表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/572

第81話「防御面の強化」

 朝目が覚めると、ベッドには今日も俺一人が寝ている状態だ。開いた木窓からは朝日が差し込んでいる。俺は魔法の櫛で寝癖を直してから調理場へ向かった。


「おはよう。ティナの具合はどうだ?」

「もう大丈夫よ」

「良かった。今日はみんなで街に出られるな」


 朝の準備をしようと風呂場に行くと、サキさんとユナが先に準備を済ませているところだったので、俺も急いで準備をして、広間で放置プレイのエミリアと話をしている。


「近いうちに裏の河原で花火して遊ぼうと思うんだが、ジャック呼んだら来るかな?」

「たぶん講義を中止にしてでも来る気がします。相当気に入っていたようですし」


 いいことを聞いた。ジャックならその日に呼んでも遊びに来そうだな。



 エミリアと話をしていると今日もユナが食事を運んで来た。まだ本調子ではないティナを気遣ってくれているのだろう。

 今日の朝食はハムとチーズをクレープのような皮で巻いた物と、うちの食事としては珍しくフルーツの入ったサラダだった。


「たまには果物もいいな」

「いつも買おうとして買いそびれてしまうのよね」

「良さそうなのを見付けたら私が買ってきますね」


 ユナが見付けてきてくれるなら安心だな。たぶんハズレは買ってこないだろうし。






 俺は見たこともないフルーツをフォークで刺しながら、今日の予定を告げた。


「エミリアと相談した結果だが、今日は防具を買いに行くぞ。うちのパーティーは攻撃力はピカイチだが防御面が弱すぎるからな」

「何を買うんですか?」

「まず、今の防具を最高品質の物に換える。サキさんは初期に買った部位と買い足した部位で品質がバラバラだから、最高品質の部位に合わせて揃えよう」

「うむ。そこは気になっておった」

「ダガーも今のロングソードと同じ品質の物に揃えるからな」

「うむ!」


「俺たちは金属鎧なんて着れないから現状維持だが、ユナには魔法の盾を持ってもらう」

「私だけですか?」

「偽りの指輪のように集中してる間だけ防御魔法が展開する盾があるらしいんだよ。俺は偽りの指輪とごっちゃになりそうだから使えないけど」

「わかりました」


「ティナは魔法の杖のホルダーを買おう。特に古代竜の角の杖なんてもう二度と手に入りそうにないから落としたら最悪だ」

「そうね」

「古代竜の角の杖は最高峰の杖なので大切にした方がいいですよ。紐でホルダーと繋げていてもいいくらいです」

「やっぱりすごい杖だったのね……」


「あと前回の冒険で感じたが、俺たちも予備の冒険用の服が欲しい。俺なんか常時びしょ濡れで最悪だった」

「ミナトの服はカナンの町で買ったから同じのは無いわね」

「またティナとユナに選んでもらおうと思う……」


「私からもいいですか?」

「ほい」

「私たちの弓に矢を取り付けておくホルダーを付けたいです。魔法の矢を数種類持ち運ぶ事態になったら、矢筒だと種類がわからなくなりそうです」

「わかった。そういうのは特注になりそうだからユナに任せる」


 今日やることがまとまったので、ティナとユナは食後の片付け、俺とサキさんは洗濯、最後に布団を干してから街へと出発した。






 最初に訪れたのは武器屋だ。ここでサキさんは元のダガーを売却して、ロングソードと同じ工房で作られている最高品質のダガーを買った。

 サキさんにはそのまま隣の防具屋に行ってもらい、ちぐはぐの全身鎧の部位を全て最高品質の物に交換するように指示した。


「では行ってくる」

「俺たちも後で様子見に行くからな」


 ユナは武器屋の兄ちゃんにカスタムロングボウの更なる改造を注文している。店のカウンターにゴテゴテした弓が四張並んでいるのは異様な光景だ。

 ちなみに魔法の杖のホルダーは魔道具の店に売っているらしい。まあ、それもそうかと納得してしまった。


 弓は多少の改造が必要なので、武器屋預かりとなる。二日もあればできるらしい。

 ちなみに俺はハンドアックスを一本買った。最初に買ったやつはなし崩しに薪割り用になっていたので、この際新調してみた。



 俺たちが防具屋を覗くと、サキさんの全身鎧はピカピカになっていた。


「いいじゃないか。良く考えたら肝心の胴体は最初に買った安物だったんだよな」

「気付いておらんかったのか?」

「サキさんが言わんから気付かんかった」


 サキさんの鎧は全ての部位が同じ工房で作られた物に統一されたので、今までよりも見栄えが良くなっている。これなら最初からフルセットで買えば良かったな……。


 今日のサキさんは、わざわざ赤マントまで身に付けて来たのだが、兜まで被っているのでキマり過ぎて気が狂った人にしか見えない。

 いくらここが王都オルステインでも、ここまでやったら流石に浮いて見えるだろう。


「この鎧が王都で一番いいやつなのか?」

「これ以上になると甲冑になりますよ。あっちはコケたら終わりなので冒険者には向きませんが……」


 俺が防具屋の店員に確認すると、確かに最高品質で間違いなさそうだった。






 続いて俺たちは服屋に立ち寄った。ティナとユナはいつもの冒険用の服と大体同じような感じの服を選んだ。普段慣れている物と同じ方がいいだろうという考えらしい。

 なるほど、そういう考え方もあるな……。


 俺もティナに言って、今の服と同じような物を選んでもらった。あと、最近はもうズボンを穿かなくなったので、下はスカートにした。


「随分イメージが変わりますね」

「やっぱりスカートの方がしっくりくるな。ズボンは寒いときまで取っておこう」

「ミナトも変わったわね。最初はあれだけ嫌がってたのに」



 その後俺たちは炸裂の矢を買った魔道具の店に立ち寄って、古代竜の角の杖に合わせた蓋付きのホルダーを買った。

 エミリアから貰った魔法の杖は普段使い用なので、利便性を考えてホルダーは無しにする方向だ。


 この店には色んな魔法の杖もあるので少し見て回ったが、杖といってもティナが持っているドラムスティックや指揮棒のようなサイズから、サキさんの身長よりも長い杖まで色々あった。

 不思議なので店員に聞いてみたが、魔術師による好みの問題が第一で、サイズによる性能の優劣は特にないようだ。

 一番人気はいつでも身に付けたままでいられる指輪、僅差で取り回しのしやすいティナが持っているタイプの杖と続くらしい。


 この店にも目的の盾はあったが相変わらず高いので、ユナが見付けてきた穴場の店に行くことにした。街の北西まで行くのは大変だが仕方がない。






「この店の外観はいつ見ても怪しさ満点だよなあ……」


 俺たちは相変わらず黒ずんだ看板の掛かった扉を開けて中に入る。ここは掘り出し物が多いので、ついつい変な物を見付けて買うハメにならないか心配だ。


「さっきの店とは少し違いますが、似たような魔道具がありましたよ」

「どれどれ……」


 先程の店にあったのは指輪だったが、こちらは腕輪のようだ。腕輪の幅は2センチくらい、真ん中から割れるようになっている。

 説明には障壁効果と書かれているし、価格も銀貨8000枚と安い。掘り出し物かも。



「この腕輪の障壁効果はどんな感じなんだ?」

「目の前に魔法の壁を作る感じだったかね」

「盾ではなくて?」

「盾ではなかったね。動かない壁だよ」


 ううむ……それっぽいのはこれしかないし、買っておくかなあ……。


「ところで解放の駒はもうないのか?」

「お前さん、前回も買って行っただろう? 物好きな客だね……」

「あれば欲しいのだが」

「冬になれば遺跡から帰って来る冒険者が多くなる。その時にまたおいでよ」


 俺は障壁効果の腕輪だけを買って、ユナが変な物を見付け出す前にさっさと店を出た。



「一応これで今日の予定は終わったけど、みんなはどうする?」

「わしは家に帰ってミシンの続きがやりたい……と言いたいところであるが、ちと近くの農家を訪ねて汲み取りを頼んでみる」

「なんだそれは?」

「便所に溜まった肥しを引き取ってもらうのだ。今朝デカいクソをしたらお釣りがきた」

「ちょっと何言ってるのかわからないが必要なことなんだな。サキさんに任せる」

「任せておけ」


 お釣りの意味はわからなかったが、要するにバキュームカーを頼むということだな。


「私は帰って休みたいわ。晩ご飯の用意もあるし……」

「ではわしと帰れば良い」


「私は特に用事もないので、ミナトさん次第です」

「俺はもう一度駆け出し専門の宿に行ってみるか。ユナにも付いてきてもらおう」

「わかりました。初めて行くので楽しみです」


 サキさんは白髪天狗にリヤカーを移してそこにティナが乗り、俺とユナはハヤウマテイオウで駆け出し専門の宿へ向かうことにした。

 サキさんは王都の北側から家に帰り、俺は王都の西側から移動したのでこの場で解散となる。






 俺とユナは駆け出し専門の宿の前にやってきた。相変わらず大きな馬小屋の中では藁の上に麻のシートを敷いて雑魚寝している冒険者の姿が見える。


「馬小屋生活も一人なら耐えられんが、パーティー全員でなら案外楽しいかもな」

「私はちょっと見たくないですね。ミナトさんたちと会う前の二週間を思い出すので……」


 ユナはトラウマを思い出してしまったようでわなわなと震えている。

 俺がユナの背中を抱いてやると次第に震えも収まってきたので、馬小屋の前は早々に通り抜けて宿の正面まで移動した。


 やっぱりトラウマはそうそう簡単に克服することはできないみたいだな。後でティナとも相談してちゃんとケアできるように気を配ってやろう。


 俺とユナはハヤウマテイオウを宿の手前に繋いでから、宿の扉を開いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ