魔法少女ゴルド
家から飛び出したわたしは始末するのに手頃な魔法少女としてカグラ、ドレッドを候補にしていた、この二人の固有能力も見破ったし、戦い方も全て把握している、後は見つけ出すだけ、そんな事を考えていたのが、悪かったのか横合いから飛んできた攻撃に反応出来なかった、視界の端から電撃が飛んでくるのが見えたがもう防げない、強力な電流を浴びて身体の自由が効かなくなり、移動の勢いのまま転がっていく、重さを軽くしてダメージは最小限に抑えたが、電撃のダメージは消せない、シールドのおかげで動けなくなるダメージでは無かったのですぐに立ち上がり電撃を打ってきた犯人を見る。
「めんどくさぁ、今ので死んでくれてたら楽だったのになぁ」
予想通りオーパルが出てきた、オーパルとは前に戦って敗北していた、固有能力は割れているが相性が悪くまともに戦える相手ではない、逃げようと重さを消して飛び上がるが。
「エレキフィールド」
「がぁ!」
電気の壁に阻まれて元の場所に戻されてしまう、その隙に近付かれて思考能力を奪われる、やばい! と思うが頭が真っ白になり、無防備な所を攻撃される。
「ライトニングウィップ」
「ぐっ!」
思考能力が元に戻るが、今の一撃でシールドが割れてしまう、やはりまだ勝てる相手じゃない、だが逃げ出す隙もない……!
絶体絶命のピンチをどう切り抜けるか、必死に考えながら固有能力の範囲に入らないようにジリジリ下がる、向こうは余裕を持って歩いてくるが、このままだとエレキフィールドの端に来てしまう、何か無いかと周りを探しているとエレキフィールドの向こう側から
黒色のドレスアーマーを着て身長以上のハルバードを引きずりながら歩いてくる幼い少女が見えた。
「待ってくださいオーパル! 今はお互い逃げるのです、ゴルドが来ています!」
「はぁ? ゴルド? 誰それ」
「わたしが知る限り最強最悪の魔法少女、アイツと戦闘になれば私達は遊び殺されます!」
「なら、最強最悪のゴルドって奴を倒せば私が一番って事よねぇ」
オーパルはゴルドと戦うつもりのようだ、都合が良い、どちらか一方が死んでくれれば御の字だ、ゴルドが何事も無いようにエレキフィールドを破って入ってきた、エレキフィールドが解除された瞬間わたしは重さを消して飛んで逃げた。
――――――――――――――――――――――――
「なんだか面白そうな事をしてるね、ボクも混ぜて欲しいなあ」
「こんなガキが最強だなんて、この私を馬鹿にしているのかしら」
オーパルは言いながら音速のムチを放つ、ゴルドはそれを防ぐ様子もなく直撃するが、何も無かったかのようにこちらへ歩いてくる。
「無駄だよ? ボクはさいきょうなんだから」
どうやら何かしらの能力で無力化しているか、圧倒的な防御力があるらしい、ならば思考能力を奪って電撃のムチを浴びせればいい。
ゴルドはこちらへ歩いてきて能力の範囲に入ってきた、その瞬間思考能力を奪い。
「ライトニングウィップ 」
動きが止まったゴルドに対して技を打ち込む、がゴルドはダメージを受けた様子もなく思考能力を取り戻したようだった。
「嘘でしょ? なんて硬さなの」
ゴルドは立ち止まり少しイラついた様子で問うてきた。
「今、ボクの頭に干渉してきたのお前? 不愉快だなぁ、そういうのさあ!」
そう言うと歩いた状態から遂に走り出してくる、技でも通用しないなら、必殺技を当てるしかない、電撃を纏ったムチで相手の身体を雁字搦めにして動きを止める、ゴルドはムチと電撃で動きを阻害される、私は飛び上がり、ゴルドへ向かって電撃を纏ったキックを放つ。
「トールハンマー!」
ゴルドはハルバードを持ってない左手でトールハンマーを受け止める、少し拮抗するが、トールハンマーの威力が徐々に落ちていく、そんな馬鹿な、必殺技が片手で止められてしまうなんて、ゴルドはトールハンマーを弾き返した、私は受け身をとる余裕もなく地面に落とされる。
何とか起き上がろうとするが近くに来たゴルドに横腹を蹴飛ばされてしまう、なんの技でもないただの蹴りで私のシールドが半分近く削られる、どうやら喧嘩を売ってはいけない相手らしい、反則なまでの攻撃力と防御力を持っていてとても太刀打ちできない、倒れ伏す私の頭をゴルドは楽しげに踏みしめる。
「ダメだよ? 弱いんだから調子に乗っちゃあ、別にお前なんていつでも殺せるからね、うーん、どうしようかなあ」
ゴルドはしばらく私の頭をボールのように扱いながらやがて足を離してこう言った。
「ボクが願いを叶えてもらうのはもう決まってる事だからね、今すぐお前を殺してもなんの旨みも無いし今日はもういいや、じゃあね」
何事も無かったかのようにゴルドは歩いて去っていった、私はしばらくして変身を解除して立ち上がると心の底から湧いて出てくる叫びに身を任す。
「絶対に殺してやる! 舐めやがって! ふざけるな……ふざけるなぁぁぁ!!」
魔法世界に河合 芽衣の怒りに満ちた叫びが響き渡っていった。




