ゴルドVSオーパル
フラフラと傷を庇いながら歩く、忌々しい雑魚に群がられた程度でこんな事になるとは思っていなかった、歩いていると何かに躓いてそのまま倒れる。
「あぅ……また……記憶が……」
記憶のフラッシュバックが起こる、この場所は確か魔法少女として覚醒した場所だ、そこでボクは悪魔の様な魔人に挑んでいく、だが圧倒的なまでの力の差でねじ伏せられてそして。
「うぐあぁぁぁぁ!!」
悪魔の魔人の光の剣でボクは貫かれて殺されていた、この記憶はなんだ、ボクはあの日に死んでいたというのか、だとすれば、今のボクは何だ?
分からない……死んでいたとして何故今に至るのかその間の記憶がぽっかりと抜け落ちている。
いや、考えすぎかもしれない、なんて事ない記憶が混濁しているだけで今見えたのが正しいとは限らない、だって、死んでいたら流石にボクと言えども生き返る事は出来ないし、記憶が無いというのもそもそも変だ。
そんな事よりもこのまま行けば願いを叶えられなくなってしまう、戦いを止めてはいけないのだ、ボクがこの世の女王として君臨し続ける為に……。
「見つけたわよぉ……逃がさないわ、お前は許さない」
「あはは、さっきはよくもやってくれたね、今度はボクの番だよ……」
オレンジ色の雷を操る魔法少女、名前は知らないがさっきボクに不意打ちしてきた雑魚だというのは覚えていた、ボクのシールドは今割れていて魔力もかなり消耗している、だがこの状態でも負ける気はしない、ボクは時間圧縮を使い一気に距離を詰める、だが近づいた瞬間頭が真っ白になる。
「ライトニングウィップ!」
「がぁ!」
シールドが無いから生身に雷を纏ったムチを食らう、当たった部分は黒焦げになりムチに抉られる、怯んだ所を音速のムチが縦横無尽に襲ってくる、ボクは弾ききれずに少しずつムチで抉られていく。
「ガあぁァ!! 貴様如き雑魚にィ! ふざけるなぁ!」
時間圧縮で高速移動するがまた頭が真っ白になる、そしてその間にボクに電撃を纏ったムチがまとわりついて動きを止める、思考が戻り拘束から抜け出す為にもがこうとするが、電撃で体がいう事をきかない、雑魚が飛び上がり電撃を纏いながらこちらへ飛び蹴りを放ってくる。
「トールハンマー!」
「アァァァァァァ!!」
まともに食らってボクの身体はまるでボールのように飛んでいきそのまま壁に叩きつけられた、頭が割れるように痛い、また記憶のフラッシュバックが起こる。
死んでいたと思っていた光の剣で貫かれた後倒れた状態から起き上がる、そしてフラフラと宛もなくさまよい出す、そして見つけた人間を襲い魔法世界に引きずり込んで食らっていく。
「まさか……記憶が無かったのは理性が無かったから……それ以前の記憶は死んだ時に……ボクは人間じゃない……?」
「そんな馬鹿な……生身でこれだけ攻撃を受けて生きている訳が……」
「あははは! これなら何も魔法少女の力で戦ってやることもないじゃないか! お前は死刑だ、ボクの新しい力で殺してやる」
ボクは人間のフリを辞めて本能を剥き出しにする、するとボクの身体は膨れ上がっていき異形の形になる、そして魔人へと変身した。
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「これは……」
ゴルドが唸り声をあげながら異形へと変化していく、まさかゴルドが魔人だったとは思わなかった、最早少女の面影など無く現れたのは象の特徴を持った魔人だった、大きさは三メートル程にもなりゴルドの時にも持っていたハルバードを持っていた。
「あははは!! ボクは誰にも負けない! この世の女王だ!」
「ライトニングウィップ!」
電撃を纏ったムチで打つが効いた様子がない、攻撃を無視してこちらへハルバードを振り下ろしてくる、何とか避けて思考停止させる、だが何も感じないかのようにハルバードを振り回して私を切り裂く、たった一撃で私のシールドは割れて今度は私がボールのように吹き飛ぶ。
「あはは! 死刑だ! 死刑だぁ!」
最早理性が殆ど残っていない、そのせいで思考停止も効果が薄かったようだ、何とか立ち上がり象の魔人へ電撃のムチを絡める、象の魔人はムチの拘束を事も無げに破りこちらへ向かってくる、だがもうこれ以上の技は持っていない、私は飛び上がりありったけの魔力を込めて電撃を一点に集中させる、そして向かってくる象の魔人へ向けて飛び蹴りを放つ。
「トールハンマー!」
象の魔人はハルバードでトールハンマーを受け止める、何とか押し切ろうとするが徐々に押し返される。
「はあぁぁぁ!!」
空っぽになるまで魔力を振り絞りトールハンマーを繰り出す、だが無常にも電撃の威力が弱まってくる、そしてハルバードで私は弾き飛ばされる、壁に激突してそのまま落ちる、その途中で象の魔人に身体を掴まれた。
「ざぁーんねーん、ボクはさいきょうなんだから、やっぱり雑魚は雑魚でしか無かったね」
「あ……ぐっ……」
少しずつ私を握る力が強くなってくる、もう私に動く気力も無ければ戦う魔力もない、やがて身体中の骨がボキボキと折れ出す、あまりの痛みに絶叫しようとするが、万力の様な力で握られているため声すら出せない、こんな終わり方をしてしまうとは、情けないにも程がある。
結局魔法少女になっても兄を蘇らせることは出来なかった、兄は龍型の魔人から私を庇ったせいで死んだのだ、葬式の時に悲しむ両親を見ていたら居ても立っても居れなくて、外に飛び出した私の指にいつの間にか付いていた指輪、その指輪の声に導かれて魔法少女となった、兄を蘇らせる為に色々やって来たが、最期まで報われることは無かった、兄に続いて私まで居なくなったら両親は凄く悲しむだろう、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「じゃあね、お姉ちゃん」
その言葉と共に強さを増した握力に潰されて私は永遠の眠りに付いた。




