第95話「おっぱいがデカい」
朝食の後片付けを終えた俺たちは、エミリアたちの服と下着を洗濯している。
「なんかサキさんとナカミチの服、酒臭くないか?」
「酒臭いですね」
「まさか酔っ払った状態で大トカゲと戦っているのかしら?」
「まさかとは思うが、やりかねん連中しか居ないので何とも言えんな」
俺たち三人は、向こうでどんなハチャメチャ大冒険が繰り広げられているのかを想像しながら洗濯を終えて、早速テントの下で追加の洗濯物を干した。
「今日は何をするかな? 準待機でこの雨だと、外には出ない方が良さそうだぞ」
「一日暇なら手間の掛かるソースでも作ってみようかしら」
「じゃあ私は部屋に居ます。ちょっと前髪が気になるのとコロコロもしたいので」
「俺は雑用でもするかな……」
ティナもユナも自由行動を始めたので俺は自分の冒険用の道具を整理したり、エミリアがちょくちょく手に入れて来る地図を壁に張り足したりしている。
気になる部分を片付けたりもしていたが、あまりにも暇なのでついついサボりがちになる家計簿を付けることにした。
まず勝手口横のオーニングテントが銀貨2300枚、サキさんの部屋の姿見が銀貨1700枚、新品を買えばいいのに中古品で済ませたようだ。
プリスカやサキさんの自作の制服代が銀貨510枚、掛け軸と洗濯かごと、その他の日用品や食材などが銀貨387枚……おっと、一の位は無視するんだっけ。まあいいか……。
今回は全員に持たせている金貨12枚の消費は無かったようだ。
合計の銀貨4897枚を引いて、総資産は銀貨32万3783枚になる。
まだまだ余裕があるとは言え、オルステインの冬がどんなものになるのかは実際に冬が来るまでわからない。エミリアに聞いても感覚が違うので想像はできないだろう。
案外、俺たちなら平気かもしれないし、逆に本気で身動きが取れなくなるのかもしれない。暖房費がどうなるかなど、越してみて初めてわかる事もある。
何せサキさんが帰り次第、秋物を揃えようという話が出ているところだし、最初の一年はずっとこんな調子かもな。
俺が頭の中で電卓を弾いていると、ユナが広間に下りてきた。
「どうですか? 伸びてきた前髪を整えてみたんですけど」
「ユナはそっちの方が可愛いな」
幼く見えて良い……とは流石に言えんか。俺もちょっとコロコロして来よう。
ユナと入れ違うように部屋に戻った俺は、鏡の前で素っ裸になって念入りにコロコロをした。コロコロの威力は超強力だ。
未だにチン毛が生えてくる様子がない。いくら何でもそろそろ生え始めても良さそうなものだが、まるで最初から生えていなかったかのような状態なので、だんだんイラ付いてきた俺は百回くらいコロコロを股間に押し当ててやった。
もう知らん。チン毛なんか二度と生えてくんな!
また生えてくるという期待があるから毎日気になる。要するにもう一生生えて来ないっていう話なら気にしなくて済むという事だ。我ながら冴えている。
その後も俺は念入りにコロコロをして納得したあと、自分の姿を鏡に映す。
最初のうちは恥ずかしくて自分の顔すらまともに見られなかったが、実のところ俺は相当可愛いことに気付いたので、最近は自信が付いてきた。
しかもおっぱいがデカい。寄せて上げるやつじゃなくても谷間ができる。エミリアの奇乳を除けばパーティーで一番胸が大きいのは俺の誇りでもある。
やはり、おっぱいがデカいと心にも余裕ができるみたいだ。
俺は自分のプロポーションを念入りに確認したあと、これでチンチンが付けば完璧だなあと思いながら服を着て部屋を後にした。
「ミナトさん出てきましたよ」
俺が二階の廊下に出ると、まるで部屋から出てくるのを待っていたかのようにユナが言った。
テーブルの上には皿に乗った食べ物が置かれている。ティナが何か作ってくれたのだろう。せっかく待っていてくれたようなので、俺は足早に広間へと下りた。
「あ、もしかしてシュークリームか?」
「なかなか上手くできたわよ」
「早く食べましょう。熱めのお茶も用意してありますよ」
俺たちは皿の上のシュークリームを手に取って、口の中に頬張った。
子供の頃は良く食べたものだが、中学以降は食った記憶がない。
「半分に切ってクリームを挟んであるのか」
「小さい口金が見つからないのよ。この世界でも売ってるのかしら?」
「見たことが無いですね。牛乳を移す大きな漏斗ならどこの店にもありますけど」
「そういう探しても無さそうなのはメイド・イン・ナカミチだな」
とはいうものの、ティナのシュークリームはカスタードとホイップの二段重ねで俺の知ってるシュークリームよりも美味かった。
「一個でも結構ボリュームあったな。残りはエミリアに食わせてやるか」
「サキさんも好きそうですしね」
俺たち三人はユナの淹れた熱いお茶で一息入れた。ほのかな渋みが甘ったるくなった口を流してくれるのでちょうどいい。
「それじゃあ私もコロコロしてくるわね」
俺とユナがコロコロをしていたのを知ったティナも自室に戻って行った。
今日は特にやりたい事が無くなった俺は暫くの間家の外を眺めていたのだが、この雨で急に肌寒くなってきたので木窓を閉じることにした。
「もう薄手のミニワンピ一枚だと寒い時があるなあ」
「上に羽織る物が欲しいですね。夜に出る用事があるときは、一枚重ねないとしんどいですよ」
「ううむ。そういえば暖炉って掃除しなくてもいいのか?」
「私も気になって煙突を覗いたんですけど、特に汚れた感じはなかったですよ」
ユナに言われて俺も確認してみたが、特に煤の塊が付いているような感じはなかった。元はエミリアのおじ様の隠れ家だし、魔法の火がメインだったのかも。
「有り得ますね。暖炉の底も薪から出るような灰の汚れが殆ど無いですし」
「それなら暖炉はこのままでいいか。寒くなったら即使えそうだしな」
「暖炉の前には絨毯を敷いて、全員で座れるソファーがあると良いですね」
「いよいよエミリアには本の山を片付けて貰う必要が出てきたなあ」
広間は暖炉、調理場は窯で暑いし、一階部分の暖房は問題なさそうだ。
「二階の暖はどうしよう? 夏場は風と氷の精霊石で快適だったが……」
「薪ストーブでいいんじゃないですか? 薪ストーブに火の精霊石を入れて使えば排気の筒も必要ないですし」
「薪のストーブなんて見たことないなあ」
「普通は電気か灯油ですもんね。お父さんの実家だと普通に使ってましたけど」
「その辺全くわからんから、暖炉回りと一緒に買って来て貰おうかな」
ユナの父親の実家というと英国か。暖炉とかも普通にありそうだな。毎回丸投げになって悪いとは思うが、この辺もユナに任せておこう。
俺とユナが冬支度についてあれこれ話し合っていると、コロコロが終わったティナも夕食の支度をしに戻ってきた。
家の外ではまだ雨が降っているような音がしている。俺は洗濯物が気になってきて、勝手口から外を覗いた。
「濡れてはないが冷えてきたせいか湿っぽいなあ。もう取り込んでおくか」
「そろそろ外の夜乾しは厳しくなってきたわね」
まだ夕方くらいだと思うが、どんよりとした雲のせいで辺りは薄暗い。俺は洗濯物を取り込んでから、オーニングテントを畳んだ。
取り込んだ洗濯物を広間のテーブルの上で畳み終わった頃、気配もなくエミリアがテレポートしてきた。
「そっちの調子はどうなんだ?」
「順調ですよ。このまま行けば明後日の夕方には帰って来れそうです」
「こっちは一応、準待機ってことで家にいるんだが……」
「出払っていても大丈夫ですよ。大トカゲは人を襲わないですし」
「あ、そうなんだ」
「どうしても魚の臭いに釣られてくるので、魔法で適当に一掃しています」
取り越し苦労だったか。まあ危険が無ければ俺たちが待機する必要はないな。
ティナが木箱に入れた夕食と昼間のシュークリームを持ってきたので、エミリアは木箱と先程畳んだ洗濯物を抱えてテレポートしていった。
「家で待機する必要はないらしい。雨が止んでたら明日は買い物だな。この時期ならストーブの在庫も選び放題だろう」
今日の夕食は豚の丼と吸い物だ。かさばるのでエミリアには持たせなかったようだが、今日の吸い物はダシが濃くて美味い。
向こうのことを考えて皿物は作っていないようだが、明後日の朝まではこういう感じが続くのだろうな。
一息ついた俺たちは、夕食の片付けをしたあと風呂に入って、いつもの洗濯物は広間に干した。
歯磨きついでに風呂の木窓から外を覗いてみたが、雨はまだ止む気配がない。今日はもう何もすることがないので、早めにベッドに潜った。
「うーん。やっぱりコロコロした日は肌に当たる所が全部気持ちいい……」
「私は手と顔だけは毎日やってるわよ」
「そうなんですか?」
「見てほら、全然手荒れしないから、二人もやった方がいいわよ」
ティナは両の手を俺とユナの方へそれぞれ見せた。ティナの手は毎日家事をしているのに、ささくれの一つもない真っ白で綺麗な指だ。
俺はその手を舐めたくなってしまったが、ユナの前なので今日は我慢した。
その代わりに、俺はティナに甘えるフリをして足を絡ませていく。俺は脚フェチなので、互いにつるつるの足が触れ合うことに喜びを感じている。
そんな幸福感に包まれていると、いつしか自然に眠りに落ちた。
翌朝目が覚めると、ユナが俺の胸に顔を埋めていた。ちょっとびっくりしてしまったが、ユナはまだ寝ぼけているようで、幸せそうな寝顔を見せている。
そう言えばユナはまだ14歳だっけ。俺やティナやサキさんから見れば完全に子供なんだよな。いつもは一番しっかりしてると思うけど。
俺は自分の胸で幸せそうに寝ているユナを見ているうちに、起こすのが可哀想になってきたので、朝のおしっこを我慢して暫く様子を見ていた。
「……あ、あれ? あ、ミナトさん?」
「うん。おはようユナ」
「ごめんなさい。夢を見ていて……」
「気持ち良さそうにしてたから起こさんかった。いい夢だった?」
「はい。昔持ってたぬいぐるみの……」
夢の内容を聞かれたユナは、恥ずかしそうに答えた。俺のおっぱいはぬいぐるみの代わりだったのか……いいけど。
ベッドから出た俺とユナは、着替えて髪を梳かしてから朝の支度を終えた。
「雨止んだな。今日は街で羽織る物でも買いに行こうか」
そんなことを言いながら広間に戻ると、朝食を取りに来たエミリアがぼけーっと突っ立っていた。
もしかして、ここで食う時は椅子に座る、お持ち帰りのときは立っているというような自分ルールでも設定しているのだろうか? 相変わらず変な女だな。
「エミリア、昨日は一日雨降ってたけど、川の増水とか大丈夫なのか?」
「ナカミチさんの指示で河原から離れていたんですが、上流の方は降ってなかったのか大丈夫でしたよ。向こうは夕方には晴れてました」
「ナカミチの言う事聞いてれば安心だ。実際流されて死ぬやつもいるからな」
今日もティナが用意した朝食入りの木箱を持ったエミリアは、そそくさとテレポートして現地へ戻った。




