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第三十六話 駿府最後の仕事

 さて、具足1000着は今川家に無事渡された。

 代金として、20000貫を受け取る。

 具足の仕入れに10000貫を使ったから、10000貫が純粋な利益となった。



《山田弥五郎俊明 銭 23421貫740文》

<最終目標  30000貫を貯めて、銭巫女を倒す>

<直近目標  今川領に潜入し、情勢を探る>

商品  ・火縄銃       1

    ・パームピストル   1

    ・甲州金      10



 用意された1000着の最新具足を着込んだ足軽部隊を先頭に――

 今川義元は万を超える兵を率いて、川中島に出兵。

 対立する武田軍と長尾軍の調停に入った。


 義元の率いた兵数もさることながら、その具足の新しさと利便さに、武田家と長尾軍の兵たちは驚いたと伝わる。

 調停は、成功した。武田晴信と長尾景虎の戦い、いわゆる『第二次川中島の戦い』は終わりを告げた。1555(弘治元)年、うるう10月のことである(当時の暦は太陰暦なので、閏月といって、同じ月が2回あることがある)。




「川中島の和睦には、梅五郎の功績が大であったね」


 と、嘉兵衛さんが俺を褒めてくれたのは、川中島の戦いが終わってからしばらく経ち、なにもかも一段落ついてからのことだ。

 俺の泊まっている宿にて、宴が開かれていた。嘉兵衛さんを上座に、俺、藤吉郎さん、伊与、カンナ、あかりちゃん、次郎兵衛、さらにおごうから、自称・聖徳太子たちの5人衆まで。フルメンバーが揃っていた。

 酒や、茶、白湯に加え、焼き魚や刺身の類が揃えられ、さらには白米までが並び、デザートとしてへぼ五平まで揃っている。


 これだけのご馳走が揃ったのは、転生してから初めてだ。

 嘉兵衛さんが、俺たちの苦労をねぎらうために用意してくれた食事だった。

 食事はいずれも美味で、俺たちは舌鼓を打った。


「具足1000を素早く手に入れた手並み、まったく見事。飯尾さまから聞いたけど、今川屋形もお喜びだそうだよ」


「それはなによりです。今川さまのお役に立てて嬉しゅうございます」


「実はね、さらにいいことがあったんだ。松下家の硯を、今川家の重臣の方々が求めてくれてね」


「それはめでたい! また利益になりましたね!」


「うん。――【硯 7貫】が200個、売れた。松下家の蔵に眠っていた硯が、これで全部さばけたよ」


「よろしゅうございましたなあ。松下さまの苦労も報われましたな!」


「あはは、与助、あまりおだてるもんじゃないよ。……とはいえ、硯が売れたのはよかった。梅五郎、約束だ。売上の半分をそなたに渡そう」


「と、とんでもない。折半の約束は俺たちが売ったときのみのはずです。嘉兵衛さんがじきじきに売った硯の代金は、嘉兵衛さんのものですよ!」


「そう言わずに受け取ってくれ。梅五郎にはずいぶん世話になったし、ものの売り方も教わった。俸禄だと思って受け取ってもらわないと、こちらも困るよ」


「し、しかし……」


 俺はなおためらっていたが、嘉兵衛さんは、そんな俺の肩をぽんぽんと叩いて、


「某の、梅五郎に対する友情の証だ。受け取ってくれ」


 さわやかに笑った。

 その笑顔は、とてもまぶしい。

 俺は、一度、大きく平伏してから、


「……ありがとうございます。それでは遠慮なく、いただきます」


 そう言って、【硯 7貫】が200個売れたその代金1400貫の半分、700貫を受け取ったのである。



《山田弥五郎俊明 銭 24121貫740文》

<最終目標  30000貫を貯めて、銭巫女を倒す>

<直近目標  今川領に潜入し、情勢を探る>

商品  ・火縄銃       1

    ・パームピストル   1

    ・甲州金      10



 いよいよお金も貯まってきた。

 これだけあれば、尾張に戻り、銭巫女と戦うこともできそうだな……。




 ――そう思っていた、そのときである。




 ずしずしずし、と足音が聞こえてきた。

 なんだ、と思う間もなく、部屋の襖ががらりと開く。

 そこには侍がひとり、立っていた。いや、かたわらには小者を2人、従えているが……。侍はひとりだ。

 その侍は、飯尾豊前守さんだった。


「おお、飯尾さま。これはこれは……いま、梅五郎たちと宴を開いていたところですよ」


 嘉兵衛さんが即座に立ち上がり、飯尾さんに上座を譲ろうとする。俺たちもその場で平伏した。


「ご多忙かと存じ、お声をかけず失礼しました。どうぞどうぞ、飯尾さま。今日は良い酒も用意しておりますので――」


「それどころではないぞ、嘉兵衛。……それに梅五郎と与助!」


 飯尾さんは、やや険しい顔で俺たちのことを呼んだ。なんだなんだ?


「大変なことになった。……梅五郎、与助。……なんと今川屋形がじきじきに、そなたたちに会いたいそうじゃ!」


「な――」


「なんですと……!」


 俺と藤吉郎さんは、思わず顔を見合わせた。

 会いたい? 今川義元が、俺たちに!?

 俺は驚き、しかしすぐに落ち着き、隣の藤吉郎さんと目を合わせた。

 藤吉郎さんはこくりとうなずく。


 ……そろそろ駿府を去るつもりだったが、最後のイベントがここで起きたようだ。

 今川義元。――東海一の弓取りと、なんと対面するチャンスが得られたのだ!!

 ここは義元と会って、必ずなにかを得てみせる!!

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