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戦国商人立志伝 ~転生したのでチートな武器提供や交易の儲けで成り上がる~  作者: 須崎正太郎
第一部 黄金立志編(1551~1553)

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第五十八話 熱田門前市と剣つき拳銃

 ひさびさに熱田にやってきた。

 わいわい、がやがやといろんな人たちが蠢いている町なのだが。

 それと同時に、相変わらずうさんくさいものばかり並んでいる門前市でもある。

 露天商が売っているのは、数打物(安物)の日本刀に壊れた鉄砲、物干し竿に破れた衣。どこからどう見ても腐った野菜に、得体のしれない干し魚……。あれやこれやといろんなものが並んでいるのだ。いや、もちろん普通の店もちゃんとあるんだけど。


 そんな市場だというのに。

 ――伊与はなぜだか、瞳をきらきらに輝かせていた。


「弥五郎! カンナ! ここは面白いな!? 先ほどのガラス玉は素晴らしかった! それと一目で贋作と分かる雪舟の絵もよかったな! 見ているだけで胸がすっとする!」


「……なんで贋作を見て胸がすっとするん……?」


「……あの絵、めちゃくちゃヘタだったのにな……」


 はしゃぎ回る伊与を見て、俺とカンナは呆れるのみだ。伊与ってこんな子だったっけ。


「おっ、見ろ、弥五郎! あれは銃じゃないか? なんと300文だぞ!」


「銃は銃でも、引き金とかカラクリの部分だけだ。あれじゃさすがに使えないよ……」


「そうか? いや、しかしこう――あの引き金を家に飾ったら、それだけで素敵な感じになる。そうは思わないかっ? 堤さまの小刀と一緒に並べたら、家の運気が上昇するかも!」


 どんな風水だよ、それ。

 俺はため息をついて首を振った。

 伊与の変貌は、堤さまの数か月の教育のせいだろうか。

 おめでとう、帰ってきた幼馴染は珍品コレクターに進化した。


 ……しかし熱田市に来たのは、正解だったかもしれない。

 やたらゴチャゴチャといろんなものが売られている場所なので、なにかヒントがつかめそうな気がするのだ。


「見たこともない銃か槍を500、か……」


 槍はともかく、銃ならば、これまでもリボルバーやら連装銃やら作ってきた。

 これらは当然、信長や斎藤道三からすれば見たこともない銃だろう。


 しかし、だ。

 今回は予算制限がある。

 謝礼まで含めて3000貫ぽっきり。

 そして数は銃か槍を500。槍はまだともかく、銃を500揃えて3000貫というのはそうとう無茶だ。


 連装銃はひとつ作るのに48貫450文。

 リボルバーはひとつ作るのに28貫26文。……それぞれかかる。

 これを500作るのは予算オーバーだ。ましてリボルバーは俺にしか作れない。あれを500も作るとなると、さすがに過労死してしまう。


「安くて、それでいて俺以外の人間、つまり普通の鍛冶屋さんでも作れるような武器じゃないといけない……」


 そんな銃か槍、あるんだろうか?


 ――ところで、銃か槍、というこの条件。


 これだけ考えると、銃と槍をくっつけたらどうだ、みたいな発想が出てくる、

 実のところ、銃、ではないけれど、火器と槍がくっついているような武器はすでに存在している。

 飛火槍といって、槍の先端部分にロケット花火のような火薬筒をくっつけている武器だ。

 火薬と炎で敵を攻撃し、相手を驚かせたりダメージを与えた上で、槍をもって突っ込んでいくのだ。

 14世紀ごろの中国に存在したこの武器は、応仁の乱のころに日本にも伝来したが、威力の低さや命中率の悪さが理由であまり普及しなかったと言われている。


「命中率や威力を考えると、火縄銃のほうが優れているわけだ。となると、火縄銃を改良して槍風にする……」


 銃に、小刀を取り付ける。いわゆる銃剣。

 17世紀のフランスで発明されたこの道具を、いま作ってみるのはどうだろう?


「いや、だめだ」


 思いついた瞬間、俺はセルフ却下した。

 火縄銃の長さは、個体差はあるがおおむね110センチから150センチ。

 それに比べて戦国時代の槍は短くても3メートル以上はする。


 そして槍の戦いは基本的に、長いほど有利なのだ。

 なぜなら戦国時代の接近戦とは、侍ひとりが槍をもって突撃するという戦いではなく、何十人もの雑兵が槍をいっぺんに繰り出して、相手とポカポカと殴りあうものだからだ。こうなると、相手より長いほうが有利である。前田さんみたいな達人ならともかく、一般的な兵が使うのなら、短い槍は役に立たないのだ。

 特に織田信長は、長い槍を好んだそうだ。竹槍の訓練をじっさいに見て、「槍は長いほうがいいようだ」と言い、自分の兵には3間から3間半(5.5メートルから6.4メートル)の長さの槍を使わせたという逸話がある。そんな信長に銃剣を提案しても、おそらく却下されるだろう。


「銃剣なあ。発想の方向は悪くないはずなんだけどな。実際にヨーロッパで使われる武器なんだし……」


「弥五郎。剣銃ってなあん?」


「剣銃じゃなくて、銃剣。そういう武器があるんだよ」


 と、カンナに答えたそのとき。

 剣銃という単語から、逆の発想が俺の中に浮かんだ。


「剣つき拳銃――」


 という武器が、18世紀中ごろのヨーロッパにあった。

 その名の通り、火打石式の拳銃にソード(剣)をくっつけたもので、剣としても拳銃としても使える代物だった。


 銃の発射準備を整えて、砲撃。

 次いで突撃し、剣で敵に向かって斬り込む。

 そういう使い方をしていたものだ。ガンブレード、とでも呼ぶべきか。

 ゲームっぽい響きなんだけど、じっさいにこの世に存在する武器である。


 どうだろうか。

 この剣つき拳銃を開発して。

 その剣つき拳銃を、さらに棒と合成してみるというのは。


 長さを切り詰めた短い火縄銃、すなわち馬上筒をまず作る。

 それに刀を取りつけ、和製剣つき拳銃を作る。この時点でも銃や刀として使える。


 そこに、さっき見かけた長い物干し竿。

 この先端に和製剣つき拳銃を、袋穂ソケットにして取り付けられるようにしてみたら、どうだろう?

 そうすれば、槍としても使えるし、状況に応じて拳銃としても刀剣としても使える。

 銃を発射して、ただちに突撃する、銃剣のような使い方もできる。


 先端がふつうの槍より重くなるが、さっきも考えた通り、雑兵の槍の使い方は『突き刺す』よりも『殴る』ほうがメインになる。重さが増す分、威力も増えるだろう。

 もっともそうなると、先端に取りつける拳銃が壊れやすくなってしまう。だがそこは、拳銃の引き金の部分に、護拳部(手を守る部分。巨大なツバ)をとりつければ、なんとかなる。


 ……これなら見たこともない槍でもあり銃でもある。

 銃が小さい分、コストも安くつくかもしれない。

 うまくいくかは分からないが……とにかくやってみるか!


「よし、決めた。やるぞ!」


「えっ!? な、なにがだ!? 引き金と小刀を飾るのか!? そうか、そんなにいいか!」


「弥五郎、アンタまでそんながらくたを求めるとね?」


 伊与が瞳をきらめかせ、カンナがポカン顔になるが――

 いや違う、そうじゃなくて。


「考えがまとまったんだ。とりあえず、材料を集めるぞ、手伝ってくれ!」

剣つき拳銃は実在の武器です。

FF8のガンブレードが有名ですがアレとは違います。

拳銃の、引き金のところからソードが伸びている武器です。

弥五郎が言っているように銃としても剣としても使える武器です。

ググっても(作者が参考にしたものとは)違う画像ばかり出てくるけど。


興味のある方は「図解 世界の武器の歴史 石斧から自動火器まで(ISBN:4766127889)」を読んでみてください(この作品を書くにあたって使用している参考資料のひとつです)。この本の79ページに剣つき拳銃の写真が載っています。

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