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第五十三話 萱津の戦い

『萱津の戦い』がどういう戦いか、説明するのは少し手間が要る。

 分かりにくいのだが、この時期の尾張国は、実は三重の権力構造になっている。

 本来、尾張国で一番偉いのは、守護大名の斯波義統という人物だ。しかしこの人には実力がないので、誰もリーダーとして認めない。

 というわけで、守護の次に偉い守護代というのが出てくる。いわば副リーダーで、これが織田信安、織田信友というふたりの人物だ。前者は尾張北部の岩倉城、後者は尾張南部の清州城に住んでいるのだが、ところがこの人たちも尾張全土を掌握するには至らない。


 そこへ、織田信友の縁戚であり、家来でもある織田弾正忠信秀が登場する。信秀は優秀だったので、尾張国の人々は彼こそがリーダーだと認めた。信秀は尾張一の実力者となった。

 その信秀が死んだ。後継者は、周囲にうつけと呼ばれている織田信長である。

 これで揉め事が起きないほうが嘘だ。副リーダーの織田信友は、信長から実権を奪い返そうと立ち上がった。その手始めとして信友は、重臣の坂井大膳に兵を与え、信長の支配している深田城、松葉城を攻めとったのだ。すると信長も黙ってはいない。ふたつの城を奪い返すために兵を出す。


 かくして、織田信長軍と坂井大膳軍は激突する。これが『萱津の戦い』だ。




 いくさの噂を聞きつけた俺は、言った。


「急いで津島に戻ろう。作った分だけでもリボルバーを大橋さんに渡したい」


 そういうわけで、俺たちは津島に戻ってきた。

 しかし、大橋さんはすでに津島にいなかった。

 いくさの開始はもう少しあとだが、戦う人間はすでに戦場に出向いているのだ。


 俺は自称・聖徳太子たち5人を引き連れ、戦場の萱津に向かった。

 この時点で俺は、28貫26文をかけて作るリボルバーを、10丁製作している。



《山田弥五郎俊明 銭 1073貫56文》

<最終目標  5000貫を貯める>

 商品  ・火縄銃    1

     ・リボルバー 10

     ・炭      4



 このリボルバーを、津島衆に届けなくては!




 戦場の萱津は津島から近く、すぐに到着できた。


「大将、あそこだ! 戦をやっているぞ!」


 と、自称・聖徳太子が叫んだ通り、織田信長軍と坂井大膳軍が戦っているのが見えてきた。

 背旗(兵が背中に差している旗)の数を見る限り、両軍の数は、ほぼ互角だろうか。

 動きは、織田方のほうがやや鋭く見える。


「なんとか津島衆に、リボルバーを届けたかったんだが……」


 俺は抱えた袋の中を見つめた。

 この中には完成させたリボルバーが入っているのだ。


「くそ、居場所が分かれば銃を渡せるのに」


 と、そのときだ。

 坂井大膳の軍が、突如わっと盛り上がり、織田方を突き崩し始めたのだ。


 強い。

 動きはバラバラなのだが、妙に士気が高いのだ。

 なんだ? なにがあった?


「大将、あそこをご覧くだせえ! あの兵、とてつもないですぜ!」


 自称・平将門が、坂井勢の一部を指さした。

 その通りだった。たったひとりの坂井兵。

 足軽だと思うが、ずいぶんと小柄なくせに、刀をひたすらに振り回し次々と織田兵を斬り倒している。


 あの兵の活躍で、清州方の士気が上がっているのか?

 誰なんだ、あいつは!?


 と思った次の瞬間だ。

 ……俺は目を疑った。

 その小柄な兵には、確かに見覚えがあったから。

 長い黒髪をひとつに束ねて、戦場の中で駆け躍っているその人物。

 彼女は、彼女は――




「…………伊与っ!?」




 間違いない!

 大樹村で共に育ち、生き別れになった彼女だ!

 伊与が、戦場のど真ん中にいる!!

本日体調を崩しております。

すみませんが感想等への対応はまた後日にさせてください。

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