ゴルドVSカグラ
オーパルとカグラたちが戦闘を始めたのを横目に私は蜂魔人と相対していた、魔人は剣を出現させると半身になり構える、私も剣と盾を構える、先に動いたのは私だった、先ずは距離を詰めて斬りかかる、蜂魔人は横にステップし避けそのまま斬ってくる、盾のなく剣の振りにくい右側に回り込んで斬る、私は何とかそれを後に下がり避けた、明らかに戦いなれている、今まで実力で生き残って来たのだろう、解放状態で一気に決めてやる。
「魔力解放!」
炎に包まれた私は次の瞬間目にも止まらぬスピードで飛び出し蜂魔人を切り裂く、魔人は苦し紛れに反撃するがもう私はそこには居ない、後ろに回り込んでいた私は振り向く蜂魔人を斬る。
「プロミネンスエッジ」
「があぁ!」
切り裂かれた蜂魔人は吹き飛び壁に叩きつけられた、だがすぐに起き上がり構える、タフな魔人だ、並の上位魔人なら今ので消滅していっている、だが流石に苦しいのか肩で息をしている、今こそ攻め時だが時間だ。
魔力解放は一時的に強くなるが弱点がある、その名の通り魔力を解放するのでこの状態は長く保たないのだ、私は魔力が無くなる前に魔力解放を解除した、すぐに蜂魔人に斬りかかる、蜂魔人は私の剣をわざと受け止めて私の動きを止める、そして剣を持たない手の針で突いてきた、咄嗟に剣を離して避けようとしたが間に合わず刺されてシールドが割れる。
「くっ、まさか魔人でここまで強いのが残ってるとは」
「お互い死にたくはないだろ、俺は戦いは嫌いなんだよ、俺を見逃せ」
ここに至ってそんな事を言う魔人だが、もちろん聞いてやるつもりは無い、こいつが生きているだけで無駄に人が死んでいくのだ、そんな事はさせない。
私は無言で剣を構えると残った無けなしの魔力を集めて炎の大剣を作る、魔人は左手の針から毒液を飛ばしてくるが大剣の炎で払って駆ける。
「ボルカニックブレイド!」
私の大剣は蜂魔人を切り裂く、だが、大剣と同時に蜂魔人の突き出した針も私のお腹を貫いていた。
「結局こうなるのか……お前は……」
喋りかけたまま蜂魔人は消滅していく、蜂魔人が消えて針が刺さっていた所から大量の血が出てくる、その場に崩れ落ちて私の意識は急速に遠のいていった。
――――――――――――――――――――――――
コロナが戦っていた場所に戻るとコロナは変身を解いた状態で倒れていた、由希からは大量に血が出ていて魔法で治癒しても助かるかどうか分からないほどだった。
「由希ちゃん! しっかりして!」
私とシヴァで治癒魔法をかける、助かるかは分からないがやれるだけのことはやる、魔法を掛けていると後ろからコツコツと誰かが歩いてくる音がした。
「みぃつけた、お姉ちゃん達……ボクと遊ぼうよ」
振り返ると魔法少女がこちらへ歩いてきていた、黒いドレスアーマーにハルバード、ドレッドの話に出てきた魔法少女だ、名前は確か魔法少女ゴルド。
「こんな時に!」
こいつの凶悪性はドレッドから聞き及んでいた、一刻を争う事態なので私がせめて足止めを担うべきだ。
「コロナを連れて逃げて!」
シヴァが頷きコロナを背負って逃げていく、私はゴルドをここから通さないようにそちらの道に立ちはだかる。
「お姉ちゃんがボクと遊んでくれるの? イイけど少しは楽しませてね?」
本当に小さな子供みたいな事を言う、だが強さ計り知れない、今も馬鹿げた魔力を感じる、格上相手に出し惜しみは不要だ。
「ふざけた事を言わないで! 魔力解放!」
氷の鎧を纏って双槍を構える、私は姿を消して代わりに分身を二体出す、分身達と共にゴルドへ仕掛ける、それぞれ分身達は槍を突き出すが、体さばきと武器を持たない左手で完全に捌ききる、だが、透明化している私は捉えられない、背後から槍を突いてシールドを削ろうとした、だが急に振り向いたゴルドが双槍をハルバードで受け流す。
「そういうの、何となく分かるんだよね」
「くっ……」
透明化を解いて分身と共にゴルドへ猛攻を加えるが分身の攻撃ではシールドを殆ど削ることすら出来ない、私の攻撃は全部受けられてまともに当たらない、こうなれば動きを止めて大技で決める。
「絶対零度」
半径五メートルの範囲の時が凍りつきゴルドの動きが止まる、その隙に距離を取り槍を投げる構えに入る。
「デュアルグングニル!」
放たれた第一の槍は時が動き出した直後のゴルドに当たり仰け反らせる、そして第二の槍がゴルドに直撃しゴルドのシールドを削り後ろへ吹き飛ばした。
「貴様、何をしたァ!」
ゴルドはダメージを与えられて頭に来たようで立ち上がりこちらへ走り出す、その瞬間ゴルドのスピードが急速にあがりすれ違いざまにハルバードで殴り飛ばされる、分身して攻撃に備えるが分身も一瞬で消されてゴルドが立ち上がった私に迫る。
「破城槌」
「がはっ!?」
目にも止まらぬ速さで出された拳で吹き飛ばされる、そして私の魔力解放が終わる、魔力も殆ど残ってない上にシールドも先程の攻撃で割れかけていた、だが逃げる事も出来ない。
「やっぱりボクが一番強いんだ、あれはなにかの間違いなんだ……」
「魔力解放でもダメなんて、どうすればいいの……」
ゴルドが笑いながら歩いてくる、そのゴルドにどこからか飛んできた電撃を纏ったムチが巻き付く、ゴルドは脱出しようともがくが拘束を外せない。
「トールハンマー!」
動けないゴルドに向かってオーパルが電撃を纏って飛び蹴りを放つ、ゴルドはまともに食らって怯み数歩後ろへ後ずさる。
「グングニル!」
「ぐあ!」
怯んでる隙に余っている魔力をつぎ込んでグングニルを放つ、ついにその硬いシールドを破壊し更に本体にまでダメージが浸透したようだ、ゴルドは地面を爆破して煙を巻き上げる、煙が晴れた時そこにゴルドの姿は無かった、何とか撃退出来たようだ、だがオーパルがそこに居る、絶対絶命なのは変わりなかった。
「そんな顔しても殺しはしないわよぉ、あのムカつくガキをいたぶりに来ただけだから」
オーパルはこちらをチラリと見た後すぐに去っていく、どうやら本当に助かったらしい、私は安堵してシヴァが逃げていった方向に歩き始めた。




