新たな決意 コロナVSゴルド
「起きて……シヴァ……シヴァ!」
「うっ……ここは……?」
気を失っていたシヴァを何とか近くの建物内まで連れて起こす。
「ドレッドさんは? あたし途中で気を失っちゃってそれから……」
「ドレッドはゼリスの足止めをしてくれている、すぐに助けに行かないとドレッドが危ない」
シヴァが頷くのをみて二人で外に出る、するとそこにはまるで大型の台風に襲われたかのような暴風に見舞われていた。
「これはゼリスの技かしら、何ていう大規模な魔法なの、魔力量が桁違いだわ」
「上を見てください! ドレッドさんが!」
上を見上げるとドレッドの光線とゼリスの爪がぶつかり合っていた、爪が光線ごとドレッドを切り裂きドレッドは明らかな致命傷を負いながら空から降ってくる。
「あ……うそ……うそよ……」
「くっ!」
私は呆然としその場に膝をつく、シヴァは降ってくるドレッドを受け止めてその場に優しく寝かせた。
「ドレッド……そんな!」
「まずは一人、次はどちらですか、せっかく仲間が命を張ってまで稼いだ時間を無駄にして、愚かなことですね」
「あなたという人は!」
怒りに燃えるシヴァが高速で駆けて攻撃を仕掛ける、銃で撃ち手甲で合間に打撃を加える、だがゼリスは鉤爪で銃弾をすべて弾いてしまう、手甲による攻撃も体さばきにより避ける、ゼリスも反撃の爪を繰り出すがシヴァはそれに対応して互角の状態で拮抗していた。
「忌々しいですね、あなたはいつもわたしの上に立つ……いつもいつも!」
「あなたは誰? あたしの事を知っているのなら、こんな戦いは辞めようよ、知り合い同士で命を奪い合うなんて」
「うるさいんですよ、あなただけは死ななければならない!」
ゼリスの猛攻が続く、シヴァはゼリスに対して決定的な敵意を持てないようだ、私はドレッドを見る、頼りがいのある姉のような人物だったドレッドが無残に切り裂かれている、私は人を殺すなんてとんでもないと思っていた、だが、ゼリスを見る。
ドレッドを殺して、さらにシヴァまで手にかけようと攻撃している、シヴァは恐らく勝っても殺しはしないだろう、そんな相手に明らかな殺意を向けている、許せない、ゼリスを見ていると心の底から憎しみが湧いてくる、シヴァが蹴り飛ばされてるのを見て私はついていた膝に喝を入れ立ち上がる。
「ゼリスーーーーーーーー!!」
私の身体から憎しみと共に魔力が湧いてくる、その心のままに伝わって来た言葉を叫ぶ。
「魔力解放!」
私の身体から極寒の冷気が漏れ出てくる、身体が氷の鎧を身に纏い両手には長槍を携えた氷の騎士、この力があればゼリスを倒せる、こちらを警戒するように身構えるゼリスと対峙する。
「魔力解放……コロナと同じ様なものか……」
ゼリスは少し警戒している様子だが構わずに私は突撃する、大分早くなった、だがこれではゼリスのスピードにはついていけない、ゼリスも自分に及ばないスピードで安心したのか笑みを浮かべていた。
「ふふ、少し早くなったようですが、その程度の速さではわたしは捉えられませんよ」
ゼリスが目にも止まらぬ速さで懐に潜り込んで来て鉤爪を振るう。
「ストームレイダー!」
氷の鎧はゼリスのあの恐ろしい威力の爪を完全に受け止め切る、そしてゼリスの爪は凍りつきそのまま崩れていく。
「なっ!」
ゼリスはすぐさま下がろうとするが逃がさない、思いついた魔法を使う。
「絶対零度」
半径5メートル程の範囲の時を凍らせる、ゼリスは後ろへ下がろうとした状態のまま固定された。
「ストライクスピア、インパクトランス、デュアルグングニル!」
研ぎ澄まされた槍の突きと槍から放つ衝撃で空へと打ち上げる、そこで動けるようになったゼリスはハッとした様子でこちらを見るがゼリスの方にグングニルが二本迫っていた。
「こんなもの!」
ゼリスはデュアルグングニルを受けるが、大してダメージを受けた様子もなくグングニルを利用して飛んでいく、追う事も考えたが追いつけないだろう、私は変身を解除してドレッドに駆け寄る。
シヴァが懸命に魔法でドレッドの身体を綺麗にしていた、最初は無残な姿に変えられていたが、今はいつもの綺麗なドレッドがまるで寝ているだけかのように横たわっている。
「魔法って、本当にやりたいことは出来ないんですね、こんなにも助けたいのに、あたし……どうしたらいいのかな……」
シヴァはドレッドの死にポロポロと涙を流しながら語り出す。
「でも、この戦いに勝てばみんなを生き返らせる事が出来る、また勝たなきゃいけない理由が増えたね」
泣いてる場合じゃない、挫けている場合じゃない、そう言い聞かせて涙をこらえる。
「あっ、ドレッドさんの身体が……」
どんどん消滅していっている、魔力となってゼリスに吸収されるのか、初めて魔法少女がこうなるのを見た、こんな光景は繰り返させない。
「行こう、私達のやるべき事をやらなきゃ、残りの魔人を倒して場合によっては魔法少女も倒さなければならないからね、じゃないと願いを叶えることが出来無くなるわ」
「はい……」
私とシヴァは決意を新たに魔人を探すためにその場を去っていった。
――――――――――――――――――――――――
「はあぁぁぁ!」
「ゴギャァァァ!!」
猛毒の炎が鳥魔人を包み込み消滅させていく、また魔力が増えるのが分かる、魔人をまた倒す為に探知の魔法を使おうとするが、すぐに辞めた、膨大な魔力を纏った何かが近づいてくるのを感じる。
「最近ボクが育ててる魔人を狩ってるのお前かな? ダメだよ、それはボクのオモチャなんだからさ」
見たことの無い魔法少女だ、黒いドレスの鎧を纏っている。
「魔人を育ててる? 何のために?」
「魔人ってすごく弱いからさ、少しは楽しめるように育ててあげてたの、でもお姉ちゃんが構わず殺しまくるからぜーんぶ台無しだよ、勿論責任取ってくれるよね?」
黒い魔法少女はこちらへ余裕綽々に歩いてくる、この少女からは嫌な気配がする、最初から全力で行く!
「ボルカニックブレイド!」
炎の大剣で切りかかるが、ハルバードで受け止められる、そのまま押し切ろうとするが、少しずつ押し返される。
「へぇ、お姉ちゃん面白いね、もっと楽しませてみてよ」
余裕を崩さないまま黒い魔法少女はハルバードでボルカニックブレイドをはじき返す、そのまま駆けてきてハルバードを勢いよく振り下ろす、盾で受け止めるが押し潰されそうになったので弾いて転がりハルバードを避ける、起き上がりすぐさま剣で切るがハルバードを持っていない手で掴まれて頭突きを入れられる、怯んで思わず剣を手放してしまう。
「あはは!」
ハルバードが横に振るわれるが防げずにまともに食らって吹き飛ぶ、すぐに立ち上がり剣を生成し切りかかるがハルバードのリーチにより容易に近づけない、ハルバードによる突きを避けてそのまま一撃を入れようとするが蹴りで怯まされ。
「破城槌」
「ぐあ!」
魔力を帯びた拳の強烈なアッパーを貰いシールドが割れる、出し惜しみ出来る相手じゃない、私は剣を構え。
「魔力解放!」
魔力を解放して燃え盛る炎の双剣で切る、黒い魔法少女はこちらのスピードに対応出来ずに切られるが、やたらとシールドが硬い、あまりダメージは通っていない、毒耐性もここまでの魔力だとそもそも毒が通るか怪しいだろう。
「プロミネンスエッジ!」
猛毒の炎の双剣で切り刻む、反撃のハルバードが振るわれるが避けて後に回り込む。
「フレイムバースト!」
たたらを踏んでバランスを崩した黒い魔法少女へさらに攻撃を加える、剣を少女の背中に振り下ろした瞬間少女の姿が消えた。
「なにっ」
「ちょっとびっくりしちゃったよ、まさか固有能力を使わされるなんて、お姉ちゃん本当に面白いんだね」
いつの間にか後ろに回り込んで居た少女のハルバードにより背中から切られる、何とか避けたが思い切り背中を切られて背中からどくどくと血が出ているのが分かる、すぐさま体勢を整えて構えるが解放状態の私さえ置いていく様な速さで迫ってきた少女に蹴り飛ばされそのまま壁に叩きつけられる。
「がはっ!」
私は吐血し、その場に崩れ落ちる、視界が霞んでいる、このまま死んでしまうのだろうか。
「お姉ちゃん残念だけどここまでだね、すごく楽しかったから魔人狩りの事は許してあげる、でもお姉ちゃんは生かしておけないなぁ、これ以上強くなっちゃうと面白くないもん」
「くっ、クソ……」
「バイバイ、永遠にね」
無防備な私にハルバードが振り下ろされる、咄嗟に目を瞑る。
いつまで経ってもハルバードの攻撃が来ないので目を開けると黒い魔法少女の後ろに黄金の瞳以外全てが白い少女が居た、その白い少女は片手でハルバードを止めて黒い魔法少女を無感動に見つめている。
「お前……不愉快だね、ボクの邪魔するなんて死刑だ」
白い少女はまるで邪魔な物を振り払うように手を払い黒い魔法少女を吹っ飛ばした、黒い魔法少女は一瞬唖然としたようだが、すぐに怒りに満ちた形相で白い少女へ攻撃する。
「お前……! うあぁぁぁ!!」
黒い魔法少女はハルバードを振るうが瞬間移動で白い少女はハルバードを避ける、そして生成した光の剣で黒い魔法少女を切り飛ばす、吹き飛んだ魔法少女は怒りの雄叫びを上げて私を上回るスピードで白い少女に切りかかるが、白い少女は何事もないようにハルバードを避けては黒い魔法少女を剣で切る。
「ボクはさいきょうなんだ……こんなこと有り得ない! 破城槌!」
私のシールドを打ち砕いたあの技が高速で繰り出されるが拳が届く前に光の剣で黒い魔法少女が切られて吹き飛ぶ、黒い魔法少女はそのまま姿を眩ませた。
白い少女は感情を感じさせない瞳でこちらを見ている。
「君は、一体何者なの、魔法少女?」
「否、監視者」
監視者、また訳の分からない存在が出てきた、お陰で助かったがこれからどうなるか分からない、この少女は今すぐ私をどうこうする気は無いようだ、魔法で怪我を治して休もう、私はしばらく白い少女に見られながらその場で身体を癒すことに専念した。




