食べる、そして、たっぷりミルクと砂糖を加えたコーヒーを飲む、至福のひとときである。


「本当に美味しそうに食べるわね由希」


 お母さんが微笑ましい物を見る目で見てくるので、何だか子供扱いされているようだが、嫌な気はしなかった、お父さんは単身赴任で偶にしか帰ってこれない、小さい頃からお母さんに遊んでもらっているので、反抗期と呼ばれる時期なのだろうが、とてもそんな反抗的な態度を取る気にもなれなかったし、お母さんには感謝していて親孝行したいと思っていた、トーストを食べ終わり学校へ行くための準備を終える。


「行ってきます、お母さん」


「行ってらっしゃい、気をつけてね」


 いつものやり取りを終えて高校への道を歩く、高校までは一キロほどで十五分程歩いて学校に着いたら、自分の席につき授業の準備をしていると。


「おはよう由希ちゃん」


 声が聞こえたので、振り向くと友人の羽島心が隣の席に座っていた。


「おはよう心さん」


 心とは高校入学してから、今日までの三ヶ月間隣の席である関係で仲良くしていた、心は見た目こそ物静かな文学少女という感じが出ているが、喋ったりすると結構変わっていてとても面白い、いい友人として高校生活を彩ってくれていた、心と話しているとホームルームが始まったのでそのまま授業を消化していく、魔法少女の事について考えているとあっという間に授業が終わり放課後になっていた、心と少し話した後別れて帰る準備をしていると。


「赤羽ちゃん、ちょっといいかなー?」


 呼び止められたので振り向くと、茶色に染まった髪に制服を着崩して着ている、チャラい印象を受けるクラスメイト河井芽衣が居た、あまり得意な人間ではないし、喋りかけられる用も思いつかなかったので聞いてみる。


「何かな、河井さん」


「んやぁ、赤羽ちゃん今日授業中ずっと心ここに在らずって感じだったからさあ、気になっちゃって、なんか気になる事でもあったのかなーってさ」


 タダの世間話の様だった、表に出したつもりは無かったのだが、やはり少し浮かれていたらしい、心でも気づいた様子の無かった違和感を感じ取れたのには、流石クラスの中心的人物だなと思った、きっとこういう人をよく見ている事が、そうなる秘訣なのかもしれない。


「別に何でもないよ、私にもぼうっとしたい日くらいあるさ」


「そっかあ、何でも無いなら良かったよ、何でも無いなら……ね」


 そう言って立ち去って行く河井を見送って私も帰路につく、さて今日は魔法少女としての仕事、すなわち魔人退治や魔法少女退治の為の見回りをしようと決めていた、魔法少女になれば色々魔法がイメージのとおりに使えると謎の声が言っていた、ならば悪者を探す魔法も想像すれば作れるだろうと踏んでいた。


 家に荷物を置いて近くの公園まで行く、案の定人の気配が無い公園だったのでそこで変身する、コロナとなった私は早速悪者を探す魔法を使う、イメージ通りに周辺に魔力のソナーの様なものを飛ばして、反応を見ようとした瞬間、ソナーの魔法が至近距離の背後に激しく反応した、咄嗟に前へ飛び込むと背中に少し衝撃が走った、カスリはしたが、直撃では無かったため、すぐに体勢を立て直し剣と盾を出す。


「ははは、避けるか自分以外の魔法少女を見るのは初めてだが、やはり一筋縄では行かないと言うわけか、まあシールドを少しでも削げただけいい」


 後ろを見ると襲ってきたのは魔法少女らしかった、黄色のドレスに所々花の装飾が施されていて私より少し身長が高く、顔は上半分を覆う白い仮面で見えない、武器は肩に担いでいる大剣の様だ。


「私は生き残って願いを叶えて貰わなければならないからな、私の名はアーリー、この名を胸に刻んで死ね!」


 そう言いながらこちらへ手をかざし、炎を放ってくるがそれを盾で受け即座に飛び出す、自らの願いの為に平気で人を襲う悪人だ、魔法少女だろうと容赦はしない。


 上段から斬り掛かる、アーリーはそれを避け、流れるように横へ大剣を薙ぐ、避けきれず食らって吹っ飛ばされてしまう、スグに立ち上がり炎弾を出して牽制するが事も無げに大剣で防ぎ上段から切ってくる、剣と盾で防ぐが上から体重をかけられているので攻撃が重い、必死に防いでいたがアーリーは突然前蹴りを放つ、避けられずに受けて怯んでしまう、その隙にアーリーは斬りかかった来たので盾で防ごうとするがそれはフェイントでパンチをモロに食らってしまう、そのまま大剣で切り上げられて私は大きく吹き飛ばされて地面に倒れる。


 アーリーは自分よりも戦い慣れているようだ、魔法少女としての経験は上だろう、しかし大剣の攻撃はそこまで早くない上、食らってもすぐに再起不能になるほどのダメージではない、どうやら魔法少女は身体に見えない防具を着ているようだ、攻撃を受けた事による新発見だ。


「通常攻撃ではキリがなさそうだ、一気に決めてやる」


 必殺技か、私のボルカニックブレイドと同じような威力なら、本当に死んでしまう、食らうわけには行かない。


 アーリーは目の前に大剣を突き刺すとそのまま飛び上がり大剣の鍔に着地し、鍔を蹴りこちらへ向かって飛んでくる、私は炎の大剣を作り出して力を溜める。


「アーリーヘッドバッド!」


「ボルカニックブレイド!」


 お互いの必殺技がぶつかり合い、爆発を起こしてお互いに吹き飛ばされた。


「ぐあぁ!」


 私は吹き飛ばされ遊具に叩きつけられる、すぐに起き上がりアーリーがどうなったか見ようとするが、アーリーの姿はどこにもなかった。


 ――――――――――――――――――――――――


 まさかアーリーヘッドバッドが返されるとは思わなかった、かなりのダメージを受けてしまったので撤退だ、魔法少女がかなり手強い相手だと分かったのは良い収穫ではあった、変身を解除して公園から離れる、正面から戦うのが辛いならやり方を変えれば良いだけだ。


 最後まで残って願いを叶えるのはこの私だ、誰にも渡さない。


 暗い微笑みを浮かべながら変身を解いたアーリー、石井 涼は街へ消えていった。








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